TV界で活躍する女性監督や女性脚本家が増え、これまでとは異なるモダンなヒロインが続々と登場している昨今…。
ドラマの中のキャラクターでありながらも、現実社会において女性のエンパワーメントにひと役買っている面もあります。そこで、TV史上輝き続ける女性キャラクター16人をご紹介します。
皆さまのインスピレーションを受ける、お気に入りのキャラクターはいますか?
『マッドメン』のペギー・オルセン
NYを舞台に1960年代の広告業界を描いたドラマ、『マッドメン』。その1stシーズンに主人公の敏腕広告マン、ドン・ドレイパー(ジョン・ハム)の新米秘書として登場したのがペギーでした。
彼女はその後、職場にはびこる男尊女卑に苦しみながらも女性コピーライターに昇格し、重役にまでのぼりつめます。そして70年代に入り、社会における女性の役割にも変化が現れると、ペギーも自信を身につけ、さらなる高みを目指すのでした…。
『Black-ish』のレインボー・ジョンソン
ロサンゼルスで暮らす中流家庭のアフリカ系アメリカ人の日常を追った米シットコム『Black-ish(原題)』で、5人の子を育てながら麻酔専門医としてフルタイムで働く一家の母、レインボー(トレイシー・エリス・ロス)。
ドラマをとおして彼女は、自身のミックスト・レイスというアイデンティティを見つめ、フェミニズム、人種差別が蔓延するアメリカで一家が直面するさまざまな問題、産後うつなど、立ちはだかる壁に立ち向かっていくのでした…。
『フレンズ』のレイチェル・グリーン
『フレンズ』シーズン1の第1話は、結婚式から逃げてきたウエディングドレス姿のレイチェル(ジェニファー・アニストン)が、おなじみのカフェ「セントラル・パーク」でお茶していたメインキャストたちの前に現れるところから始まるのを覚えていますでしょうか?
良家の娘であるレイチェルは、父親のクレジットカードをハサミでカットし、カフェでアルバイトを始めて自立を決意。そしてラルフ ローレンに入社し、シニアバイヤーへと出世していきます。
またレイチェルは、モニカ(コートニー・コックス・アークエット)やフィービー(リサ・クドロー)と同様、セックスや女性の性的快感について正直に語り、出会う男性たちに女性への接し方を教える潔さが魅力です。
シングルマザーとして娘も出産し、妊娠中に起こる症状について口を挟もうとするロス(デヴィッド・シュワイマー)に対し、「子宮もないのにとやかく言わないで(No uterus, no opinion)」と言って黙らせたというエピソードもあります…。
彼女のヘアスタイルが、90年代を象徴する髪型となったことも忘れてはならないところ。
『グッド・ワイフ』のアリシア・フロリック
女性スキャンダルが発覚し、国民に謝罪することになった州検事の夫と彼を支える哀れな妻…というありがちなシナリオかと思ったら大間違いのこのドラマ。
主人公は夫ピーター(クリス・ノース)ではなく、家族を養うために弁護士として13年ぶりに復帰する妻アリシア(ジュリアナ・マルグリーズ)。キャリアに傷がつき、失脚した夫に代わりって現代社会を力強く生き抜いていく女性が描かれています。
『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダ・ホッブス
『SATC』に関して言えば、登場するメインキャスト全員がこのリストに入っていてもおかしくはありません。しかし特に、ミランダ(シンシア・ニクソン)はどんなときも女友だちをサポートしてくれる…そんな女性の強い味方でした。
男性と同じように性について語り、アメリカに蔓延するダブルスタンダードに対して、不満を露わにしていたのです。また、弁護士という役柄上、4人の中でも“デキる女”というイメージが強かった…。
仕事と息子ブレディの子育てに奮闘するワーキングマザーぶりも、大きな共感を集めていました。
『ザ・シンプソンズ』のリサ・シンプソン
永遠の8歳ではありますが、アニメの中で最も知性があり、賢明で大胆不敵な女性キャラクターなのがリサです。
女性蔑視するマリブ・ステイシー人形の代わりに、女性にポジティブな影響を与えるリサ・ライオンハート人形を共同開発したり、男装して男子のみが受けられる数学の授業に参加したり、未来の話では、アメリカの大統領に就任していたり…と、フェミニストとしての資質は充分なわけです。
『殺人を無罪にする方法』のアナリーズ・キーティング
表向きは自ら弁護士事務所を立ち上げ、男性に頼らずとも強くパワフルに問題を解決していく敏腕弁護士。しかし、プライベートでは他人には言えない複雑な問題も抱えるアナリーズ。そんな彼女を演じ、黒人女性として初めてエミー賞の主演女優賞に輝いたヴィオラ・デイヴィスは、英「ガーディアン」紙に対し、こうコメントしていました。
「ドラマでは私たち、とくに黒人女性に期待される女性像が明らかになります。『セクシーであってはいけない』、『人に嫌われてはいけない』、『怒ってもいいけど弱さを見せてはいけない』、傷ついてはいけない』、『賢くなってはいけない』といったことがすべて。でもアナリーズは、自分が型にはまった存在でなくても気にはしません。大事なのは、彼女がそこに立っていることなのです。そこに立ってTVに映り、世の中にインパクトを与えていること。ただそれだけなのです」。
『Parks and Recreation』のレズリー・ノープ
エイミー・ポーラー演じるレズリーは、『ザ・シンプソンズ』のリサ・シンプソンをそのまま大人にしたような女性です。
公園緑地課で働くフェミニストの彼女のデスク周りには、ヒラリー・クリントンやマデレーン・オルブライトといった女性政治家の写真が飾られています。ちなみにオルブライト元米国国務長官は、同番組にカメオ出演もしています。
職場の男性から受ける性差別的な意見にも、皮肉交じりのユーモアでうまく切り返すレズリーから元気をもらった人も多いはずです。
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のクレア・アンダーウッド
政治家フランクの妻として登場したクレア(ロビン・ライト)。ストーリーが進むにつれ、彼女も実は夫フランシス(ケヴィン・スペイシー)と同じくらい権力志向が強く、冷酷かつ陰険な策略家であるという意外な一面が浮き彫りになっていきます。
そして最終シーズンでは、ついに米大統領に就任。ドラマに登場する女性キャラクターが皆、夫の成功を裏で支える優しい妻ばかりではないということを世界に知らしめました。
『Fleabag フリーバッグ』
「人間誰しも完璧ではない」ということを改めて知らしめてくれるのが、フィービー・ウォーラー=ブリッジ主演のドラマ『Fleabag フリーバッグ』。
今作の脚本家でもあるフィービーは、キャリアや金銭面、私生活に関する悩みを抱えつつも、持ち前のユーモアで人生を切り開こうとする30代半ばの独身女性(ファーストネームは与えられていない)を演じ、時折、視聴者に直接語りかけたりもします。
総じて男性キャラクターが使うことが多い、「第四の壁を破る」という手法を取り入れています。
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のオブフレッド
女性が名前や自由を奪われ、子づくりの道具として管理されるという悲惨なディストピアで、組織的な監視下に置かれ、レイプされるオブフレッド(本名はジューン・オズボーン)…。
娘ハンナとの再会を夢見て、危険かつリスクの高いミッションをこなし過酷な状況に立ち向かってゆく姿には、勇気をもらえることでしょう。世界中で高く評価された、現代に警鐘を鳴らすドラマです。
『キリング・イヴ/Killing Eve』のヴィラネル
冷酷な暗殺者と優秀な捜査官とのスリリングな攻防を描く、サスペンスドラマ。
道徳的なキャラクターとは言い難い暗殺者ヴィラネルですが、女性という武器に頼ることなく、次々と男性に罠を仕掛けていく姿は見ていて清々しいほど…。
ジョディ・カマー演じるヴィラネルは執念深く冷酷ですが、ファッションが好きでウィットに富んでいます。
独特なカリスマ性を持ち、悪役であるにもかかわらず思わず応援したくなってしまうことでしょう。
『スキャンダル 託された秘密』のオリヴィア・ポープ
政治家の不祥事を揉み消す凄腕フィクサーという、“男性的な仕事”を見事にやってのけるヒロインのオリヴィア・ポープ(ケリー・ワシントン)。彼女は複雑な事情や人に言えない秘密を抱えつつも、知的かつパワフルにストーリーをリードしていきます。
クリントン元大統領との不倫騒動で一躍有名になったモニカ・ルインスキーをクライアントに持つ、実在の女性ジュディ・スミスをモデルにしたオリヴィアについて番組のクリエイターであるションダ・ライムズは、「オリヴィアは、物事を3次元的に見ることのできる自立した女性です。番組スタート当初、彼女のようなアンチヒーロー的な女性キャラはあまりいませんでした。今となってはそれが普通になったし、黒人女性が主演を務めてもおかしいと思われなくなったと思っています」と、語っています。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のデナーリス・ターガリエン
“カリーシ(女王)”ことデナーリス・ターガリエンは、「21世紀最高のTVシリーズ」と評される『ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)』のヒロインと言っても過言ではありません。人に裏切られ、傷つきつつも、シリーズをとおして成長し、自らの信念を貫き大軍を率いる支配者となる女性です。
同ドラマにイグリット役で出演していたローズ・レスリーは、エミリア・クラーク演じるデナーリスを、「インディペンデントな女性の代表格」と表現しています。
いよいよ4月にスタートする最終シーズンが、実に待ち遠しいところ。
『GIRLS/ガールズ』のハンナ・ホルバース
ナルシスト、わがまま、ウザい、自分勝手、自分が恵まれていることに気づかない、子どもっぽい、そして時に、思い込みが激しいという“こじらせ女子”のハンナ(レナ・ダナム)。友人のマーニー、ジェッサ、ショシャンナとともに、NYという厳しい環境でキャリアを築き、未来を切り開こうと奮闘します。
ハンナは誰からも愛されるキャラクターではありませんが、彼女の欠点や体型コンプレックス、お金を貯められない性格、さまざまな男性と肉体関係を持ってしまう一面、強迫性障害ときちんと向き合う姿勢などは、自然と観る人に勇気を与えてくれます。
今作の製作・監督・脚本・主演の4役をこなしたレナ・ダナムはリアリティを追求し、これまでの海外ドラマに登場する女性像を塗り替えたのでした…。
『バフィー ~恋する十字架~』のバフィー
1997年から2003年にかけて放映され、いまだに根強い人気を誇る『バフィー ~恋する十字架~』。ヴァンパイアに立ち向かう女子高生という斬新な設定が、当時の視聴者を魅了しました。
サラ・ミシェル・ゲラー演じるバフィーと親友のウィロー(アリソン・ハニガン)は、超自然的なパワーを持ち、身体的にも精神的にも強く、決して男性の言いなりにはならない女性でした。
しかしその一方で、恋に悩む少女のような一面も持ち合わせており、等身大のヒロインに共感したファンが続出したのでした…。
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『「映画>テレビ」は時代遅れ! 2018年TVドラマで見られる超豪華スター18人』
From Harper’s BAZAAR UK
Translation / Reiko Kuwabara
※この翻訳は抄訳です。