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榮太樓總本鋪の代表取締役社長である細田 眞(ほそだ・まこと)氏
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ワイン

ワインの奥深さに敬意を払う一方で、「ワインやシャンパンって肩肘を張らず、もっとカジュアルで、でもエレガントで…おいしくて、誰でも楽しめるオープンな世界」というワインスタイリストの藤﨑聡子さん。

ゲストにお迎えしたのは、東京・日本橋で(文政元年に創業)200年以上続く菓子舗 榮太樓總本鋪(えいたろうそうほんぽ)の代表取締役社長を務める細田 眞(ほそだ・まこと)氏。かたちが梅干しに似ていることから名づけられた看板商品「梅ぼ志飴(うめぼしあめ)」や江戸時代から続く丸い形状の「名代金鍔(なだいきんつば)」など、古くから続くさまざまなお菓子をラインナップしている日本を代表する老舗です。

榮太樓「日本橋餅」×老舗シャンパーニュメゾン:ノン・ヴィンテージの魅力と底力

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今回セレクトしたのは、榮太樓の「日本橋餅」と「東京ピーセン」。それらに英国王室からも愛される老舗シャンパーニュメゾン「ポル・ロジェ」のシャンパン、世界的スターであるブラッド・ピットが手がけたプロヴァンスのワイナリー「ミラヴァル」のロゼを合わせていきます。日本の伝統菓子とどのようなマリアージュを生み出すのか、必見です。

藤﨑さん:実は毎日食べるほどお餅が大好き! 「日本橋餅」も大好物なのですが、誕生してどのくらいになるんですか?

細田社長:約10年くらいですかね。私たちが企画して、山本海苔店さんとにんべんさんにお声がけして実現できた商品になります。海苔は山本海苔店さん、中のタレはにんべんさん、お餅は榮太樓という、いわば日本橋の老舗のコラボレーションですね。

榮太樓の「日本橋餅」
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榮太樓の生菓子「日本橋餅」公式サイト

藤﨑さん:素敵なコラボレーションですね。そんな「日本橋餅」と合わせていただきたいのが、1849年に創立された家族経営の老舗シャンパーニュ・メゾン、ポル・ロジェの『ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ』です。このシャンパンは3つのブドウ品種(ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ)がブレンドされていて、通常の工程でつくられるワインに比べると熟成期間が長いのが特徴です。約4年熟成させています。

私の勝手なロジックですが、「3種類のブドウを混ぜ合わせて寝かせるといろいろな旨みがミックスされていく。だからこそ、『日本橋餅』に合う」と思いました。お餅のおいしさや甘さ、お醤油や鰹節の旨み、そしてお海苔の香りのマリアージュが楽しめる商品ですし…。

シャンパーニュ、ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ
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細田社長:鰹節やお醤油には、アミノ酸も入っています。実際に「日本橋餅」とポル・ロジェを試してみて、確かに両者の旨みの相性がとてもいいと感じました。先ほどお餅が甘いとおっしゃっていましたが、実は砂糖が入っているからです。ただ、お砂糖は甘さを高めるためではなく、お持ちの柔らかさを持続させるために入れています。

藤﨑さん:柔らかさの秘密は、お砂糖にもあったとは知りませんでした。今回、「ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ」をフードペアリングに選んだ理由はもうひとつあります。それは榮太樓さん同様、何代も続く(1849年からの)家族経営のメゾンであること。ずっとつながって今にいたる老舗同士だからこそ、ペアリングするとどういった化学反応を起こすのか試してみたかったんですよね。

細田社長:なるほど、そんな理由もあったんですね。ちなみにペアリングを楽しむ際、口の中で合わせたほうがいいのか? それとも食べ終わってから飲んだほうがいいのか? どちらが正解なんでしょう

藤﨑さん:それには正解はないですが…、まずは、先に飲んでみるほうがいいかもしれません。ちょっと渋みを感じたり香りが強いと思ったときは、私の経験上、口の中で混ざると苦味に変わります。なので、食べ終わった余韻でシャンパンやワインを流して楽しむほうが面白い気がします。

細田社長:ウイスキーなどのお酒はよく、「鼻でも味わう」と言いますよね。シャンパンやワインもそうなんですか?

ワイングラスにもトレンドがある。シャンパンにフルートグラスはイマイチ!?

藤﨑さん:同じです。どんな形のワイングラスで召(め)し上がるかで、おそらく香りの立ち方も変わると思います。シャンパンは、スマートなグラスだと泡が元気な状態が続いて、逆にふくよかなグラスだと泡の立ち方が柔らかくなります。ちなみにシャンパンと言えば細長いフルートグラスですが、最近は世界的にそのグラスにこだわるのはやめてもいいでしょう…という流れになっています。

細田社長:シャンパンそのものを味わうには、そのフルートグラスはイマイチってことですか?

藤﨑さん:そういうわけではないのですが…。“味わいの楽しみ方を意識する時代になった”と思ってください。ブドウの熟成具合やメゾンのセラーで何年熟成させるか…などシャンパンの楽しみ方も時代とともに変化してきています。とは言え、より美味しく味わいたいと意識するならば“フルートタイプは時代遅れかもしれない!?”、とお話するソムリエの方も増えているのも事実です。

パーティーなど、最初の一杯目を元気よく楽しみたい場合であれば、泡立ちに勢いのあるフルートタイプのグラスはふさわしいと思います。一方で、お食事に合わせるとなると、その勢いはtoo much感じられるかもしれません。それを解消することを考えるならば、ふくよかなグラスを選んでみてください。同じ銘柄のシャンパンか!?…と、思うほど味わいが優しく感じると思います。同じシャンパンで通して食事を楽しめると私は考えています。

細田社長:グラスにもトレンドがあるんですね。シャンパンにはヴィンテージのものもあって、値段がピンキリなイメージがあります。藤﨑さんにぜひ、選び方を伝授していただきたいですね。

藤﨑さん:今回ピックアップした『ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ』は、いわゆる価格的には比較的お手頃なノン・ビンテージというカテゴリーです。“年がない”という意味なので、「過去のいろいろなブドウをブレンドして、同じ味を守り続けないといけないもの」になります。

逆にヴィンテージ・シャンパンはブドウの出来が良かった年に、その年のブドウだけでつくりますので、その年の個性が表現されます

つまり、ノン・ヴィンテージはどんな時代であろうと同じ味にしなければいけない…、メゾンにおける使命感のシャンパンになるのです。シャンパン好きの中には『こんな値段の高いヴィンテージを飲んだ』って自慢される人が稀にいますが(笑)、もちろんそれはそれで良いですが、私は「ノン・ヴィンテージを知らないと意味がないよ」って思っちゃうんです。ですので、そのメゾンのシャンパンを飲むのが初めてなら、まずはノン・ヴィンテージをセレクトするのがおすすめですね。「値段にとらわれる必要はない」と思っています。それぞれの好みで、シャンパンを楽しんでほしいです。

ハリウッドスターと南仏の巨匠が手掛けるロゼワイン×塩味の「東京ピーセン」

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ミラヴァル『ミラヴァル・ロゼ』750ml、4730円購入はこちらから

藤﨑さん:続いて、『ミラヴァル・ロゼ』と「東京ピーセン」とを合わせてみましょう。

細田社長:このロゼはすごく綺麗なピンクですね。ペアリングする「東京ピーセン」は、銀座江戸一さんから受け継いだ商品になります。さくさくとした食感と洒落た欧風のイメージから“フランスの味”というキャッチフレーズになっていて、パッケージもフランスの象徴であるエッフェル塔を採用しているんですよ。

東京ピーセン
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「東京ピーセン」15袋入(プレーン・チーズ・海老)1944円榮太樓公式サイトで購入  26袋入(ピーナッツ・海老うまくち・黒胡椒・チーズ)楽天で購入

藤﨑さん:キャッチーなパッケージにも心踊りますね。こういったピーナッツ揚げはいろいろありますが、その中でも「東京ピーセン」はお米の味もしっかり感じられながら、個人的にはエレガントな印象をもっています。他はすごく塩気が立っていたり、ごま油っぽい香りが上がってくるのもありますから。

細田社長:私たちも食べ比べたりするのですが、同じピーナッツ揚げでも会社によって味が全然違いますよね。今回は銀座江戸一さんから続くプレーンとエビに加え、私たちのオリジナルであるチーズもご用意しました。チーズは日本の方には少し濃いと感じるほどたっぷり使っているので、ワインとの相性もいいと思いまして。ちなみにエビは、もともとはピーナッツを入れていなかったらしいですが、改良したときに少し入れるようにしました。その代わりにエビの量も増やして、その香りが立つように仕上げています。

藤﨑さん:チーズは食感もしっとりとしていて、また違った味わいですね。エビは量が多いにも関わらず、お魚っぽさが際立っていないのがいいですね。「東京ピーセン」は総じて旨みと厚さのバランスがよく、お酒と合わせやすいと思いました。ちなみにこの薄さは、どうやってつくっているんですか?

細田社長:砕いたピーナッツをお餅に混ぜて薄く伸ばしていますが、実は昔に比べると少し厚みがあるんです。これは油が変わっているからで、銀座江戸一さんでは米油を使っていました。今は工業的に使うほど質のいい米油が手に入らなくなっているので、ヤシ油で揚げています。だから、少し厚みがあるんです。

藤﨑さん:原料が変わると、つくり方は同じでも味や食感などが変わってしまいますよね。ただ「東京ピーセンは、時代に合った味わいが確立されている」と感じました。ロゼワインの旨みとも相性がよく、すごく合わせやすい…。

細田社長:ワインはあまり得意ではないですが、ブドウの品種によって違うものですか?

藤﨑さん:そうですね。同じ場所で採れたブドウでも、品種によって味は異なります。

(簡単にかみ砕いて説明すると…)ブドウを思いっきりプレスすると「赤ワイン」、果皮のバランスを見てプレスの加減を変えるのが「ロゼワイン」。色素の抽出はワイナリーの考え方で変わります。個人的には、ロゼワインって非常に手間がかかるものだと思っています。

この「ミラヴァル・ロゼ」は、4種のブドウ品種(サンソー、グルナッシュ、シラー、ロール)がブレンドされています。どこまで絞るかでこの繊細な色に仕上げているのです。

細田社長:すごいテクニックですね。恥ずかしながら、ロゼワインは赤ワインと白ワインを合わせてつくっているのかと思っていました。

藤﨑さん:赤いブドウをどこまで絞ってどういう熟成をさせるのかによって色はもちろん、味わいや旨みなども変わってきます。それはお米も同じ世界だと思っていて、例えば日本酒も精米歩合によって香りや味わいが変わりますよね。ロゼにも通じる印象があります。

「シャンパンにはこれが合う」「ロゼにはこれが合う」というような、固定観念を持っている方も多いかと思います。でも、今回のように旨みなどに共通点があったりすると、意外にマッチするもの。皆さんも固定観念にとらわれることなく、さまざまなペアリングを自由に楽しんでみてください。

それでは、次回もお楽しみに!

Photograph / Cedric Diradourian
Hair and make-up / BOTAN
Edit / Hikaru Sato

《Profile・経歴》
藤﨑聡子(Satoko FUJISAKI)
ワインスタイリスト

…1997年ワイン専門誌「ワイン王国」創刊、編集・作家担当・広告業務を担当。2003年ワインスタイリストとして独立。以後、男性ファッション誌、女性ファッション誌でシャンパン、ワイン、料理制作、スタイリング、レストラン紹介などを連載・執筆。

世界的に発刊されているワイン漫画『神の雫』では、シャンパン女番長としてワインと食材のマッチングコラムを2年半にわたり執筆。これはフランス、上海、北京、香港、台北、ソウル、アメリカで翻訳され現在も発売中。単行本では24巻から36巻まで収録されている。

レストランのワインリスト作成、メニュー開発、またスタッフに対するワインセミナーもジャンルを問わず手掛ける一方、ファッション撮影ではインテリアコーディネート、フードスタイリングなども担当構成。2014年12月、シャンパン100種類、メインディッシュは餃子、唐揚げをリスティングするラウンジ・Cave Cinderellaを東京・西麻布にオープン。

フランス・シャンパーニュ生産者組合団体・シャンパーニュ騎士団より2007年シュヴァリエ・ド・シャンパーニュ、2009年ジャーナリスト最年少でオフィシエ・ド・シャンパーニュを叙任。シャンパン、餃子、唐揚げ、ポテトフライ、ゴルフをこよなく愛する。