楽ちんなフード付きのスウェット、
いわゆる「フーディー」は
大人の男性も着用していいのか? 
2人の英国人ファッションライターが討論しました!

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Style Debate: Should A Grown Man Ever Be Seen In A Hoodie?

 フード付きスウェットは、リスクの少ない重ね着アイテムと言っていいでしょう? とはいえ子供っぽいとも取れる、いわゆる「フーディー」。そのスタイリングについて、「ESQUIRE」で書き続ける2人のファッションライターがその論争に決着をつけました。


賛成派:ニック・ポープ 

 「FUCK WAR!」とサインペンで走り書きされたカーディガンを着て、キャットウォークを闊歩するクールなモデル。“政治的なファッション”という言葉を耳にすると、そんなイメージが浮かぶものです。でも、私の主張を聞いてください。今や控えめなフーディーこそが、最も政治色の強いファッションアイテムになる可能性があるのです。 

 僕自身が最初のフーディーを手に入れたのは2004年、私は13歳でした。ナイキのベーシックで真っ黒なデザインのもので、同じ学校の生徒は皆これとほぼウリ2つのものを着こなし出したのです。この局所的なトレンドの発端は、それを着ていた本人の理由におけるほんの一部に過ぎなかったのですが…。実際のところその張本人、つまり僕がこのフーディーを着こなし始めた理由は「単に太ってしまった」という理由が一番だったのです(笑)。そう、自分の体型を隠したかっただけなのです。 

 そうして僕がフーディーを着るようになって間もなく、もはや局所的なトレンドではなくなり、国をあげて注目されるアイテムになっていったのです。 

 2004年のイギリスはパラノイアと恐怖、そして気取り屋気質などであふれていました。そして“反社会的行動”の台頭に直面します。当時、支持率も下降し、批判を集めていた労働党政権は、反社会的行動禁止命令の緩和を延長したのです。そして、かつてスポーツウエアで着飾る労働階級の若者を中傷して使われていた「チャブ」という言葉も、瞬く間に新聞やテレビ番組で誰もが使うフレーズになったのです。 


実際のところ、私は太ってしまったのです・・・。 

 そのなかでも最悪だったのは、その年、Bluewater Shopping Centre(ブルーウォーター・ショッピングセンター)で、フーディーの着用が禁止されたことでした。このショッピングセンターは、10代の僕が退屈な週末を過ごす、最も重要なロケーションだったのです。 

 少し話を先に進めましょう。 

 2006年のこと、この問題に共感を寄せてくれたのが、デビッド・キャメロン元首相だったのです。彼は冷笑されつつも、“hug a hoodie”と人々に呼びかけたのです。そして、卒業生の記念品やニューレイヴのカラフルモンスターたちのファッションとしてではありますが、イギリスはこれまでの5年間でかつてないほど、このファッションアイテムを取り入れるようになったのです。 

 つまり言い換えれば、ストリートウエアの圧倒的な台頭と並行して、フーディーがクールな若者やファッション業界で広く認められたわけなのです。そしてハイエンドのデザイナーたちは、最近それを取り入れ始めたのです。 

 ハイファッションによるワーキングクラス・スタイルの流用は、それほど新しくもなければ驚くべきことでもありません。しかし皮肉にも、今シーズン最も注目を集めたキャットウォークのルックにインスパイアを与えた人々が、実際にこれらのハイファッションを身にまとうことはできないのです。 

 それでもやはり、ワーキングクラスの文化が中傷や軽蔑されるよりも、賞賛を集めて認められる様子を見るのは気持ちがいいものです。 

 ともあれ実際僕はといえば…、フーディーを着ることはないでしょう。なぜなら、いまフーディーを着ると、僕はまるでホッケーチームのメンバーのように見えてしまうからです(笑)。それでも僕は、フーディーに「イエス」の1票を投じますね。

いや、フーディーを着用すべきではないという意見も・・・

反対派:フィンレイ・レンウィック 

 ブルーウォーターで禁止された反社会的行動禁止命令(ASBO)の名誉の印から、スケーターの必需品、私立学校や大学卒業生にとってはお決まりのユニフォームとしてまで、フーディーは長年、様々なタイプの人々に着られてきました。が、誰もスタイリッシュではないと思うのです。 

 けれど最近、何かが変わりました。フーディーの時代が到来したのです。スタイリッシュな時代が遂に! 実は私は、それが嫌いなのです。 

 2017年、フーディーを究極の重ね着アイテムとして扱ってきた人たちは、来年の今頃、最もスタイリッシュではないスウェットシャツが、トレンディなアイテムになったとしたら目をキョロキョロさせて失笑するでしょう。 

 でも、彼らを見てみてください! 

 クールなストリートスタイルの上に、オーバーサイズのコートやデニムジャケット、ボンバージャケットを重ねる典型的な着こなしです。ニューウェーブのフーディーファンは、これをスポーツウエアとハイファッションを組み合わせる、賢い方法であると見ているようです。けれど、やっぱり私にはバカっぽくしか見えません。 


スウェットシャツを買えばいい 

 ご存知かもしれませんが、私たちはもう長らく前に、フーディーを卒業したのです。これはあなたが12歳のときに、世界を股にかけて航海に行くときのマストアイテムだったのでは⁉ 何かしらのグラフィックデザインが施されたフーディーを1枚はもっていて、暖を保つにはそれ一枚があれば十分で、地元のスケートパークでブラブラするときには、喧嘩のトラブルに巻き込まれないようにするためのクールさを演出するためのアイテムでもありました。 

 でも、今やあなたは大人となり、色々なものから卒業し、ワードローブも変わったのです。ある日、あの“頼りになる一枚”を取り出してみれば、何かが昔とは違っているはずです。フーディーはその輝きを失ってしまっているでしょう。あなたはあのときに比べ、成長したのです。少なくとも、もうフーディ―は卒業したということです。 

 ですから、フーディーをファッションとして復活させようという最近の策略に、僕はイラっとするのです。

 VETEMENTS(ヴェトモン)の最新版であろうが、Off White(オフホワイト)がアフガニスタンの最も高い高原を産地とするコットンを使用して作っていようが、僕らはもう12歳ではないのです(君が12歳なら失礼! 存分に楽しんでね!)。僕らのフーディーの日々は、完全に終わったのです。 

 
 あなたは仕事もあり、支払うべき請求書もある成長した大人なのです。だから、スウェットシャツを買えばいいのです。フーディーとは違って、すぐに廃れるようなこともありませんから。 

 
 以上、賛成派の意見、反対派の意見、いかがでしたか? どちらの意見に共感しましたか? なに! どちらも個人的過ぎて、よくわからない…。なるほど、それもご最もです。そう、皆さんがフーディーを好むのか好まないかについては、それぞれの問題なわけですから…。が、ひとつ言えることは、どんな賛成も批判があったとしても、どんな時代もフーディーを愛用している人は確実にいることは確かです。


By Nick Pope and Finlay Renwick on March 28, 2017
Photos by ESQUIRE UK
ESQUIRE UK 原文(English)

TRANSLATION BY Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。


編集者:山野井 俊