人類の危機を暗示するメタファー(隠喩)として、今回ご紹介する映像には衝撃を受けざるを得ないでしょう。

 これはソーシャルニュースサイト「Digg」に投稿された映像であり、アラスカのスペンサー氷河湖でカヤックツアーを楽しんでいたジョシュ・バスティアさんによって撮影されました。そして、ブリッジ状に溶け残った氷山が崩落する様子を捉え、巨大な波が押し寄せる瞬間、必至で逃げている様子を収録しています。それはまるで聖書の黙示録の出来事のようにも映ることでしょう。
 
 この映像で最も注目すべき点は、氷山の崩壊ではありません。氷山の崩壊は、特にアラスカでは毎日のように起きています。

 米『ナショナルジオグラフィック』誌が2019年7月に報じたところによると、アラスカの氷山の融解(固体が液体に変化すること)は、従来の想定より100倍速く進んでいるそうです。同時に、アラスカ沖の海でも氷山が崩壊しており、7月の気温は32度まで上昇し過去最高を記録しました。アラスカ州は森林火災にも見舞われ、110万エーカー(約44万5000ヘクタール)を消失しています。 

 最も目を引くのは、この撮影者の反応です。

 この氷山の崩落を単純に気候変動に結びつけることはできませんが、総じて気温や海水温の上昇は、急速に世界中の氷河の崩壊を招いています。アイスランドでは2019年7月、気候変動で失われた同国初の氷河があった場所に記念の銘板が設置されました。氷山の崩壊に遭遇したこの映像の撮影者は、まず驚き、そして一瞬笑ったかと思ったら、「死ぬところだった」とコメントしています。

 これは人間として自然な反応であり、このことを目撃できたのは興味深いところと言えます。自然の力とは恐れるべきものであり、私たちの気力を奪ってしまうほどの力を持っているのです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Kayak Adventure Met with Major Waves || ViralHog
Kayak Adventure Met with Major Waves || ViralHog thumnail
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 自然の驚異を前にしたこのような反応は、おそらく私たちの誰もがいつも行っていることと同じです。氷の融解激しい山火事干ばつ乾燥化洪水熱波穀物の不作と食料不足豪雨水不足巨大な勢力の嵐などが身の回りで実際に起きています。これらを前にして、私たち人間はただ驚くだけしかできません。例えばニューヨーク州ブルックリンの中心部で起きた巨大陥没の映像を観れば、私たちはあっけにとられてしまうでしょう。神の黙示のような出来事が、現在では次々にインターネットで配信されています。 
 
 現在地球で起きていること、そして今後起きると予想されることについて、気候科学者と話しました。そして気候変動問題の規模は、滑稽に思えるほど大きいことが改めて分かることができたのです。私たち人類としての自らの行動を正当化してしまうことは、もう間違いであると認めなくてはならないかもしれません。 
 
 私たちはより真剣に、気候変動そして環境問題に向き合わなければならないのです。

 

 

 
 

From Esquire US
Translation / Keiko Tanaka 
※この翻訳は抄訳です。