ドナルド・トランプ大統領を表す言葉は、「良い(good)」では許されません。あらゆることが常に「ベスト(best)」と表現されるのです。つまり、本当のところは、どの程度「良い」のかわからない…ということになります。今回、そんな彼の体調ははたして「良い」のかについて世の中は注目しています。

現在わかっていることは、トランプ氏が2019年11月16日にウォルター・リード陸軍病院を予定外に訪れたということです。

ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は、すぐに「2020年が多忙な年になるであろうことを踏まえ、ワシントンD.C.で公用が入っていない週末を利用して、年に一度の定期健診を受けました」と説明。

しかし、CNNは「情報筋」の話として、「今回の健診は手順に沿ったものでもなく、内部の非公式な予定にもないものだった」と報じています。そしてトランプ氏は、2019年11月17日には公に姿を見せず、翌11月18日のスケジュールにも公式な行事は含まれていませんでした。健診後2日間の行動が非公開だったいうことになります。

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ウクライナ問題でも注目されている、トランプ氏。

あいにくトランプ政権はこれまで、大小さまざまな事柄について絶えず嘘をついてきたため、実際に緊急事態だったとしても、発表を額面通りに受け取られにくいという状況にあります。過去には、このような事例がありました。

マイク・ペンス副大統領がニューハンプシャー州の訪問を突然中止したことを受け、アリサ・ファラー報道官は「副大統領はワシントンD.C.に留まらなくてはならない急用ができた」と発表しました。が、様々な憶測が流れたのです。

実際はペンス氏が会う予定であった、元NFL選手(アメリカン・フットボール選手)のジェフ・ハッチ氏が麻薬売買の疑いで捜査されていることが直前に判明したため、それを回避したということでした。が、当初の発表が信用できないことを裏づける事実が、数多く存在していたのです。

トランプ氏の健康状態に関しても、このケースと同様と言えそうです。

今回の健診が本当に定期的なものだった可能性もありますが、発表通りには受け取れません。グリシャム氏は CNNの報道に対し、「健康状態も良く、今回は毎年行っている健診の一部です」との説明を繰り返しました。そして、「私はこれまでの会見で、数多くの事実に即した正確な発言をしてきました」と付け加えましたが、これはあまり褒められた自己評価ではありません。なぜなら、「私はたまには真実を話している」という意味にも取れるからです。

グリシャム氏は、2019年11月16日に「FOXニュース」に出演しました。そしてこの出演によって、彼女に対する信頼度は高まることはないようです。むしろ…。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
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グリシャム報道官の「トランプ氏はホワイトハウスの中で、誰よりもエネルギッシュ」という発言に対し、「FOXニュース」の司会者を務めるジェニー・ピロ氏は、「ほとんど超人ですね」と返しました。

そうです。プライベートの多くの時間をTV視聴とゴルフに費やし、人間が一生で使うことのできるエネルギー総量は限られていると信じて、「できるだけ歩かないようにしている」という過体重のトランプ氏は、「ほとんど超人」と言えるでしょう。ですが、この会話はまるで北朝鮮国営テレビの放送のようだと思っている人もいるようです。

トランプ氏の不思議な価値観を、哲学者フリードヒ・ニーチェが提唱した哲学的概念の「超人=ubermensch」(詳しく知りたい方は、ニーチェ著『ツァラトゥストラはかく語りき』をお読みください)と切り離して考えるなら、グリシャム氏は「大統領超人説」を支持してもよいのではないでしょうか。

ピロ氏は、イスラム教を信じることは合衆国憲法に相反する、つまり「イルハン・オマル下院議員のような米国人は、真の意味での米国人ではない」という趣旨の発言をして、「FOXニュース」から出演停止処分を受けました。ですが、普段からトランプ氏に全体主義的な賛辞をおくっており、今回の発言も特に意外なものではありません。しかしホワイトハウスの報道官から、そのような賛辞を聞くとなれば話は別です。

さすがに73歳にして、ふさふさの髪と厚塗りメイクのトランプ氏に対して、「健康そのもの」とは言えなかったようです。が、彼はホワイトハウスの中で、誰よりもエネルギッシュであることは間違いなさそうですね。

Source / Esquire US
Translation / Keiko Tanaka 
※この翻訳は抄訳です。