• ドナルド・トランプ大統領は2019年1月22日(現地時間)、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムでの演説の中で、「米国はテスラのイーロン・マスクCEOを天才として守るべきだ」と語りました。
  • テスラは米国でのさらなる工場建設計画について、何も発表していません。ですがトランプ氏は、このEV(Electric Vehicle)メーカーが「米国に大規模な工場を建設することになるだろう」と述べ、「マスク氏はやらなくてはならない」と主張しました。
  • テスラの次の工場は、ドイツのベルリンに建設される見込みです。

※ちなみに上の写真は、「エリア51」の航空写真ではありません。


 ドナルド・トランプ氏はこれまで、テスラスペースXのCEOを務めるイーロン・マスク氏のファンであることを明言してきました。そんなトランプ氏は2019年1月22日(現地時間)、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムでニュース専門放送局「CNBC」のインタビューで「テスラの時価総額が、GMとフォードの時価総額の合計よりも高いことをどう考えますか」という質問されると、マスク氏を称賛するとともにこう言っていたのです。

 「テスラは米国でさらなる大規模工場の建設を計画している」と…。このトランプ氏の発言を聞いて最も驚いていたのは当のテスラであり、イーロン・マスク氏であったことに違いありません⁉

 その上ここでトランプ氏は、「1年前には『テスラの終焉』について話題になっていたが、世間は最近になって突然このような素晴らしい点に言及している」と述べた次に、意外なニュースあるいは憶測や思いつきとも解釈できる話を口にしていました。

 「(マスク氏は)米国に大規模な工場を建設することになるだろう。彼はやらなくてはならない…米国は彼をサポートしているのだから、彼も米国をサポートすべきだ」とコメントしたのです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
President Donald Trump on Elon Musk: I was worried about him, because he's one of our great geniuses
President Donald Trump on Elon Musk: I was worried about him, because he's one of our great geniuses thumnail
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 テスラはすでに、米国内に大規模な工場を3つも持っています。ネバダ州の砂漠にある「ギガファクトリー」、ニューヨーク州バッファローにある太陽光パネル工場(通称「ギガファクトリー2」)、そしてカリフォルニア州フリーモントにある工場の計3つです。

 同社およびマスク氏は、これまでのところ米国の新工場については何も発表していません。またテスラはすでに、現在は海外展開を進めています。最近発表された中国の上海工場はすでに、中国市場向けの「Model 3」の生産を開始しており、ドイツのベルリンには欧州版「ギガファクトリー」が建設される予定となっています。

 「米国は彼をサポートしているのだから、彼も米国をサポートすべきだ」という言い回しも、トランプ氏なら意味もなく口から出てきそうなフレーズであることも否めることはできませんし…。

 ですがその一方で、トランプ氏ならではの、我々の知り得ないテスラの内情に通じている可能性も無きにしも非ず…です。実際彼は最近、マスク氏と電話で話したことを明かしていました。そうした状況で視野を広くすれば…テスラが現在、同社の3つの工場やシリコンバレーの本社、多くのショールームで、多数の工場労働者や販売担当者、サービス技術者、エンジニア、マネージャーなどを雇用していることは注目に値する情報となります。

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テスラとスペースXのCEOを務めるイーロン・マスク氏。

 トランプ氏は気まぐれなテスラ氏について、「彼は米国が誇る素晴らしい才能であり、我々はこの天才を守る必要がある。トーマス・エジソンのような天才を守る必要があるんだ」とも語っています。ちなみにマスク氏が、エジソンより彼のライバルであったニコラ・テスラ(テスラの社名の由来です)のファンであると言うことは置いておきましょう…。

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 さらにトランプ氏は、「スペースX」プログラムについても言及し、「ちなみに彼は、ロケット分野でも成果を上げている」と述べました。と言うわけで、トランプ氏がマスク氏のファンであることは確かであるようです。が、彼がテスラの将来に関して何らかの事情を知っているのか? あるいはテスラやマスク氏を称賛することで、同社が米国に巨大工場を建設してくれることを期待しているだけなのか? はわかりません。

 ちなみにトランプ氏は2019年11月、「テキサス州に新たにオープンしたアップルの工場を視察した」とも発表していましたが、実はこの工場は、アップルの下請けメーカーであるフレックスが所有していたものであり、2013年から稼働していました。

 つまり、ここで言いたいことは、トランプ氏が特に意味のない工場のニュースを発表したのは今回が初めてではないということです。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
トランプ氏のツイート内容:
私は、テキサス州の大規模なアップル工場のオープンに立ち会った。その工場とは、米国に高賃金の仕事を取り戻す工場のことである。

 最後に、トランプ氏はダボス出発が近づく中、気候変動活動家のグレタ・トゥンベリ氏(イーロン・マスク氏と同じように、汚染の少ない世界へ変化を促している活動家です)にも言及しています。

 「信じられないレベルで、煙が立ち上がっている他の大陸があるじゃないか。トゥンベリ氏はそういった場所にも目を向けるべきだ」とし、「米国から関心をそらすべき」と述べました。最新の研究によれば、米国の大気の質は2016年以来ますます悪化していることが明らかになっています。つまり米国こそ、信じられないレベルで煙が立ち上がっている国なのです。

 トランプ氏からトゥンベリ氏への提案は自身の生き方のスタイルを押し売りでしかなかったようです…。いえいえ、(多くの人もそう思ってるかもしれませんが…)そんな含みなどもない可能性も大です。単にその場しのぎの発言である可能性のほうが大でしょう。

 

Source / Car and Driver
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。