ネットフリックス(以下Netflix)はハリウッドのルールを破り、巨大な世界的動画配信システムとしてエンターテインメント企業がこぞってビジネスモデルを真似する存在となりました。ですが成長の鈍化に伴い、「前進するためにウォルト・ディズニーを真似することにしたようだ」と「ロイター」は2022年7月19日公開の記事で伝えています。

その記事の冒頭には、このテレビや映画の視聴方法に変革を与えたこのNetflixの幹部に、ロイターがインタビューした際のまとめとして、こう記されています。

「映画・テレビ・ゲームと消費者向けプロダクツを横断するブランドを構築することで成功したミッキーマウス、そして『スターウォーズ』の成功に倣(なら)うことを目指している」とのこと。

Netflixは、同社の規模の大きいテレビシリーズや映画をその世界観とキャラクターが繰り返し戻ってこれるように努力しています。つまり、これは「フランチャイズ戦略」であり、今回その詳細が初めて公に発表されました。いわば、さまざまな人の趣味に合わせたカタチで広がるオリジナル作品の壮大な図書館を築こうとしていることをする同社の努力を認めようとするものです。「私たちはNetflix版の『スターウォーズ』や『ハリー・ポッター』を持ちたいのです。そして今それに向けて鋭意努力しているところです。ですが、それは一夜にして成し遂げられることではありません」と『ストレンジャー・シングス』の発見に貢献したネットフリックス副社長のマシュー・サネル氏はロイター社のインタビューで述べています。

『ストレンジャー・シングス』を成功モデルに

Netflixの幹部は、『ストレンジャー・シングス』をモデルとして挙げています。現在第4シーズンまで配信されているこのSFシリーズは、ウォルマートのサーファーボーイの冷凍ピザからハズブロのマジックエイトボールのおもちゃ、さらにはライブ体験などの商品ともコラボレーション。さらに、製作総指揮のダファー兄弟が『ヴァラエティ』誌のインタビューを通じ「ストレンジャー・シングス」のスピンオフシリーズと舞台の制作も進行中と発表があったばかり。版権を持つ同社はまた、ストーリーがよく知られ、視聴者を取り込んでいることから、今後放送予定の3番組をフランチャイズの候補に挙げています。

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『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4 VOL 2 予告編 - Netflix
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4 VOL 2 予告編 - Netflix thumnail
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ひとつは『The Three-Body Problem(原題)』。中国のSF3部作の1作目を映画化するもので、HBO『ゲーム・オブ・スローンズ』の共同クリエイター、デイビッド・ベニオフとD.B. ワイスを製作総指揮として製作中です。また、日本の漫画を原作とする『ワンピース』が撮影中で、アニメ『アバター:ザ・ラスト・エアベンダー』の実写版も撮影を終えたばかりです。

その他にも、成長中の映画フランチャイズを5年前にゼロからスタートしたNetflix作品には、新進気鋭のフランチャイズが目白押しです。シャーロックの10代の妹を描いた『エノラ・ホームズ』、アガサ・クリスティ風のミステリー『ナイブズ・アウト』、不死身の傭兵チームを描いた『オールド・ガード』、アクションスリラー『エクストラクション』、ゾンビの物語『アーミー・オブ・ザ・デッド』、スパイスリラー『ザ・グレイマン』などが続々と発表されています。

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『ワンピース』セット潜入初公開映像 - Netflix Geeked Week
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映像化原作は専門担当を雇用。ロイヤリティだけで約5000万ドルから7500万ドルの収益

映像化する素材(原作・元ネタ)をスカウトする際、Netflixは外部のエージェントや出版社から原案が持ち込まれるのを待つのではなく、社内でブックスカウトを雇って、映像化する作品を探したとのこと。先述のサネル氏は、このステップを「ゲームチェンジャー」と呼んでいます。また、ビデオゲーム部門も設立し、同社は、フランチャイズ構築の初期段階から、マーケティングや消費財のスタッフを参加させるようになりました。

グローバル・ライセンシング・アドバイザーズのCEOであるスティーブン・エクストラクト氏は、『ストレンジャー・シングス』だけでも、2025年から商品、イベント、場合によってはテーマパークの乗り物やデジタルアバターなどから、年間10億ドルの売上を生み出す可能性があると述べています。Netflixは、これらの売上から約5000万ドルから7500万ドル(約70億円~100億円)のロイヤリティを得ることができ、さらに商品から無料の広告を得ると見ているようです。

ついにNetflixにも広告が入るか

しかしNetflixのフランチャイズ構想は、加入者数の減少に伴う2度のレイオフを経て、正念場を迎えています。Netflixは、かつて絶対にしないと誓った、低価格の広告付きサービスの構築を急いでいるようです。火曜日に行われる四半期決算発表では、さらに200万人の加入者を失うと予想されています。同社の株価は今年に入ってから70%下落しました。

ロイター社は匿名のNetflixの現在のパートナーが、映画グループとテレビグループの間の協力関係の欠如と見られるものに不満を抱いていると漏らしたことも伝えています。このためにヒットシリーズの続編やスピンオフ、映画化によって成功を収めようとする取り組みが阻害されていると言います。その点Netflix広報は、クリエイティブなエグゼクティブが密接に協力し合い、別々にプロジェクトを進めることもあるが、同じ目標に向かって仕事をする環境でもあると説明しています。従来のスタジオシステムでは、長編チームとアニメーションチーム、テレビシリーズチームの間に大きな壁がありましたが、Netflixは非常に若い企業であったおかげで、壁を作る時間がなかったとしています。不必要な壁の不在を活用し、今後ディズニー以上にフランチャイズ戦略を成功させることができるか、見守る必要がありそうです。