アウディと、米国大手トラックメーカーのナビスターが協力し、乗用車とスクールバスなどの安全性向上を目的とした新たなプロジェクトに取り組んでいます。この2社は、「C-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything:セルラー・ビークル・トゥ・エブリシング)」と呼ばれる通信技術を用いることで、アウディ車両とスクールバスや緊急車両を通信網で結び、それによって交通事故の削減を目指しています。

これまでにもアウディは、渋滞や道路工事などの情報をドライバーに通知するツールなどC-V2X技術の応用に力を入れてきました。その後も子どもたちの乗り降りで停止する頻度の高いスクールバスや、緊急車両などの動静を乗用車のドライバーが把握できるようにするため取り組みを続けています。

では、C-V2X技術はどのように活用されるのでしょうか?

これは双方向通信の新型装置で、例えば見通しの良くないカーブで停車している車両の存在をドライバーに通知し、同時にスクールバスなどのドライバーに対しては急接近している他の車両の存在を通知してくれるというもの。このような情報共有を行うことで、スピードを出して接近しているクルマが通り過ぎるまで乗客の乗り降りを待ってドアを閉めたままにしておくなど、選択の機会を与えることが可能となっています。

また、スクールバスや緊急車両に対しては付近の車両の交通状況に関する情報を知らせ、必要に応じて視覚的・聴覚的な警告信号をドライバーに対して発信。アウディとナビスター両社は、このような活用に特化したC-V2X機能搭載の車両を用いて、今夏にも公道でテストを開始する予定であるとしています。

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AUDI
アウディの調査によると、アメリカの通学路で発生する負傷事故は毎年およそ2万5000件、死亡事故は100件に上る結果が示されています。

通学時の安全確保に取り組むアウディ

スクールバスの安全性向上は、米国運輸研究委員会(TRB)が数十年にもわたって取り組み続けているプロジェクトです。1989年にはすでに、通学時の児童の安全をいかにして確保するかに関する研究発表が行われるようになりました。

2020年8月に公開されたTRBの研究報告によると、アメリカ国内における通学児童の移動距離全体の約25%がスクールバスの利用によるものであるとした上で、スクールバスを利用する児童が被害者となる負傷事故については4%未満、死亡事故については2%未満に過ぎないことを挙げ、他の交通手段と比較し安全性が高いことが示されています。

その一方で、アウディが実施した調査によれば、アメリカの通学路で発生する負傷事故は毎年およそ2万5000件、死亡事故は100件に上るとの結果が示されています。

アメリカでは、停車中(乗降中)のスクールバスの横を走行するのは交通違反とされています。ですが、2019年の調査ではスクールバスが停車信号を出しているのにも関わらず、それを無視する一般車両のドライバーによる「ストップアーム(スクールバスに搭載されている乗降者時を知らせる標識)違反」が推定1700万件を超えることが判明しています。

アウディが同様の目的でC-V2X技術のテストを実施するのは、今回が初めてではありません。2020年10月には、「乗用車がスクールゾーンに侵入した際や停車中のスクールバスに接近した際に、ドライバーに対して警告信号を送る技術をアプライドインフォメーション(Applied Information)社との共同プロジェクトとして開発するため、ジョージアでテストを開始する」と声明を出していました。また2022年3月には、対自転車の交通事故の削減を目的にCommsignia社Qualcomm社、およびSpoke(自転車をより安全でより接続性の高いものにすることを目的としたモビリティプラットフォーム)とのパートナーシップも発表しています。

日本国内においても、同様の取り組みを強化することが期待されます。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です