聴き手を、安らぎの世界へと導く演奏家。

 それはときに柔らかく、ときに力強く奏でる…。その中にはテンポの良さが見事に調和している。

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Tomio Takahashi
ピアノの美しいフォルムと光に照らされた響板およびフレーム、弦からなるピアノ内部と共に、それを奏でる児玉 桃さん...それぞれの対比を狙って撮影。

 13歳のときに、パリの国際コンクールで優勝。そして、世界でも60年以上と歴史が古く権威のあるミュンヘン国際音楽コンクールで最高位に輝いたのは1991年。当時としては最年少での受賞となった。

 後者のミュンヘン国際音楽コンクールは、世界の権威ある国際コンクールの中でも歴史と伝統のある難関なコンクールとして知られ、他のコンクールとは少し変わっているのが特徴だ。1952年に第1回が開催され、今2021年で第70回目(2021年8月30日~9月17日を予定)を迎える。 第1回目はピアノ部門のみで開催されたが、1953年の第2回目以降は声楽、弦楽器や鍵盤楽器など含めて全28部門の中から、毎年数部門だけ選ばれる。それらがいかにして決められのは、定かではないが...。ちなみに児玉 桃さんが受賞した1991年は、児玉さんのピアノ部門と共にトランペット部門、そしてパイプオルガン部門から選定された。

 児玉さんの魅力は技術的以外に、クラシックから現代音楽に至るまでの幅広いレパートリーを持ち合わせているということだ。

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Tomio Takahashi
大きなサイズの「フルコン(フル・コンサート・ピアノ)」2台による連弾のリハーサルを行うお二人。実は児玉 桃さんの姉・麻里さん(左)もピアニストであり、互いにソリストとして第一線で活躍しながらもこのように、定期的な姉妹共演を重ねている。

 現在もパリにお住まいの児玉さん。子どもの頃からヨーロッパを生活のベースにしながらパリ国立高等音楽院に通い、そして、ミュンヘン国際コンクールでその栄光を手にしたのだ…。

 しかし、すべてが順風満帆(じゅんぷうまんぱん)に進んできたように見えるが、影では人の何倍もピアノと向き合い、音符と格闘する日々が続いていたのだ 。その後、国際的な活躍の輪が、水面に落とした水滴の波紋のように広がっていった。

 小澤征爾指揮ボストン響やベルリン・フィル、モントリオール響、ベルリン・ドイツ響、そしてNHK交響楽団とのアジアツアーなど…実績と経験を積み重ね、どんどん磨きがかかっていったのである。

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Tomio Takahashi
他の演奏家が退席した後も、1台のピアノで連弾の練習をし続けた児玉姉妹。スポットライトに照らされた児玉姉妹の姿から、互いに自分自身と対峙するストイックなアティチュードを表現。
夢の衣装選び

 トップの写真などを撮影した場所は、横浜みなとみらいホール。そして、そこにあるピアノが置かれている練習室。数時間にも及ぶリハーサルと緊張、気迫の本番後のお疲れの折にお願いした。これらは児玉さんが所属する事務所の社長、平佐さんの粋な計らいで実現することができた。

 約束時間近くなると、児玉さんが大きな衣装トランクを「ガラガラ」と押しながら現れる。そして、気さくに私に声をかけてくれた「どの衣装が良いですか?」と。実に贅沢な話ではないか。世界を舞台に活躍するビアニストを目の前にして、これから撮影する際の衣装を一緒になって選べるという贅沢…。実に、写真家冥利に尽きる出来事であった。

 結局、夢の衣装選びはというと...。黒いピアノに合った、派手な衣装は避け質素な児玉さんらしい、薄いグレーの服に決定した。

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Tomio Takahashi
淡い光で演出。夢の世界のように…。

 今回は今までの演奏家やアーティストとは大きく異なり、ピアノという巨大な楽器と児玉さんをどう表現するかという最大の難題に直面した。そこで思いついたのが、ピアノを真横から撮り、これ自体を黒いフォルムとすること。ピアノの裏側にからの、少し強めのストロボライトで全体が明るく、「光に包まれた風」に仕上げてみたことだ。トップや上の写真がまさにそれなのだ。

名演奏の数々

 児玉さんの演奏は、ジャズを多く扱っている人気レーベル「ECMレコード」から多く出されている。アメリカやヨーロッパの多くのアーティストがリリースされているところ。主な配給元は、ユニバーサル ミュージック グループだ。

 代表アルバムは、世界的な指揮者の小澤征爾さんと共演した細川俊夫作曲のピアノ協奏曲第23番『月夜の蓮』。これは水戸芸術館のコンサートホールATMで行われたものであり,注目を集めた。
他にヨーロッパでも高い評価を得ている、「ドビュッシー:impressions」「ショパン・ピアノ作品集」がリリースされたりと、いろいろと出しているので演奏ぶりをぜひ、堪能していただきたい。

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卓越したパーフォーマンスを奏でる、まさにゴッドハンド。
 癒しで人生に花を

 クラシック音楽は、昔からストレスを緩和すると言わている、ピアノは特に。それが名演奏となれば数倍にもなるだろう。基本的にクラシックはリズム、メロディ、ハーモニーの3要素から成り立つ。それが複層的に調和しているためリラクゼーション効果が高く、リラックスするとストレス解消効果のある、アルファ波を発生するということだ。

 癒しの効果は音楽に限ったことではなく、美しいや風景に接した時にも同じこと。児玉さんの美しい調べを聴いていると、欧州や日本の癒しの水の情景が自然と浮かんでくるのだ。

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Tomio Takahashi
高橋が訪れた世界で最も美しい湖の町、オーストリア「ハルシュタット」の日没のパノラマ作品。

 お姉さんの児玉麻里さんも、著名なピアニスト。年に数回来日し、日本でも姉妹で息の合った演奏や楽団とのコンサートを開催しているので、皆さんもぜひ足を運ぶといいだろう。人生に素敵な花を添えてくれるだろう。


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Tomio Takahashi

児玉 桃

 J.S.バッハからメシアンを含む現代作品まで、幅広いレパートリーと豊かな表現力で活躍を続ける国際派。幼少の頃よりヨーロッパで育ち、パリ国立高等音楽院に学ぶ。1991年、ミュンヘン国際コンクールに最年少で最高位に輝く。

 その後、ケント・ナガノ指揮ベルリン・フィル、小澤征爾指揮ボストン響、モントリオール響、ベルリン・ドイツ響、北ドイツ放送交響楽団との共演、デュトワ指揮NHK交響楽団とのアジアツアーのソリストを務めるなど着実に世界的なキャリアを築く。

 2008年は、メシアン生誕100年を記念したシリーズ公演(全5回)を行い高い評価を得た。2013年にはルツェルン音楽祭、ウィグモアホール、東京オペラシティ文化財団の共同委嘱による「細川俊夫:練習曲集」をルツェルン音楽祭にて世界初演、12月には東京オペラシティにて日本初演、翌年ロンドン・ウィグモアホールでも演奏。

M. Hirasa Ltd.|ヒラサ・オフィス
Momo Kodama - Pianist- Official website
児玉 桃 | Momo Kodama - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

 
◇コンサート情報
群馬交響楽団 第571回定期演奏会

開催日/9月18日(土)
開催時間/15:00開場 16:00開演
場所/高崎芸術劇場 大劇場
お問い合わせ/群馬交響楽団
TEL 027-322-4316
公式サイト

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写真家,カメラマン,高橋福生
Tomio Takahashi

写真・文/高橋福生(たかはし・とみお)

撮影スタジオ勤務中の23才のとき、カメラ誌に載ったグラビアが、報道写真界の草分け三木 淳氏に高く評価される。それが転期となり、写真家を志すためにフリーとなる。メーカ-フォトサロンをはじめ、数多くの写真展を開催。雑誌や広告などでも活躍中。「癒しの水の情景」「美しい光の情景」をテーマに、水と光の情景写真家として媒体などで作品を発表。テレビ朝日系『人生の楽園』に出演し、癒しの水風景「水園」の作品が紹介される。これらの「水園」シリーズは東京都写真美術館でも展示された。現在もライフワークとも言うべきプロジェクト、著名アーティストを光で演出した情景「未来に残したい光のアーティスト」を継続している注目のフォトグラファー。現在、高橋作品を使用した「癒しの水の情景」のデジウォールを「壁紙のトキワ」で販売中。

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