日本のギャラリーと海外のギャラリー、行政と民間、アートとその他の領域など、さまざまな“コラボレーション”をもとに生まれたアートフェア「Art Collaboration Kyoto(以下ACK)」が、2022年11月18日(金)から20日(日)で開催されます。
“現代アートを買う”という行為のハードルを下げ、実際に購入者も30~40代が多いというこのイベント。開催を前にその特徴や魅力を、ここに予習しておきましょう。
【INDEX】
▶ ACKとは?
▶ サテライトプログラムも充実
▶ 昨年は1万4000人が来場
▶ プログラムディレクターのおすすめ&アドバイス
ACKとは?
パンデミックによる延期を経て2021年に初開催となったACKは、東京と比べると美大やアーティストの数は多いもののアートギャラリーがまだ少なく、マーケットに大きな伸びしろを秘めている京都が舞台です。
国立京都国際会館をメイン会場に、日本のギャラリーが「ホスト」となって海外のギャラリーを「ゲスト」として招き、ブースをシェアして出展・販売するという他に類を見ないアートフェアとなります。
例えば今年は日本のAnomalyがジャカルタのROHを、NanzukaがNYのThe Holeを、SCAI The Bathhouseが台北のTKG+を、Taka Ishii GalleryがロンドンのSadie Coles HQを…というようにそれぞれ迎え入れ、「Gallery Collaboration」というセクションのもと、ひとつのブース内でコラボレートして作品を展示します。
大御所から新鋭まで計64のギャラリーが参加し、世界各国のギャラリストやコレクターたちが集うため、現代アート界の動向が垣間見えたり、日本初上陸のピースに出合えたりと刺激的な発見も多いはず。アート市場の活性化や担い手の育成、街の活性化を狙うだけでなく、2023年に文化庁が京都に本格的に移転することも開催の背景にあると言います。
また、建築家の周防貴之氏が空間デザインを手がける会場の構成もユニークです。今年は京都の街並みを意識したレイアウトが予定されており、来場者は好奇心をくすぐられながら、街歩きをするように会場を巡ることができるでしょう。
会場内には京都にゆかりのあるアーティストの作品や、テーマを設けたグループ展が展開される特別セクション「Kyoto Meetings」もあるので、すみずみまで見て回れます。
サテライトプログラムも充実
さらに今年は、プログラムディレクターである山下有佳子氏によるキュレーションのもと、重要文化財である本願寺伝道院を会場としたサテライトプログラム『Flowers of Time』を開催。中川幸夫やユージーン・スタジオ、コア・ポア、小瀬真由子といった作家の作品を展示し、幅広いアートを堪能できます。
無料のシャトルバスの運行やシェアサイクルサービスもあるので、メイン会場との行き来もしやすいでしょう。また会場では、国内外からキュレーター、ギャラリスト、アーティストなどを招いたトークイベントを実施 (オンライン配信あり)。落合陽一氏などをはじめとする注目のゲストも登壇する予定です。
そのほかにもキッズ向けのワークショップ、京都の街全域にわたって行われる連携プログラムなどもあるので、週末をフル活用してアートを存分に楽しめます。
昨年は1万4000人が来場
なお、初回となった2021年は54のギャラリーが参加し、約1万4000人が来場しました。
数千万円レベルの高額なものももちろんありますが、1万円程度でハガキサイズのドローイングが購入できるギャラリーもあり、初心者でも気軽にアートを手に入れることができるでしょう(もちろん、購入せず見て回るだけでも大丈夫!)。
メイン会場である国立京都国際会館は、かの丹下健三氏に師事していた建築家、大谷幸夫氏によるモダニズム建築です。合掌造りか神社の社殿かのような、インパクトと気品を備えたこの場所の魅力もあわせて味わっておきましょう。
プログラムディレクターのおすすめ&アドバイス
ここで2回目の開催にあたり、プログラムディレクターを務める山下有佳子氏にいくつか質問を投げてみました。
① 今年のACKのみどころ、おすすめポイントは?
今年は昨年より、さらに多い65の国内外のギャラリーが会場に集まり、今まさに世界で旬な作品をお楽しみいただける機会となっています。今年は特にメイン会場のギャラリーブースにとどまらず、国際会館全体を使ったプログラムや京都市内に飛び出し、普段は非公開の本願寺伝道院で『Flowers of Time』という特別展を開催いたします。
アートフェアの大きなコミュニティという特性を生かし、日本でより多様なアートに触れられる機会をつくることがACKの大きなミッションだと思っています。また、普段は見ることができない京都を見ていただくきっかけをつくるということも、大切にしています。この特別展はこうした2つの目標から生まれました。
そして、今年から新たに始まるパブリックプログラムは、主に大型のパブリックアート作品をメイン会場全体に展示し、来場者が歩き回りながら作品を見ていただくことができます。今年のACKのキュレトリアルテーマ「時間の花」に沿って、ゲストキュレーターによって作品が選ばれています。
今年のゲストキュレーターは、私と同じく30代のジャム・アクザールを招きました。彼女はフィリピンで、アーティストやアートのサポートをするための財団を創設した経験をもちます。彼女が選んだ、日本ではなかなか見ることができないアジアパシフィックのアーティストによる作品や、トロマラマなど注目の若手作家の作品もご覧いただけます。
② アートフェア初心者へのアドバイスや、作品購入に際しての心構えなどはありますか?
アートは、その人の感性を映し出すものだと思います。だからこそまずは、自分が好きなもの、心を動かされるものを選ぶことが大切ではないでしょうか。
また、初めて作品を購入するときはどこで買うべきか、“信用”という部分で多くの方が悩まれていると実感しており、「心を動かされるか」ということと同時に、「信頼できる場所で作品の購入をすること」が大切だと思っています。
ACKは、国内外の60以上のギャラリーの多様な作品を一度に見ていただける、またとない機会でもあります。まずは会場内を歩いていただき、自分の審美眼に響くもの、そしてそこにいるギャラリスト、いわばアートのスペシャリストとの対話を大切にしながら作品を選ぶというプロセスを楽しんでみてはどうでしょうか。ACKには国内外からの選りすぐりのギャラリーが集結しているので、安心して作品を購入いただけるかと思います。
また公式サイトでは、各ギャラリーが出品予定の作品画像を公開しています。ご来場前にチェックして、好みのアーティストや欲しい作品の目星をつけておくこともできます。
デジタル化が進む現代において、画面上で購入を決める方も増えてきています。ですがACKでは、実際に会場にお越しいただき、好きな作品に出合う楽しみを再発見していただきたいという思いを込めています。作品の印象やサイズ感は、実際に目の前で見るのと画面上で見るのとでは大きく異なる部分があるので、ぜひ生の作品を会場で感じてほしいです。
③ 現代アートを手に入れることの、いちばんの魅力・楽しさとは?
先述のとおり私は、「アートとは、その人自身の感性を映し出すもの」と思っています。つまり、作品のコレクションは集める人の個性を反映するのです。それらに囲まれて過ごすことが、アートをコレクションする醍醐味だと思っています。
中でも現代アートの特性である、作品が同時代につくられたものであること、つまり、その作品を通して自分が生きているこの社会を今一度見つめ直すことができる点が、楽しみのひとつではないでしょうか。
さらにはコレクションすることによって、自分と同じ時代を生きているアーティストやギャラリスト、そして同じアーティストを応援するコレクターとのつながりを形成し、ご自身の世界やコミュニティが広がっていくことが魅力だと思います。
④ 2021年のACKでの印象的なエピソードは?
30~40代の比較的若い世代で複数点購入されている方が多く、アートを買うことがより身近になっていると感じます。高額な作品ももちろん売れていましたが、本当に欲しい作品を皆さんが吟味して購入されていたようにも思いました。
美大生も多く来場しており、次世代のアーティストやコレクターに少なからず影響を及ぼす意義のあるフェアだと実感しています。
――これからの京都を代表するアートイベントとなるに違いない、このACK。ちょうど京都は紅葉シーズンでもあるので移り変わる景色とともに、エキサイティングな芸術の秋を心ゆくまで味わってみてはいかがでしょうか。
Art Collaboration Kyoto
会期/2022年11月18日(金)~20日(日)
時間/12:00~19:00、最終日20日のみ12:00~17:00
メイン会場/国立京都国際会館イベントホール(京都府京都市左京区岩倉大鷺町422)
入場料(オンライン事前予約制)/ACKチケット:
早割価格(10/31まで販売中) 一般2500円、大学生・高校生1000円
通常料金 一般3000円、大学生・高校生1500円
サテライトプログラムチケット:1000円
TEL/075-708-8591
※展示やイベント内容には変更の可能性がございます。最新情報は公式サイトをご確認ください。