ウェールズ出身のケリス・ウィン・エヴァンス氏(Cerith Wyn Evans)は、ネオンを使用した大型作品でよく知られています。

イサム・ノグチ作の石庭「天国」で開催される今回の個展では、2018年に同会場で開催された個展の第2章と位置づけられる本展です。

床面から天井まで達する光の柱作品に加え、クリスタルガラス製のフルートが自動演奏される立体作品と、フランスの小説家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の日本語訳の一部をもとにした大型ネオン作品が展示されています。

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Kenji Takahashi

エヴァンス氏は物語や概念を他者に伝達する手段のうち、とりわけ文学や美術、哲学、物理学などに関心を寄せて、これらをテキストや記号、イメージ、光、音など…を運ぶ器として捉えてきたアーティストです。

その作品においては、ある器に収められた物語を別の器へと移し替えることで、もとの器では現れなかった物語の側面を析出(せきしゅつ)することを試みているのです。

例えば、本展で展示される大型ネオン作品《F=O=U=N=T=A=I=N》は、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』第4篇「ソドムとゴモラ」の日本語訳の一部に基づくものです。元来フランス語で書かれたプルーストの文章は、訳者によって日本語へと移し替えられ、それをエヴァンス氏はネオンへと翻訳することで作品を重層化しています。

《概要》ケリス・ウィン・エヴァンス 個展

ケリス・ウィン・エヴァンス 個展
Kenji Takahashi

会期:2023年4月1日(土)~4月29日(土)
会場:草月会館 1F 石庭「天国」(東京都港区赤坂 7-2-21 Googleマップ
開場時間:10:00~17:00
定休日:毎週日曜日
特別協賛:ロエベ財団