トランプ大統領のアジア各国歴訪の旅は、最初から希望がもてるものとは感じられませんでした。

政治情報サイト「Politico」では、同大統領の準備ぶりについて詳しく報じた記事を掲載していましたが、その内容は決して有望とはいえないものでした。同記事のなかには、側近の人たちが「大統領に詳しい情報を教えすぎることを避ける」ため、ブリーフィングを手短に済ませようという話がありました。

また、今回の旅で、同大統領が日韓両国間のいわゆる戦争慰安婦に関する論争を解決しようとする可能性があったこともわかりました。この点についてトランプの顧問を勤めるある人物は、「そんなことになれば大惨事につながりかねない」という分かりやすい診断を下していたのでした。

しかし、アジアの同盟国に対して、自分の存在を際立たせようとするこの大統領の能力はとても強力で、彼は歴訪先に到着する前から仕事を片付けはじめる可能性があったようです。この点について、日本でもっとも古い英字紙である「ジャパン・タイムズ」には、トランプ大統領が日本の中世の歴史と北朝鮮の弾道ミサイルとの間にある関係性について、ある興味深い見方をしているとする記事が掲載されていました。

<「ジャパン・タイムズ」の引用>

その啓示がトランプ大統領の頭の中に浮かんだのは、同氏がアジア5カ国歴訪の旅の最初の目的地である日本に、日曜日(11月5日)に到着する前のことでした。北朝鮮による核兵器およびミサイル開発プログラムの脅威は、同大統領と安倍晋三首相が翌日に行う会談での優先事項のひとつだったのです。

<「ジャパン・タイムズ」の引用>

複数の情報筋によると、トランプ大統領はここ数カ月の間に、北朝鮮からの脅威にどう対応するかをめぐって東南アジア諸国の首脳と話し合いを行いました。しかしながら、そのなかで北朝鮮の発射したミサイルを打ち落さなかった日本の判断に、疑問を呈していたということです。

<「ジャパン・タイムズ」の引用>

同大統領は、日本は「侍や武士」を生んだ国であるのに、なぜそんな国が、「ミサイルを打ち落とさなかったのかが理解できない」と口にしていたと複数の情報筋が述べていました。

多くの媒体からは、「巡航ミサイルを敵に回して戦う時代に、刀は理想的な武器ではない」とするスラムダンク級の皮肉を含んだ記事が出ていました。

たとえば情報サイト「ギズモード」では、「ジャパン・タイムズ」の指摘をふまえながら、ミサイルを打ち落とすことには、いくつか実際的な懸念があると述べていました。

この懸念には、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、速度・高度・軌道のせいで打ち落とすことが難しかったこと、発射されたミサイルが陸から遠く離れた海上に落下すると日本が早い段階で断定していたこと、ミサイル撃墜に失敗すれば日米の対ミサイル防衛用の技術の欠点が暴露されてしまうこと、そうなっては北朝鮮と交渉するとなった際に、同盟国側の立場が弱まることなどが含まれています。

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こうした要因は、兵站(へいたん=戦闘地域から見て後方で活動する、その戦闘を指揮する軍・機関・諸施設の総称)ならびに地政学的なニュアンスを含むため、トランプ大統領は正確には理解できませんでした。

しかし、それが同大統領の発言とは、ほぼ関係ないことを私たちは知っています。

同大統領が言おうとしたのは、日本にはタフさと強さという歴史的遺産があるということであり、そして、そんな国が自国の上空を通過するミサイルを撃ち落とそうとしないのは、評判倒れだと彼の目には映ったということでしょう、きっと…。日本ももっとタフで強い国にならなくてはならない、トランプ氏の大統領当選後に米国がそうなったように。

日本では第二次世界大戦で敗れて以来、平和主義が社会や政治に関する文化の柱となってきました。ですが、これは帝国建設を目指してナチスドイツと手を組むことになった軍国主義の瓦解(がかい=一部が崩れることが要因となって、全体が崩れていくこと)を受けたものでした。

もちろん、世界で唯一の被爆国という別の要因もあります。第二次大戦の終結前には米国の核兵器によって、日本の民間人は恐怖を味あわされたこともあることでしょう。しかしトランプ大統領には、そんなことはどうでもよく、ぜひ日本には「あの見栄えのする鎧甲を身につけて、刀を抜いてほしい」と願っていたと推測できるのです。

Source / ESQUIRE US
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。