ロシアによるウクライナ侵攻という悲劇的なニュースが報道されるまで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の名は政治界において、それほど重要視されていなかったのは事実でしょう。しかし現地時間2022年2月25日(金)に、「軍も市民もいる。私たちは国の独立を守るためにここにいるんだ」と自身で撮影した動画を配信し、プーチン政権による軍事侵攻に屈しないことを宣言しました。この動画によってウクライナの人々だけでなく、世界中の人々の心を彼は掴んだはずです。

ゼレンスキー大統領は、政治界においてこれまでの経歴からほとんど期待されていない存在でしたが、いまは言葉通り命をかけて国を守ろうとしています。そんな彼の経歴はと言うと、もうご存知の人も多いと思います。そう、彼はコメディアンから大統領になったという驚くべき出世を遂げた人物なのです(とは言え、俳優から大統領になった人はもう既にいますが…)。

自身のスタジオ「Kvartal 95」が制作したコメディ・ドラマシリーズ「Servant of the People(国民の僕)」は、「さえない歴史教師の政治批判が隠し撮りされ、ネットで話題になったことから大統領になってしまった」という政治風刺作品です。

2015年に放送が開始され、2019年までの間に51話(シーズン3は3話のみ)も制作され終わりを告げました。シーズンが終わった理由は、同年にドラマで主演を演じていたゼレンスキー自身が大統領に当選したからです。ゼレンスキー大統領は、まるでドラマをなぞるようにコメディアンから大統領へと転身したというわけです。

このドラマはウクライナのテレビチャンネルや数カ国のNetflixで放送されたほか、スタジオは全シリーズをYouTubeに掲載しています。

大統領職をパロディ化したコメディアン自身を、大統領にしてしまったウクライナを笑う人がいたのも事実です。しかし、ゼレンスキー大統領は本気でした。彼が就任して3年後、この彼の決意を疑う人はもういないはずです。

この番組はベラルーシでも放送され、TNT放送はロシアでパイロット版を放送したこともありました。ウクライナの反プーチンに言及したダジャレを検閲したとは言え、放送していたのです…。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

このシリーズは、今でもYouTubeでポーランド語・英語・ロシア語の字幕付きで観ることができます。そして、この作品が注目を集めることは間違いありません。それに目をつけた米Netflixは、再びリストに追加することを発表しました。

Netflix Japanで配信されるかどうか?は、現段階では未定(※)です。が、わかっているのは、その権利をめぐる本当の戦いがあることです。私たちが体験しているこの「シーズン4」が、早く終わることを願っています。少なくともこのシリーズのように、ゼレンスキー大統領を観て、ニュースで見る姿とは真逆の…ドラマの中の人のように少し笑えるようになることを世界中が願っているはずです。

[追記 2023.05]現在Netflixジャパンにて配信中

Source / ESQUIRE ES