ジョージ・W・ブッシュ氏が大統領に再選した2004年、そのことに関して,首を傾げた人は少なくありませんでした。つまり、「なぜ彼が再選したんだ!?」と不思議に思っていた方のほうが多いと感じる雰囲気でした。
彼は就任前から、大統領としてふさわしい知性の持ち主か否か…危ぶむ声があったことは、日本にも伝わってきていたはずです。そう、イラク侵攻の泥沼化や著しく低い作文能力にもかかわらず、ブッシュ氏がさらに4年間大統領の座に居座ることに対して、多くの人々は批判していました。
そんな彼が再選された理由について…中でも一番納得のいくものが、「一緒にビールを飲む『飲み仲間』として、彼が好ましいと思った有権者が一番多かったから」かもしれません。そんな親近感が功を奏したのでしょうか、2004年秋に行われたZogby/Williamsの調査では、57%の有権者がブッシュを支持していたそうです。
時は経ち、2019年ももう後半に差し掛かりました…。そこで、ホワイトハウスを去ってからもう2年半以上も経った元大統領バラク・オバマ氏を見てみましょう。彼は相変わらず、仕事の後の「飲み仲間」のような着こなしをしています…。それは悪い意味で言っているのではありません。
2019年9月29日から10月1日まで、ドイツのミュンヘンで開催された「ビッツ&プレッツェルズ・ファウンダーズ・フェスティバル」(Bits & Pretzels Founders Festival)で、オープニングでの講演を行ったオバマ氏。そのときの着こなしは、選挙中でも場違いではなさそうに見えるスーツ姿で登場していました。それは着心地が良さそうな細身のスーツにノータイというスタイリングであり、控えめなクラシックな腕時計が好印象なアクセントとなっていました。
例えば会社の役員会議中、自分たちの会社のCEOとのやり取りを心から楽しめる方はそうはいないでしょう。ですが会議終了後、「会議お疲れ会」的な飲み会が開かれたのならどうでしょう…しかもノーネクタイ姿でCEOと対面するとなれば…どんなに偉い人と一緒でも、同席した私たちは同じレベルの人として接することができることでしょう。それを日本人らしい言葉で表現するなら、「無礼講」ってやつですね(笑)。
オバマ氏(きっと、2020年の大統領選挙戦に出馬するるたくさんの候補者たち)は、庶民と交わるときにはシャツの袖をまくり上げ、ネクタイを外し、顔に笑みを浮かべることで親近感を得てもらえるように努力していることでしょう。こうした立場の人間が、「みんなと一緒」「普通である」ということは、とても価値のあることです。そして、そうした状況においてオバマ氏は、「みんなと一緒」「普通であること」を表現する天才と言えるのです。。
こうしてオバマ氏の着こなしを確認しながら、トランプ氏の着こなしを見比べてみると…極めて対照的であることに気づくはずです。
ホワイトハウスにいるときも、あるいはワイオミング州での集会で演説しているときも、トランプ氏は常にダボッとしたスーツを着ています。トランプ氏は、自身の着こなしにおけるこだわりを決して緩めたりしません。彼は金曜日の夜にビールを一杯やるときのような恰好は決してしません。
トランプ氏はその代わりに、人々から隔離された空間で超然としたスタイルで臨みます。ビジネスマンのワードローブで完全装備したようなそのスタイリング…これはまさに1980年代の経営者が抱いているヒエラルキーそのものではないでしょうか。そうした思いが依然、トランプ氏の心の中心にあることを確信させるのでした…。
もちろん、「アメリカという国を、自分の所有する会社のひとつのように経営する」トランプ氏にとっては、そんなファッションも自分というブランド(会社)の一部と思っているのかもしれません。そんな中、彼の会社の多くが現在、破産申請を出しているように、それと同様に米国もここで財政面(そして道義的な面)で一度破綻してしまいえばいいとも思えるのです…。
しかしながら依然、有権者の支持率がマイナスになっていない現役大統領ですが、そんな彼の遊説用ずんぐりむっくりスーツスタイルについては、オバマ氏のほうが俄然支持率が高いことは間違いなさそうですね。
今後のトランプ氏の選挙キャンペーンでは、その着こなしにも注目してみましょう。
From Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です