パントーンが2000年から始めた「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」では、毎年のテーマカラーが選ばれます。2021年の「パント―ン・カラー・オブ・ザ・イヤー 2021(PANTONE COLOR OF THE YEAR 2021 )」では、「アルティメット・グレイ(PANTONE 17-5104 Ultimate Gray)」と「イルミネイティング(PANTONE 13-0647 Illuminating)」の2色が発表されました。2色選ばれるのは2016年以来、2回目のことになります。

 パントーン社は、「永続的で高揚をもたらす、強靭さと希望を伝える色の結合です」と言っています。毎朝起きて、コンピューターに向かって仕事をし、ときどきスーパーやコンビニへと買い物に出かけるだけの生活がいつまで続くのかわからない現状、「そんな1年間を、いずれかの色で要約できるか?」なんて、わかりませんが、それこそが同社の仕事なのです。白衣を着た多くの人々がテーブルの周りに座って、色とその意味について話し合っているところが想像できます(実際には、ウェブ会議であったかもしれませんが)。

 そしてその結論が、イエローとグレーだったというわけです。そしてその理由も、正論と言えるでしょう。ですが「エスクァイア」としては、「パント―ンは間違っている、『ネイビーブルー(PANTONE 276 C)』こそが2021年の色だ」と強く考えています。

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 春の代名詞が花柄であるように、男性の代名詞と言えばネイビー…これこそ画期的な鉄板色です。目立たないということを除けば、この不透明な時代をナビゲートするに最適な色合いであり、まさに一貫性を擁するカラーなのです。

 「ネイビーブルー」は古くから信頼性が高く、メンズウエアにとって必須のカラーです。何百万もの無難なスーツから、何百万もの美しいスーツまではこのカラーでつくられています。そして数カ月、数十カ月と続く自宅での部屋着としても信頼でき、支えにもなってくれるカラーがこの「ネイビーブルー」なのです。

cannes, france   may 14  actor tom hardy attends a photocall for mad max fury road during the 68th annual cannes film festival on may 14, 2015 in cannes, france  photo by tristan fewingsgetty images
Tristan Fewings
カンヌ国際映画祭でネイビーのスーツを着る、トム・ハーディ―。

 2020年の初春に緊急事態宣言が出たときは、家で服の組み合わせの実験をしたり、極めて着心地の良い服を選ぶことが楽しかったはずです。通勤やオフィスのマナーなどといった束縛から解放され、自分の好きなものを着こなせるようになった方も少なくないはず。予想以上に自宅にいるので、普段は選ばないようなマルチカラーの靴下を買ったりするなど、服装で刺激を求めた方もいたことでしょう。

pianist, singer and actor liberace at his palm springs home with his dogs in september 1980
eddie sanderson//Getty Images
1980年9月、犬に囲まれたパームスプリングスの自宅のパティオに座っているピアニスト・歌手・俳優のリベラーチェ。

 ですが、毎朝起きて仕事をして、近所に散歩に出かけ、海外ドラマを観ふける生活の中では自分自身を維持し続けることが最優先となり、服を着こなすというときめきを求める気持ちもすり減ってきていませんか?

 いま私たちに必要なものは、シンプルでスタイリッシュな服です。

 ベランダや庭、人里離れた山でキャンプができるようになる夏の自粛期間がリベラーチェ(派手なコスチュームで有名な天才ピアニスト)シーズンであれば、この冬はスティーブ・ジョブズを目指しましょう。

apple announces launch of new tablet computer
Justin Sullivan//Getty Images
2010年1月27日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたAppleスペシャルイベントで、新しいiPadのデモを行うスティーブ・ジョブス。

 ジョブズと言えば、「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」のハイネックに、「リーバイス」のジーンズ、「ニューバランス」のスニーカーをユニフォームにしていたことで有名です。

  モノクロームの着こなしは、色の多様性を否定する可能性もあります。ですが、テクスチャーに多くの選択肢を持つことができます。秋から冬の間、「エスクァイア」UK版の副ファッションエディターであるフィンレー・レンウィックは、自身のオリジナルユニフォームをつくりました。

 「ナイキ」のトラックスーツのボトムと、「ユニバーサルワークス」のドローコード付きパンツ、2つのネイビーのボトムを彼は偶然見つけました。それから「ユニクロ」のカシミヤニット、「クエーカーマリンサプライ」のフィッシャーマンニット、「サンスペル」のラムウールジャンパーもすべてネイビーです。もちろん、アウターとなる「ザ・ノース・フェイス」のフリースと「デサントオルテライン」のダウンも、ネイビーで見つけています。

 外出のときは、「ユニバーサルワークス」のネイビーのビーニー帽も一緒です。英国の作業着、日本のゴープコア(街着として着るアウトドアスタイル:「ゴープ<GORP>とは、<Good Old Raisins and Peanuts>の頭文字をとった造語で、ナッツやフルーツなどをミックスした栄養価の高いスナックのこと)、スポーツウエアの要素を1つにまとめた便利なユニフォームと言えるでしょう。素材はそれぞれ異なるものの、色合いが同じなのでコーディネートが上手にまとまります。

 彼がユニフォーム化したことで、発見できたことがありました。それは、「ネイビーブルー」はこの不安定な時代でも、耐性がある画期的なカラーだということ。これら多くのブランドが、「ネイビーブルー」のアイテムを必ず出しています。そしてヒョウ柄のボアフリースやフローラルなシャツとは異なり、「ネイビーブルー」を購入すれば、そのアイテムはあなたのワードローブで今後10年先も残っているに間違いありません。

 ジョルジオ・アルマーニ氏も45年間、この縁の下の力持ち的なカラーを用いて、ラグジュアリーで機能的なアイテムをミラノのランウェイで提案し続けてきました。また彼自身も、夏または冬、1985年または2020年でも、「ネイビーブルー」を愛用していました。

italian fashion designer giorgio armani speaking on his mobile phone 1990s photo by archivio apgmondadori portfolio via getty images
Mondadori Portfolio

 衝突し合うカラーリングや、奇妙なデザインのボトム、絵画のようなシルクシャツが日の目を浴びることもありますが、今のところ、この「ネイビーブルー」が間違いないでしょう…いいえ、永遠に良いはずです。

 それでも納得がいかない方は、このパントーンが今年のカラーに選んだグレーの色をした猫の顔を見てください。そして次に、ジョルジオ・“ネイビー”・アルマーニ氏の落ち着き払って準備万端といった顔を見てください。いかがですか? 一件落着したはずです。

giorgio armani and cat photo by �� vittoriano rastellicorbiscorbis via getty images
Vittoriano Rastelli

Source / ESQUIRE UK