これまでのところ、白いTシャツはいつでも私たちの役に立ってきました。ジェームズ・ディーンがいるし―皆に愛されている－、マーロン・ブランドのあの有名な写真― あなたのおばあさんがインスタグラムを使えたら話題にするに違いない－トランク（木の幹）のような腕が白いTシャツの袖を膨らましている写真です。
『グリース』のダニー・ズーコに扮したジョン・トラボルタ、それにブルース・ウィリス、ジョン・ヘダーが演じた同名の映画に登場するナポレオン・ダイナマイトも加えるべきでしょう。彼らは皆Tシャツを単に着ているのではなく、自分なりに着こなしてはいないでしょうか。
「白いTシャツは、いつでも頼りにできるアイテムです」と、マッチズファッション（Matches Fashion）のメンズウェア責任者であるダミアン・ポール氏は語ります。「白いTシャツが解決できないワードローブの難問などほとんどないでしょうし、いかに普及していても、まだまだクールなオーラを保っています」
ただし、身近な安価なものを安易に手に入れているだけでは、ブランドもののように自信にも似た、パワーを感じることはできないはず。男性のための最高の白いTシャツを見つけるには、高い壁を超える必要があります。そしてここに、それを見つけるための最適な場所を用意しました。
白Tシャツの歴史
それでは、まずは歴史の授業をしましょう。ダルい？ そんなことはありません。白いTシャツは、1904年にクーパーアンダーウェア社で誕生したと言われています。同社は、「独身男性用の下着」と宣伝されたプレーンな白い下着を着用した、口髭の生えた筋肉質の男性を描いた広告を出しました。その新製品のリリースの際には、「「No safety pins — no buttons — no needle — no thread（伸びる襟周り……着脱が容易……ボタンが外れたり、縫い直しも必要なし）」を宣伝文句に。「Bachelor Undershirts（バチェラーアンダーシャツ）」として勢力的に売り出します。その謳（うた）い文句で、独身男性を対象に販売されるというのは奇妙なことかもしれませんが。
しかしながら、もちろん既婚男性もこれを利用できるようになりました。やがて「独身男性用の下着」は、古いボタンを通すタイプの下着（修理が絶えなかった）に取って代わり、1914年にはアメリカ海軍の制服にもなります。
1904
「クーパー・アンダーウェア・カンパニー（The Cooper Underwear Company）」がTシャツを独身男性のための新しい下着シャツと銘打ち広告展開。
1914
1914年に米海軍の正式なユニフォームにTシャツを導入。
1920
スコット・フィッツジェラルド1920年代の代表作『楽園のこちら側（The Side Of Paradise）』にTシャツが登場。
1940
Tシャツは次第にハイスクールにおいて40年代のカウンター・カルチャー（反抗的文化）を代表するアイテムに。
1950s
マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンは白Tシャツを下着以上の存在に格上げするのに貢献。
多くの軍服由来のアイテムのように、クルーネックのTシャツは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に市民生活に浸透しました（Tシャツという用語自体は、古くはF・スコット・フィッツジェラルドの1920年のデビュー作『楽園のこちら側』に登場しています）。やがて1950年代になると、マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンのような特定の人物たちによって、Tシャツは下着以上のものへと確立していきます。これは反逆の象徴であり（当然、理由のない反逆です）、それ以来、Tシャツは芸術家、活動家、デザイナーなどにとっての白いキャンバスとなっています。
完璧な白Tシャツにするための秘訣とは?
「サンスペル」のヘッドデザイナーであるデイヴィッド・テルファー（David Telfer）によれば、Tシャツはすべて快適さに関係しています。「ネックラインが肌にスムーズで、縫い目と裾が耐久性があるかどうかは、購入時に注目する必要があるすべての詳細です」と彼は言います。「そしてもちろん、生地の品質は快適性を確保するだけでなく、長い耐久性を保証するために重要です」とのこと。
そのため、街で見つけることができる安価なマルチパックは、見かけほどお得ではないと言っていいでしょう。20ポンド（約3200円 ）以下で購入した場合、型崩れは覚悟しなければならないでしょうし、おそらく初めての洗濯の際に縮む可能性が大いにあるでしょう。本当の品質を求める場合は、50ポンド（ 約8000円）以上を費すようにと筆者は考えています。そこの値段を出してこそ、クラシックなピマ綿のクルーネックを手に入れることができるでしょうから…。軽量で柔らかい手触りのピマ綿は、エクストラロングステープル（頻繁にELSと略される用語）の綿です。それは、より安価なオプションよりも柔らかく、耐久性にも優れているのです。コストパフォーマンス的に考えるなら、後者のほうがお得とも言えるはずです。
比較的お手頃価格のおすすめ白Tシャツ
最初に紹介したピーマ（Pima）コットンよりも1ランク上の品質として、スピーマ（Supima）があります。これは「優れたPimaコットン」という意味で、その名の通りです。
その上には、カリブ海で手摘みされる最もシルキーなジャージー素材とされるシーアイランドコットンがあります。これらの選択肢は3桁の金額になることもあります。しかしながら前出のテルファーは、「きちんとつくられたTシャツなら、何年も持つはずです」と指摘しています。つまり、それはコストパフォーマスがいいということです。また、先週までに買った最新トレンドのアイテムをサポートする、選択の基盤となるTシャツとしても優れた存在になるはずです。
フィット感に関しては、クラシックなカットは上半身にぴったりとフィットし、肩の端に縫い目があり、袖は上腕二頭筋を真ん中あたりでカットされています。。胴回りは密着しすぎず、適度なゆとりがある程度のフィット感で、その裾の長さはパンツのフロントのジッパーやボタンを有する前立ての中央付近で終わる長さが理想的なフィット感だと考えます。もしあなたがボクシーなフィット感がお好みなら、着丈よりも身幅が大きいものを選んでゆとりを味わってください。
2023年に白Tシャツを着る最良の方法は何か?
もちろん、白いTシャツの着方は分かっているはずです。このアイテムはワードローブの必需品ではなく、ワードローブの定義者と言っていいでしょう。少なくとも数枚の白Tをストックしておかなければ、あなたのワードローブは完成していないも同然と言われても完全に否めることはできないはずです。
しかし、白いTシャツそのものおよび、その着こなし方においても、トレンドに左右されない…とは言い切れません。ファーフェッチ（Farfetch）のシニアメンズウェア編集者ルーク・レイモンド（Luke Raymond）は、「スローガンやロゴマニアがしばらくの間、Tシャツ市場を支配していました」と語ります。続けて、「ですが、今ではより考えられたクラシックな美学へとシフトしています。『ボッテガ・ヴェネタ効果』とでも言いましょうか、行き過ぎたものへのバックラッシュ、クラシックファッションの振り子効果などと呼べるかもしれません。何にせよ、白いTシャツは重要な要素であると言えます」
レイモンド氏が語る「ボッテガ・ヴェネタ効果」とは、イタリアのブランドのトップに就任したクリエイティブディレクター、ダニエル・リーによる静かでクラシックなドレッシングを目指す動きのことです。彼がブランドのS/S '19ショー（彼の2回目のコレクション）のフィナーレで姿を現したとき、彼はシンプルな白いTシャツを着て、わずかに大きめにサイズアップし、ミッドウォッシュのデニムジーンズにインしていました。ルメールやダンヒルなどの落ち着いた高級ブランドも同様のアプローチを取り、モックネックの上に白いTシャツをレイヤリングしたり、オーバーサイズのテーラリングの下に着用したりしています。
個性発揮が望める白Tシャツ
レイモンド氏によると、現在のTシャツは「比較的控えめで微妙な改良が施されたものです。厚手の襟ぐり、わずかに大きめのシルエット、ドロップショルダー、長くて幅広い袖、ポケットのディテールなど、小さな変化が特別なものに格上げしています」ということ。続けて彼は、「Gildan（ギルダン）やCarhartt（カーハート）のようなアメリカの作業着ブランドからインスピレーションを得て、ワンランク上に昇華したものです」と説明します。
このようなカジュアルなスタイルは、ボックスシルエットのボトムスによく合います。Dickies（ディッキーズ）のワークパンツ、カーゴパンツ、ワイドレッグのドローストリングスタイルなどを思い浮かべてください。ですが、よりフォーマルな場では、よりフィット感のあるものが好まれるものです。「テーラードスーツのインナーは、新たなドレスシャツといったコンセプトで白Tシャツへとシフトしているのは確かです」と、Raymond氏は言います。「でも、しっかりとタックインして、シャープに着こなす必要があります」とも…。
プレミアムな素材のものはこんなときこそ、その真価を発揮します。イタリア製スーツにふさわしい相棒が必要でありますし、プレミアムな綿素材は形を保ち、白さを長持ちさせることができます。もしシルクやカシミアのブレンドにアップグレードするなら、天国にいるような気分になります。
白いTシャツを白く保つ方法
当然のことですが、最も重要なのは常に白いものを別々に洗うことです。これによって色移りなどを最小限の抑えることができるはずです。最高の結果を得るためには、ストライプ柄のものも別々に洗うようにしてください。それは、ジム着に降格した薄汚れたTシャツであってもです。
また、熱も味方につけましょう。でも、熱すぎないように注意してください。それは縮みの原因にもなります。ですが、品質管理タグに記載されているギリギリ高温のサイクルで洗うことで、より長く白く保つことができるはずです。そして、手遅れになっても心配しないでください。白さは改善することも可能です。
特別な存在となりうる白Tシャツ
持続可能な衣類ケアブランド 『Clothes Doctor』 の創業者であるルル・オコナーは、「洗濯機で洗う前に温かい水とレモンジュースで白い衣服を30分間浸すこと」をおすすめしています。また、「屋外で乾かすことで太陽の光によって衣服を明るくし、シミを取り除くことに役立つでしょう」と彼女は提案しています。
さらに、「汚れや脇下の黄ばみ - 多くの制汗剤に含まれるアルミニウムが原因です - への対処方法として、洗濯前にシミ抜き剤をつかって、ブラシで優しく洗剤が生地に浸透するように処理します。そのとき、Tシャツのネックラインを伸ばしてしまうことがあるため、干す際はハンガーを使わないほうがいいです。デニム好きな方は、お気に入りのセルビッチデニムジーンズのインディゴカラーが、新しい白いTシャツに色移りすることに注意してください。そして最後に、常に平らに折りたたんで保管してください。これには、片づけコンサルタント『コンマリ』こと近藤麻理恵氏も喜ぶはずです」
Tシャツをしわから守るには？
どんなにプレミアムなTシャツでも、シワだらけだとだらしなく見えてしまいます。したがって、定期的に白いTシャツを着用する人にとっては、信頼できるスチーマーが必須のツールと言えるでしょう。着用や洗濯機・乾燥機でできたシワをなめらかにしてくれるので、お店で買ったばかりのような仕上がりにしてくれるはずです。
「信頼できるスチーマー」と言いましたが、それは経験上、「まとも」とは言えないスチーマーにも出合ってきたからです。それに対する安全策としては、以下の3大メーカーもこだわるといいでしょう。それは、フィリップス、スティーマリー、ティファールです。これらの信頼できるブランドであるなら、さまざまな価格帯で信頼性の高い製品をラインアップしています。さらにカラーバリエーションも豊富なので、自分好みのスチーマーも選べますし、インテリアにもマッチするはずです。
