1999年に登場したトヨタの1.0~1.5Lクラスのコンパクトカーと言えば、「ヴィッツ」。海外では「ヤリス」の名前で親しまれていたこのクルマですが、日本国内でも2020年2月10日に発売された4代目からは海外モデルに合わせるカタチで名称を「ヤリス」に統一しています。ちなみに「ヤリス」とは、気品を象徴するギリシャ神話の美の女神 Charis(ヤリス)に由来します。

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 その国内版初代「ヤリス」の登場は、大きな話題を呼びました。その変更の振れ幅は大きく、「ヴィッツ」からの“モデルチェンジ”と言うよりも、“コンセプトチェンジ”と表現しても良いかもしれません。従来の「ヴィッツ」は言ってみれば全方位にバランスの取れたコンパクトカーでしたが、新型「ヤリス」では、より走りに特化したコンパクトカーへと姿を一変したのでした。

 そもそも「ヤリス」には、競技用専用車として開発された「ヤリスWRC」というモデルがあります。現在、参戦している世界ラリー選手権(WRC)での活躍もあり、「ヤリス」の名前は世界ではかなり知られた存在なのです。

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 ところで、市販車をベースにした車両で競われるWRCでは、チューニングできる範囲にも限度が設けられています。つまり、ベース車両からかけ離れ過ぎたチューニングはご法度となるわけです。そこで開発当初から、ある程度のハイスペックを備えた市販車を販売しておき、追加チューニングを施すことでWRCでも戦えるレベルの車両へと仕上げていくという道筋になります。

 そのベースとなるクルマを「ホモロゲーションモデル」と呼ぶのですが、「ヤリスWRC」のホモロゲーションモデルとしてつくり上げられたのがこの「GRヤリス」です。そういった経緯もあり、「GRヤリス」は200kWという最高出力と370Nmの最大トルクを持つターボチャージャー付き3気筒エンジンにAWD(全輪駆動)システムを組み合わせた、シャープなスポーツモデルとなりました。走りの良さにも、当然納得です。

 クルマ製造において進化をなしてきた、“多品種少量生産にも対応できる高性能かつフレキシブルな製造ラインを持つ”というFMS(フレキシブル生産システム)の考え方の最も最たるプロダクツが、この「ヤリス」と言えるでしょう。

 そんな「GRヤリス」の製造工場の様子が、トヨタUK(英国トヨタ)によるYouTube動画で公開されています。豊田章男社長以下、数人のエンジニアが熱く語り掛けるこの動画。「GRヤリス」の車体についてのコメントももちろんですが、その意味合いも含めて興味深い内容となっています。

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Inside Motomachi, the Toyota GR factory
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 動画の中では、2万5000台を生産するために設置された、「GRヤリス」の新生産ラインについて…「生産性を損なうことなく、多品種(マルチタイプ)の少量生産にも対応できる」と語られています。

 ここでは、“マルチタイプ”という言葉が使われていますが、これは「GRスポーツカー専用ライン」が「ヤリス」以外のモデルにもいつか使われることを示唆しています。これは「GRカローラ」の存在が念頭に置かれ、ことがうまく運べば、アメリカ市場で発売される運命にあることのさらなる証拠ともなるでしょう。

 同社はこの見方については、「関心を探っている」と述べています。「GRヤリス」はすでに、リアエンドにカローラのコンポーネントをいくつか搭載しています。さらに、このプロジェクトはBMWやスバルのようなパートナーがいなくても、トヨタがエキサイティングなクルマをつくれることを(部分的であったとしても)示しています。

 そして、トヨタが優位性を発揮できる最大の市場で、自社生産のホットハッチバックを販売することは理にかなっているように思えます。

 「GRヤリス」の生産工程は、標準的なハッチバックから大幅に変更されました。そこでは軽量素材の多用、より広いボディ構造、より多くの構造用接着剤、コンパクトカーの剛性を高めるための数百に及ぶスポット溶接などが行われています。

 トヨタが掲げる目標は、工場から出荷された段階ですぐにレースに参戦できるほどに強くて頑丈なクルマをつくることでした。だからこそ「GRヤリス」には、専門家による手作業の工程が多いのです。その結果、「レーシングカー品質の市販車ラインが完成しました」とトヨタは話します。

 果たして、その生産ラインから「ヤリス」以外のクルマは誕生するのか? できるとすればそれは何なのか? 今後の動向から目が離せそうにありません。

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豊田章男 ヤリスを語る
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From Road & Track 
Translation / Esquire JP 
※この翻訳は抄訳です。