2018年の時点で、アメリカではコンパクトバンを販売するブランドは5つ存在していました。シボレー、フォード、メルセデス、日産、そしてラムです。すでにシボレーとメルセデス、そして日産は撤退を表明しており、間もなくフォードは「トランジット・コネクト」を、ラムは「プロマスターシティ」を2023年までに生産を終了することを発表しています。つまりアメリカ市場において、コンパクトバンは1台も新たな車両として登場することはないということになるのです。

「フォードが、メキシコで生産予定だった『トランジット・コネクト』の新たな生産計画を破棄した」と、アメリカのカーメディア「AUTOMOTIVE NEWS(オートモーティブニュース)」が伝えています。そしてフォードの広報担当者は、アメリカのカーメディア「CAR AND DRIVER(カー・アンド・ドライバー)」の取材に対して詳しいコメントを差し控えていました。ですが、伝えられるところによると、「スペインで生産されている現行モデルは2023年にアメリカ市場から撤退し、その後継車の開発は今のところ予定されていない」とのことです。

一方のラムには、ヨーロッパで製造されているコンパクトバン「プロマスターシティ」があります。これはフィアット「ドブロ」をベースとしたモデルですが、その「プロマスターシティ」のアメリカへの輸入を2022年中に停止することを、ラムの広報担当者が「CAR AND DRIVER」の取材に対して明らかにしています。

コンパクトバンに対するフォードとラムこの動きですが、これは…「メルセデスが2023年モデル以降コンパクトバンの『メトリ』をアメリカでのラインナップから外す」という決定に続くものとなります。日産は2021年モデル以降「NV200」を廃止し、このセグメントからいち早く撤退しています。シボレーに関しては、「シティエクスプレス」を販売していたのは2015年から2018年までであり、わずか3年間に過ぎませんでした。

EV化による新たな可能性も

 
メルセデスの「メトリ」。2023年モデル以降のアメリカ市場への廃止が決まっています。

そもそもアメリカにおけるコンパクトバンの流行は、2010年にフォードがヨーロッパで販売していた「トランジット・コネクト・カーゴバン」をアメリカ国内に持ち込んだことから火がつきました。当時のフォードの狙いとしては、中小企業の経営者や都市部を回る配送業者に向けて、巨大なトラックベースのバンに代わる、より安価で機動性があり、燃費の良いバンを提供することがその目的だったのです。

フォードは「トランジット・コネクト」に後部座席と窓を付けた乗用タイプも発表し、日産は2013年モデルから「NV200」を投入してカーゴバンとして販売していました。ラムは2015年から「プロマスターシティ」の販売を開始し、メルセデスは2016年に「メトリス」を導入していたのです。

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NISSAN
日産「NV200」。

それではなぜ、今になってこれらの自動車メーカーが現行のコンパクトバンに見切りをつけるような動きを見せているのでしょうか?

もちろん一つには、ここ数年の販売台数の減少が挙げられます。「トランジット・コネクト」は2019年にアメリカ国内で4万1598台を販売しましたが、2021年には2万6112台とほぼ半減しているのです。フルサイズの「トランジット」は、2019年と2020年に13万台以上を販売していることを考えると、「トランジット・コネクト」の販売台数は決して満足できるものではないでしょう。

ラムも、フォードのケースと同様です。大型の「プロマスター」は小型版の「プロマスターシティ」に比べて約5倍もの販売台数を誇っているのです。

フォード「イー・トランジット」
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The 2022 Ford E-Transit: A New Dawn Rises | E-Transit | Ford
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また、商用バンの分野でも電動化が緩やかに進んでいることも、その一因に挙げられます。新型プラットフォームやバッテリーパックの開発には、大きな投資が必要不可欠です。フォードは既にピュアEVのバン「イー・トランジット(e-Transit)」の販売を開始しており、GMは「ブライトドロップ」という新部門を設立し、商業顧客向けに電気貨物バンを販売する計画を明らかにしています。メルセデスもフルサイズバン「スプリンター」のEV版に当たる「イー・スプリンター(eSprinter)」を発表し、2023年に生産開始する予定となっているというわけです。

メルセデス「イー・スプリンター」
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Mercedes-Benz eSprinter 2019: A First Glance
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もちろん、電気自動車プラットフォームの拡張性によって近い将来、コンパクトバンが復活を遂げる可能性も否定できません。実際、自動車のスタートアップ企業であるカヌー(Canoo)は、すでに小型EVバンのアイデアを発表しています。その実現性こそ不透明かもしれませんが、アメリカのコンパクトバン愛好家だけでなく、世界中の愛好家も含めて、まだこのカテゴリーに対して希望を失うのは時期尚早と言えるかもしれません。

カヌーが2022年7月に公開したデリバリービークルの動画
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DELIVERY VEHICLE | ELECTRIC VEHICLES | CANOO
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Source / Road & Track
※この翻訳は抄訳です