内燃機関を搭載し、アメリカ車らしい大型で豪快な印象の貨物車&フルサイズ乗用バンの最後の砦とも呼ぶべきシボレー「 エクスプレス」とその兄弟車のGMC「サバナ」。GM(ゼネラルモーターズ)が誇るこの2モデルが、2025年モデルを最後に生産中止となることが明らかになりました。2026年以降は、「バッテリー仕様のEV(電気自動車)バンが取って代わることになる」とアナリスト筋が明かしています。

シボレー「エクスプレス」とGMC「サバナ」の後継車には、GM製EV専用の「スケートボード」シャシーとGM謹製のモジュラー型バッテリーパック「アルティウム」を基本とした構造が用いられる見込みです。

デザインについては、GMが新たに立ち上げた商用EVブランド「ブライトドロップ(BrightDrop)」のフルEVバン「Zevo 600」と似たものとなりそうですが、「かなりの小型化がされるのではない?」とも噂されています。

▼FedEXに150台納車された、ブライトドロップの「Zevo 600」▼

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エコフレンドリーな「Zevo 600」が存在感を増す

ブライトドロップの「Zevo 600」とは、600立方フィート(約17立方メートル)を超える 荷室容量を誇るフルEVバンです。一方、現行の「 エクスプレス」および「サバナ」はロングホイールベースのモデルでさえ、284.4立方フィート(約8立方メートル)の荷室容量に過ぎません。

すでにブライトドロップは150台の「Zevo 600」を配送用カーゴとして、配送会社のフェデックス(FedEx)に納車しています。華々しいEVビジネスの世界にあって地味な印象が拭えない商用車のカテゴリーかもしれませんが、脱炭素化を推し進めるという点では、極めて大きな可能性のある分野です。フェデックスは2040年までに、2500台のブライトドロップ製のEVバンを導入することで、完全電動化を実現する計画です。

旧型となって久しい「エクスプレス」と「サバナ」ですが、いまやフォードの商用カーゴ「トランジット」やクライスラーの「ダッジ ラム」といったヨーロピアンスタイルの大型バンに押され気味であることは否めません。

「エクスプレス」と「サバナ」の2台の新型モデルが投入されたのは、1997年のことでした。2003年には大きなアップデートがされたものの、基本的には1971年当時の設計がまだそのまま採用され続けているのです。25年も昔のデザインから一足飛びにEVへと移行するという戦略は、賢明な一手となるかもしれません。

 
FORD
フォードの電気バン「Eトランジット」は3種類のルーフの高さと、3種類のボディの長さをはじめ、8種類のラインナップで提供されます。

EVバンの競争激化。フォードは「Eトランジット」、ダッジ ラムも新型を投入予定か!?

フォード「Eトランジット」は、容積の異なる3種類のモデルで246.7~542.2立方フィート(約7~15立方メートル)という荷室容量です(※車両本体とは別に大型のキューブ型荷室を搭載すべく設計されたシャシーのバンは、ここでは含みません)。

ブライトドロップ「Zevo 600」の航続距離は250マイル(約402キロ)で、フォード「Eトランジット」の最高航続距離126マイル(約208キロ)のおおよそ2倍。「Zevo 600」を120キロワットの急速充電器につなげば、1時間足らずで170マイル(約274キロ)分の充電が可能です。

フォードはすでに、2022年型「Eトランジット」の納品をスタートしています。が、商用目的の場合は、1日あたり平均74マイル(約119キロ)の走行距離を想定しています。また、2023年モデルとしてカーゴバンとカッタウェイシャシーの受注はすでに開始されています。

シボレー「エクスプレス」およびGMC「サバナ」の代替モデルとしても、2026年の投入が予定されている「BV1」が軌道に乗れば、GMのアルティウムバッテリープラットフォームの生産量が飛躍的に高まることになるでしょう。

しかし、ライバルのフォードもただ指をくわえて見ている訳ではありません。高性能バッテリーを搭載した新型「Eトランジット」を2027年に投入すると言われています。ステランティス傘下にあるダッジ ラムもまた、2024年のモデルイヤーには現行版「アイスランダー」をベースとした「プロマスターEV」を発表するとの噂がささやかれています。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です