この記事をざっくり説明すると…

  • カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、2035年から州内でのガソリン車の新車販売を禁止する行政命令に署名しました。
  • 中古市場においては、ガソリン車の販売は継続されることになります。
  • カリフォルニア州は、1970年代から排出ガス規制で全米をリードしてきました。今回の命令は、それをさらに後押しするものだと言えるでしょう。

 クルマが欠かせない都市ロサンゼルスなどの大都市圏を抱えるカリフォルニア州は、全米における新車販売の10%以上を占める最大の自動車市場となっています。よって、以前から自動車の排ガスによる大気汚染に悩まされてきた同州は、1966年に大気汚染に関する州独自の環境規制を全米に先駆けて導入しています。連邦政府は、それから遅れること4年…1970年に、改正された大気浄化法(Clean Air Act)を導入しました。

 この大気汚染防止のための法律は、酸性雨対策やオゾン層の保護を目的とし、自動車による排出ガスの削減や二酸化硫黄排出量の削減を目指していました。そして連邦政府よりも厳格な規制をすでに導入していたカリフォルニア州に関して、「政府による排出規制の適用から除外されることも原則として認める」とする条項が、この法律には盛り込まれていました。 

 このようにカリフォルニア州は、排出基準で長い間全米をリードし、独自の排出基準を設けてきました。そして現在、ギャビン・ニューサム州知事は、その流れをさらに推し進めようとしています。

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Paul Harris//Getty Images
特にロサンゼルスは慢性的な渋滞に悩まされています。

 2020年9月23日(現地時間)にニューサム知事は、「2035年までに、州内で新規に販売される全ての乗用車をゼロ・エミッション・ビークル(無排出ガス車)にしなければならない」という執行命令に署名。カリフォルニア州大気資源委員会(CARB:California Air Resources Board)に対して、そのための具体的な規制づくりを行うよう指示を出しました。つまり、2035年以降カリフォルニア州内で、新車として購入できるのは電気自動車(EV)のみとなるわけです。

 ライブ配信された今回の発表でニューサム知事は、フォードの最新EV「マスタング マッハE」のボンネットの上でこの命令に署名しました。

 対象となるのは、車両重量3.5トン未満のクルマとなり、ピックアップトラックやSUV、ミニバンなども含まれます。商用車にはわずかな猶予期間が設けられており、ゼロ・エミッションの中型車・大型車のみを新たに販売することで、実現可能な場合は2045年までとスケジュールが引かれています。

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フォードの電気自動車「マスタング マッハE」。EV市場のさらなる活発化も予想されます。

 「本項の実施に当たり、カリフォルニア州大気資源委員会は技術的実現可能性と費用対効果を考慮して、一貫して行動しなければなりません」と、命令の中で知事は述べています。

 この言葉を噛み砕いて述べれば、もしEVのコストがガソリン車のレベルにまで下がらなかった場合への、柔軟性ある対応の余地が残されている…とも考えられます。しかしながら今後の15年間で、EVに関する技術費用のローコスト化は進み、クルマ自体の航続距離も伸びる可能性は極めて高いでしょう。

 カリフォルニア州議会の下院は2018年8月の段階で、「2045年までに州内の電力の100%を温室効果ガスが排出しないエネルギーでまかなう」とする法案、「SB100」を可決しています。つまり、今回の2035年までにガソリン車を禁止する命令は、排出量を削減するというカリフォルニア州の目標と一致しているのです。

 現在カリフォルニア州は、州独自に温室効果ガスの排出基準を規制する権限をめぐり、その権限の撤廃を求めるトランプ政権との間で裁判所で争っています。「2035年までに、ガソリン車の新車販売を禁止する」という今回のニュースは、排出ガス問題をめぐる同州とトランプ政権の間の溝を、さらに広げることとなるのは必至でしょう。

Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Esquire JP
※この翻訳は抄訳です。