2020年にブランド史上初のミッドシップモデル搭載で登場した、シボレー「コルベット」。今では、アメ車を代表する2シーターの名スポーツカーとして世界的に知られていますが、その伝統が一瞬揺らいだ時期もあったそうです。そのことをアメリカのカーメディア「Road &Track」が、以下のように伝えています。


 60年近くにわたってアメリカの自動車専門メディア各誌は、ある確信を抱き続けていました。それは1954年に登場し、1963年に2代目となる「コルベット スティングレー」…いわゆる「C2」がデビューした当時のこと。このシボレーブランドを抱えるGM(ゼネラルモーターズ)に対し、「2年もしないうちに、この『コルベット』をミッドシップ化するだろう」というものでした。そう思い続けて、もう半世紀以上の時が流れたというわけです。

 そうして2020年を迎えるまで、GMがミッドシップ化した「コルベット」を発表することはないまま時は流れます。やがて2020年9月となり、ようやくGMはミッドシップの新型シボレー「コルベット」を発表。日本国内のデリバリーに関しては、2021年5月からとも告げられました。

 そんな経緯の中でGMはこのたび、新たな事実があったことを公式「GMデザイン」のインスタグラム上で発表しました。それが下の投稿です…。そのキャプションには、「フォードの『サンダーバード』の人気に対抗して、GMは1962年にこの4人乗り『コルベット』グラスファイバーモデルを設計しました。ですが、車両は製造されませんでした」と記載されています。

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4シーターの「コルベット」?

 冒頭に掲載されている写真も、上の公式「GMデザイン」のインスタグラムで公開された画像の一枚です。そこに写っているのは、1962年にモデル化された4人乗りのシボレー「コルベットC2」になります。

 確認してわかるように、後部座席は搭載されたフォーシーターとなっています。2シーターのイメージが強い「コルベット」だけに、少し奇妙にも思えるかもしれません。

rallye des princesses richard mille 2019
Richard Bord//Getty Images
コチラが2シーターで実際に発売された、シボレー「コルベットC2」。

 とは言え、最終的に発売されたシボレー「コルベットC2」は、本格的なスポーツカーとしての性能を重視した適正価格の2シーターとして、当時絶大なる人気を得ていました。その人気にあやかって、GMは「コルベット」の4シータータイプを発売するということもなく、2シーターに徹してきたというわけです。

 それでも、こうしたコンセプトカーが存在していたという事実を知るに、GMも当時の市場を冷静に分析していたことが再確認できます。上の投稿写真のキャプションにもあるように、フォード「サンダーバード」が1958年に第2世代として4シーターを発表し、ターゲットをファミリーへと移したことで大成功したという当時の現状を鑑みながら、グランドツーリングとしての「コルベット」の行く末を模索していたことがうかがわれます。

とは言え、結局は製品化には至りませんでした

 「コルベット」の情報をまとめたサイト「コルベットブロガー」によると、この4シーターが実際に生産に至らなかったのは「シートのデザインに問題があったためだ」とのこと。このクルマの後部にGMの役員が乗り込んだところ、ロックされていたフロントシートに挟まれてしまったのだとか…。そうして、ここに写っている4シーターの「コルベットC2」は、その数年後に破壊されたと推測されています。

 見た目としても微妙な感じが否めないこの4人乗りの「C2」コンセプトカーが失敗に終わったこともあり、GMは「コルベット」を2シーターでスポーツ性重視の方向で歩み続けることになったというわけです。

 やがて、GMが1960年代にシボレー「コルベット」のライバルとして注視していきたフォード「サンダーバード」は、歴史の表舞台から徐々に消え去っていきます。1997年には、(一見しただけではそれが「サンダーバード」の血統を受け継ぐモデルとは認識できないほどに)巨大なクーペへと生まれ変わってしまいました。

 そして2002年には、11代目「サンダーバード」として2シーターのコンバーチブル(取り外し可能なハードトップも設定)を発売。 発売当初は供給が追いつかないほどの人気を得ますがその人気は長続きせず、2005年には生産終了。そのまま後継車も発表することもなく、延べ50年にわたる「サンダーバード」の歴史に幕を下ろすことになっています…。

 そうしたライバルの動向を加味してのことでしょう。 シボレー「コルベット」のほうは、その2シーターの後ろに新たなシートを加えることなどせず、さらなる高速性を求めて本格的スポーツカーの道を歩み続けてきたというわけです。どちらが勝者かと言えば、明らかに現存する「コルベット」のほうと言えるでしょう。

 とは言え、自動車専門メディア各誌の予想からはるかに遅れた2020年でのミッドシップ化の実施。さらには前述の、2021年7月に過去に4シーター計画が存在していたことを告白するSNSでの公開…。例えその計画がすぐに撤回されたと但し書きが添えられていたとしても、GMのシボレーはつい最近まで、「コルベットを4シーター化するべきか?」の迷いを抱き続けていたとも捉えることもできます。そして、「その迷いがようやく定まったのが2021年7月」と思えてならないのは、エスクァイア日本版だけでしょうか?

general motors unveils its new corvette in california
Kevork Djansezian//Getty Images
2020年モデルの「コルベット」。エンジンの搭載位置はフロントから、ミッドシップへと変更されています。

 生粋のアメリカンスポーツカーファンとっては、ミッドシップの「コルベット」発売に続いて、過去の迷いを打ち明けるかのようなSNSでの投稿に歓喜していることでしょう。そして、「コルベット」のさらなる進化を期待して止まないことでしょう。

 そしてその先には、EV化の「コルベットC7」をベースとした「Genovation GXE」の登場も控えています。最大出力800馬力、最大トルク973Nmを発揮する電動パワーユニットを搭載したEVスーパーカーで、2019年には電気自動車として当時世界最速となる時速338.3キロを達成しています。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Genovation GXE Breaks World Speed Record
Genovation GXE Breaks World Speed Record thumnail
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Source / Road & Track
この翻訳は抄訳です。