世界初となる量産型の電気自動車(EV)として、日産「リーフ」の生産が2010年に開始されてから2021年で11年目を迎えます。これまで多くの自動車メーカーがそれぞれのEVやプラグインハイブリッド車(PHV)を発売し、トヨタ「プリウス」のように自己充電可能なハイブリッド車も今ではごく普通に見かけるようになりました。

 EVに全精力を注いでいる大手自動車メーカー(テスラを除いて)はまだ、かなりの少数派かもしれません。ですが、排出基準の厳格化や世間のEVへの関心の高まりなどから、状況は少しずつ変わりつつあるようです。このところEVやPHVのリリースが休むことなく続いていますが、それに伴って排出量削減目標の前倒しに関するニュースが相次いでいます。

 そういった状況が、ガソリン車から電動自動車への現実的な転換期の始まりとなるのでしょうか? はたまた、単なる未来志向の投資家層に対しての、アピール材料に過ぎないのでしょうか? それを判断するには、この先の経過を注意深く見守る必要がありそうです。そこで、今後の各自動車メーカーの電気自動車に対するスケジュールをここで俯瞰して眺めてみましょう。

 本題に入る前に、注意点を1つ頭に入れておきましょう。自動車メーカーが電動自動車について話題にする際、その中にはEV(バッテリーからの電力でモーターを駆動させる)や、HV(エンジンとモーターの2つの動力を組み合わせて走る)、PHV(外部電源からも充電ができるHV)が含まれます。また場合によっては、水素燃料電池車(FCV)も含まれています。

 そして、一車種に複数のバージョンが存在する場合(例えばプリウスには、EVもPHVも存在します)、メーカーはそれぞれのバージョンに異なる目標を設定している場合があるという点にご注意ください。

2021年

  
CHEVROLET
2022年型シボレー「ボルトEUV」と、改良型の「ボルトEV」。

 GMは2021年2月14日、米国で販売される2022年型シボレー「ボルトEUV」と、改良型の「ボルトEV」を発表しました。また、GMC「ハマーEV」の生産はミシガン州デトロイトのEV専用工場「ファクトリーゼロ」で、2021年の秋に開始される予定とのことです。

 BMW(ビー・エム・ダブリューは、「BMW i」第2世代のフラッグシップとなるミッドサイズSUV「iX」に続いて、4ドアクーペ「i4」の投入をすでに発表済み。これはBMWは初の完全電気駆動セダンになります。その「i4」の欧州仕様のスペックが、2021年6月2日に発表されました。注目すべきは、BMW i初となる「M」パフォーマンスモデルの投入です。EV初の高性能なMモデルとして、「M50」のグレードを欧州で設定するということです。英国市場では2021年11月発売の予定で、英国での価格は5万1905ポンド(2021年6月30日現在の為替相場で、およそ795万2000円)~ということ。トラディショナルなミドルサイズセグメントの中核を担うモデルとなるでしょう。肝心の日本市場への導入時期は、現時点で発表されていません。

 Stellantisステランティス/編集注:フランスのグループPSAとイタリアのFCA〈フィアット・クライスラー・オートモービルズ>が合併し、ステランティスとなった)は、各ブランドから計10種類のHVおよびEVを2021年内にも発売する予定です。

 Jaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)は、水素燃料電池のプロトタイプを予定しており、そのテストを年内もしくは2022年早々にも開始する予定となっています。

2022年

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MERCEDES-BENZ
新型メルセデスEQモデル「EQS」。

 Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、2022年の間に「the 2022 EQS」を含む10車種の新型EVをEQブランドから投入する計画です。

 またFORD(フォード)は、アメリカ国内で売上好調な「F-150」のEVバージョン「the F-150 Lightning」の生産を、2022年春頃までに開始する予定と発表しています。

2023年

 
HONDA
2020年北京モーターショーにホンダが出展したSUV「e:concept」。

 GMとの提携によって開発されるホンダのEVは、クロスオーバーモデルになる見通しであると報じられ、生産開始が待たれています。

 マツダは2023年に少なくとも2種類のPHVを発表する計画で、日産は2023年に8車種のEVの発表を予定です。HVやEVなど、年間100万台を目標とした世界展開を考えています。

2024年

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Land Rover

 GMとの共同開発により、ACURA(アキュラ)のEV が生産開始予定。ランドローバーは、自社初となる完全電動のEVの発表も予定されています。

 VOLVO(ボルボ)は、「XC60」の後継モデルはEVになる見込みとしています。スウェーデンのバッテリーメーカー「Northvolt(ノースボルト)」との共同出資によるベンチャーで開発中のテクノロジーが実用化される、初のケースとなる見込みです。

2025年

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ULI_SONNTAG/VW
2021年型フォルクスワーゲン「ID4」。

 AUDI(アウディ)は2025年までに、30車種の電動自動車の投入を計画。その中の20車種はEVとなる予定です。BMWは、「2025年度の内にHVとEVの販売台数が売上全体の15~25%を占めるようになるだろう」という見通しを2017年に公表しています。

 フォードは2025年までに290億ドル(約3兆2700億円)をEV事業に投資すると発表しています。GMは2025年までに30車種のEVを市場に投入する(20車種は北米で展開)計画を立てており、そのために270億ドル(約2兆9860億円)の予算を投じるとしています。

 ジャガーは全車種の完全電動化を見据えており、ランドローバーは年内に6台のEVを導入することと公表しています。

 トヨタは2025年末までに、HV、EV、燃料電池車(FCV)など60車種を新たに投入し、年間販売台数550万台を目標にするとしています。

 Volkswagen(フォルクスワーゲン)は2025年末までに、EV生産台数を150万台に到達させる計画を立てています。

 ボルボはこの年内に、100万台のハイブリッド車およびEVを販売したいとしており、全販売台数の50%がEVになるだろうという予測を立てています。

2026年

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KIA

 マツダは次世代型EVのプラットフォームを、2026年内に発表する予定です。ジャガー・ランドローバーは、パワートレインからディーゼルエンジンを完全に排除する計画です。

 そして韓国の自動車メーカー起亜(キーア)は、2026年内に11台のEVの生産を発表しています。 

2030年

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SOPA IMAGES//Getty Images

 2030年までにイギリスでは、ディーゼル車とガソリン自動車の販売を禁止する見込みです。

 マツダは2030年内にすべての車種に、HVまたはEVのモデルを開発する計画を立てています。三菱自動車は全販売台数の50%をHVおよびEVとする計画です。そしてスバルは、全販売台数の40%をHVおよびEVとする計画です。

 フォルクスワーゲンは欧州市場における販売台数の60%を、HVおよびEVとすることを目標にしています。

2033年

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AUDI

 アウディは2033年までに内燃機関(ICE)車の生産を中止し、全ラインナップをEVに移行すると宣言しています。ただし、最後の内燃機関である「ICEモデル」の需要が見込まれる中国市場においては、現地生産で行う可能性を残しています。

 フォルクスワーゲンは2033年から2035年の間に、ヨーロッパでの内燃エンジン車の販売を停止する予定です。取締役クラウス・ゼルマー氏は、「やや遅れる」と表現とともに米国と中国での販売を続けることを公表しています。そして南米とアフリカでは、最後の内燃機関搭載のICE車を「かなり長く」という形容と共に「市場に出すであろう」とロイター通信に語っています。

2035年

 
GMC
GMC「ハマーEV」。

 GMはこの年、小型車のラインナップからディーゼル車とガソリン車を完全に排除することを目標に揚げています。またスバルは、全車種にHVおよびEVのモデルを加える予定となっています。

2036年

 
JAGUAR
ジャガー「I-PACE」。

 ジャガー・ランドローバーは、2036年のCO2排出ゼロを目標にしています。

2040年

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STEVE FECHT,STEVE FECHT,STEVE FECHT

 GMは、2040年のCO2排出ゼロを達成目標にしています。

2050年

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NISSAN

 マツダ、三菱自動車、日産が、CO2排出ゼロを達成する計画です。

Source / CAR AND DRIVER
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。