光に包まれ、そこに溶け込んでいったようだ..。

 美しい光の情景...沢口靖子さんが、光に抱かれ…さらに輝きを放った。イスにもたれる写真は、「光」「表情」「構図」がひとつの直線となってつながった瞬間だった。

 その一瞬を、永遠に封じ込めた。そして今回の撮影でも、大女優としての貫禄、演技力を余すことなく見せていただいた。

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Tomio Takahashi
朝ドラで国民のヒロインに..

 日本人の多くが、初々しい熱の入った沢口さんの演技に釘づけとなった...1985年のNHK朝ドラ『澪つくし』。やがて回を重ねて、国民的なヒロインになっていったのだ。
このときの最高視聴率は55.3%、平均が44.3%と、今では考えられない驚異の数字だ。

 この物語に多くの国民が、テレビにのめり込んでいったかがうかがえる。あまりにも夢中になり過ぎ、全国の水道のメーターが、この時間帯だけ上がるという現象もうなずける。つまり洗い物をそのままにし、栓を閉め忘れたという推察だ。

 沢口さんは、東宝が主催した第1回「東宝シンデレラ」という企画で、3万1653人の中から、たった一人選ばれた“金の卵”的存在。この中からの一人というのは、私には何か天文学的な数字にも見えてしまう。

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Tomio Takahashi
横からのヘアースタイルもまた、本当に素晴らしい。

 朝ドラの『澪つくし』の話に戻るが、俳優になりたての頃、主演のこの話が急に舞い降りた。しかし当のご本人は、その朝ドラの影響力を、当時まったく認識していなかったという...。

 脚本はヒットメーカーであったジェームス三木さんで、川野太郎さんが演じる漁師の網元の息子と、沢口さん演じる醤油醸造家の娘の恋の物語。津川雅彦さん、加賀まりこさん、草笛光子さんとそうそうたる大御所の名が連なり、まるで銀幕映画スターの様相だ。

 ということで、日々プレッシャーに押しつぶされそうになっていたのは、誰の目で見ても計り知れる…。そして過密スケジュールの中で、撮影が日々続けられていたのだ。このときはなんと電車で、しかも満員電車にも押されての通勤だったというから驚きだ。

 唯一の楽しみは、NHKの食堂で津川さんの号令でご飯を食べに行っていたこととのこと。しかしこのドラマのお陰で、「女優」としてのを地位を築く事ができたわけである。

 「俳優としての私の原点となった作品だと、今でも思っています」と、昔を懐かしく振り返る沢口さん。

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Tomio Takahashi
光のレースに包まれ…ポーズも表情も見事に決まった。
迫真の演技で輝きを放つ

 映画としてのデビューは、『刑事物語3 潮騒の詩』。その後、日本映画界の金字塔といわれた1984年の「ゴジラ」があり、日本アカデミー賞』新人俳優賞を手にすることになる。他の映画作品は、かぐや姫を題材にした『竹取物語』、沖縄の太平洋戦争の悲劇を描いた感動作『ひめゆりの塔』がある。

 どれもその役になりきり、迫真の演技が「キラリ」と光る。その他にも主演はドラマや映画で、ここ書き込めないほど…興味のある方はぜひ調べて、観ていただききたい。舞台やCMでも注目を浴びており、これらの活動が認められ、2015年に第23回橋田賞も受賞している。

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Tomio Takahashi
時折見せる...あどけない表情の一瞬を捉えた。
最新映画『科捜研の女 -劇場版-』の
ラストは衝撃的

 最近のドラマで人気を獲得したのが、1999年10月スタートした「科捜研の女」シリーズ。20年以上にわたり沢口さんが演じるのは、主人公である京都府警科学捜査研究所(=科捜研)の法医担当「榊 マリコ」(「榊」は、正しくは木偏に神)。この人気のテレビドラマがついに映画化されたのだ。もともとこのドラマは、何度か映画の話はあがっていたそうだが、20シーズンの節目になり実現化された。

 今回は世界を取り巻く事件に、科捜研の「マリコ」がその難題をどう解き明かすのか…。多くの科学者が謎の転落死、そこに鋭い「マリコ」の洞察力が輝く...設定は秋の京都。「紅葉の情景」という、もう一つの美しい映像美を取り入れたことで、映画の芸術性が伝わってきた。

 カメラワークも監督やスタッフの腕が感じられる。もちろん沢口さんの滑舌の良い名演技も注目だ。終盤のストーリー展開も見事で、マリコの○○○行動は、紅葉の美しい情景と絡んで、最大の見せ場と言ってよいだろう。思わず「えっ...なんで?!」目を見張る驚きがあり、ぜひこの部分をお見逃しなく。

 2021年9月3日(金)からの公開に期待して欲しい。これは大きなスクリーンで、楽しむための映画だ。尚今回の撮影に関して、東宝芸能の土田さん、そして沢口さんの寛大なるご協力に、改めて御礼申し上げます。

映画『科捜研の女 -劇場版-』公式サイト

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    Tomio Takahashi
    華やかな赤いバラがお似合いの沢口さん...今回の映画とリンクして、ちょっとミステリアスに…。

    公式プロフィール


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    写真家,カメラマン,高橋福生
    Tomio Takahashi

    写真・文/高橋福生(たかはし・とみお)

    撮影スタジオ勤務中の23才のとき、カメラ誌に載ったグラビアが、報道写真界の草分け三木 淳氏に高く評価される。それが転期となり、写真家を志すためにフリーとなる。メーカ-フォトサロンをはじめ、数多くの写真展を開催。雑誌や広告などでも活躍中。「癒しの水の情景」「美しい光の情景」をテーマに、水と光の情景写真家として媒体などで作品を発表。テレビ朝日系『人生の楽園』に出演し、癒しの水風景「水園」の作品が紹介される。これらの「水園」シリーズは東京都写真美術館でも展示された。現在もライフワークとも言うべきプロジェクト、著名アーティストを光で演出した情景「未来に残したい光のアーティスト」を継続している注目のフォトグラファー。現在、高橋作品を使用した「癒しの水の情景」のデジウォールを「壁紙のトキワ」で販売中。

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