ローレル・キャニオンのミュージシャンたちを語るとき、外すことのできないスポットと言えば、そう「サンセット・ストリップ」です。

ローレル・キャニオン通りの坂を下り、サンセット通りとの交差点を右折すると、1960年代中頃からザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ドアーズなどを中心に盛り上がったL.A.ロックンロール狂騒の中心地に到着します。当時のクラブやレストラン、バーなどいくつかの施設は営業を続けており、現在でもサンセット・ストリップ散策のハイライトとなっています。

1920年代にはポインセチアとアボカドに囲まれた農地と牧場だった現在のサンセット・ストリップ界隈ですが、わずか数年後にはL.A.を代表する歓楽街となったのにはワケがあります。ウエストハリウッドと呼ばれるこのエリアは、当時ロサンゼルス境界線の外側にあり、ロサンゼルス警察の管轄外とされていました。事実上の法執行機関がなかったことはギャングたちにとって、カジノやナイトクラブ、バーなどをオープンしやすい一因になったと考えられています。

そして1933年に禁酒法が廃止されると、サンセット・ストリップは一気ににぎわいを増していきます。1940年にナイトクラブ「チローズ(Ciro’s)」がオープンすると、ハンフリー・ボガート、フランク・シナトラ、マリリン・モンローなど多くの俳優や歌手が出入りし、サンセット・ストリップは当時のハリウッド・セレブたちの社交場としてにぎわいました。

ウィスキー・ア・ゴー・ゴー

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Hidehiko Kuwata
今回の連載でも度々登場した、「ウィスキー・ア・ゴー・ゴー」。サンセット通り8901番地に1964年にオープンしました。

1940〜50年代を通じて、ハリウッド映画界の著名人たちのたまり場となったサンセット・ストリップですが、1960年代に入ると彼らは社交場をビバリーヒルズに移します。そこに流れ込んできたのが、ザ・バーズやドアーズ、フランク・ザッパなどのローレル・キャニオン一派など、多くのL.A.のロック・ミュージシャンたちです。彼らがホームグラウンドとしたのが、1964年オープンの「ウィスキー・ア・ゴー・ゴー」。このクラブは、ゴーゴーダンスを始めたクラブとしても有名になりました。

60年代終盤にはクリーム、レッド・ツェッペリンなどイギリス勢のL.A.デビューの場所となり、70年代のパンクムーブメントを経て、80年代にはガンズ・アンド・ローゼズなどのハードロック、メタル系バンドのメッカとなりました。

Whisky a go go
住所/8901 W. Sunset Blvd, West Hollywood, CA 90069
公式サイト

メルズ・ドライブイン

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Hidehiko Kuwata
サンセット通り8585番地にあった旧「ベン・フランクス・コーヒーショップ。現在は、「メルズ・ドライブイン」というカフェ&ダイナーとなっています。

ウィスキー・ア・ゴー・ゴーからサンセット通りを10分ほど西へ歩くと、「メルズ・ドライブイン」の印象的な看板と建物が現れます。ここは、1962年にオープンした「ベン・フランクス」というコーヒーショップだった場所で、当時のユニークなデザインの建物が残されています。

60〜70年代にかけてライブ後のミュージシャンたちの溜まり場として有名で、「バッファロー・スプリングフィールドはこの駐車場で結成された」と伝えられています。ローレル・キャニオンのミュージシャンたちも午前2時にクラブが閉まるとこの店に入り浸り、朝方まで盛り上がっていた姿がよく見かけられていました。現在はカリフォルニアに8店舗を展開する、チェーン系カフェ&ダイナーとなっています。

Mels drive-in
住所/8585 Sunset Blvd, West Hollywood, CA 90069
公式サイト

ロキシーシアター

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Hidehiko Kuwata
1973年9月にサンセット通り9009番地にオープンした、「ロキシーシアター」。

1960年代後半から70年代初頭にかけて、L.A.でのシンガーソングライターの登竜門としてのクラブ「トルバドゥール」は絶対的な存在でした。音楽プロデューサーのデヴィッド・ゲフィンは新たに契約したデヴィッド・ブルーというシンガーソングライターのトルバドゥール出演を、クラブオーナーであるダグ・ウェストンに依頼します。ですが、ダグはこの依頼をあっさりと断ってしまいます。

以前からダグが要求する、「有名になってもトルバドゥールに出演する」という契約内容について不満を持っていたゲフィンは激怒しました。そしてトルバドゥールに出演しているアーティストたちをごっそり奪い取ることも考えて、音楽プロデューサーのルー・アドラーらと共に1973年9月、サンセット・ストリップに洗練されたクラブ「ロキシーシアター」をオープンします。こけら落としにはニール・ヤングが出演し、その後もブルース・スプリングスティーンやボブ・マーリー、ジョージ・ベンソンなどが出演し、それらステージはライブレコーディング…アルバム「Live At The Roxy」シリーズとしてリリースされました。まさに、70年代に全盛期を迎えたL.A.ミュージックシーンを象徴するクラブなのです。

The ROXY THEATER
住所/9009 Sunset Blvd, West Hollywood, CA 90069
公式サイト

レインボー・バー&グリル

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Hidehiko Kuwata
1972年4月にサンセット通り9015番地にオープンした「レインボー・バー&グリル」。

オープニングイベントは「エルトン・ジョンのパーティ」、というにぎやかな話題でドアオープンを飾った「レインボー・バー&グリル」。以来、この店はロックスターたちの社交場として、またグルーピーたちの溜まり場として有名になりました。ジョン・レノン、レッド・ツェッペリン、アリス・クーパー、ガンズ・アンド・ローゼズなど、多くのロックスターたちがアフターショーなどに訪れて、派手なパーティを繰り返しました。現在の店内の壁面は、ここで大騒ぎをしたミュージシャンたちのメモラビリアで埋め尽くされています。

RAINBOW bar & grill
住所/9015 Sunset Blvd, West Hollywood, CA 90069
公式サイト

ザ・ロンドン・ウエスト・ハリウッド

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Courtesy of TLWH
ウエストハリウッドからL.A.ダウンタウンが一望できる、素晴らしい景観のルーフトッププール。

この華やいだ雰囲気のサンセット・ストリップを満喫するのにうってつけのホテルが、ここ「ザ・ロンドン・ウエスト・ハリウッド」です。226全室がスイートルームという客室、L.A.の絶景が一望できるルーフトッププールなど、サンセット・ストリップの喧騒から少し離れてラグジュアリーな滞在が満喫できます。

ウエストハリウッド最高峰の5つ星ホテルで、ルーフトッププールのプールサイドからはL.A.ダウンタウンのパノラマが一望でき、反対側にはハリウッドヒルの丘陵地隊が続きます。この景観に包まれて、プールデッキに設置されたプライベート・カバナで過ごす午後はまさに至福のひとときです。

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Courtesy of TLWH
施設内にある客室は、どれも広いスペースを確保しています(左)。宿泊は全て朝食付き。毎朝メインレストランには、厳選された食材を用いた食事が並びます(右)。
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Courtesy of TLWH
226室の広々としたスイートルームには、1ベッドタイプと2ベッドタイプが用意されています。

セレブシェフ、アンソニー・キーン氏が手がけるレストラン、「ボックスウッド」で無料提供される朝食はホテル滞在中の楽しみの一つです。絶品のスモークサーモン、新鮮なフルーツ、ペストリー、濃厚なヨーグルトとグラノーラのポットなど、盛り沢山のメニューが楽しめます

客室、パブリックスペースともに、L.A.ならではのグラマラスな雰囲気と洗練されたインテリアが見事に融合しています。インテリアはマドンナの友人であり、ロンドンの有名なレストランやバーのデザインで知られるデヴィッド・コリンズ氏がこれを手掛けています。

「ウィスキー・ア・ゴー・ゴー」が建つ華やいだサンセット・ストリップの中心から徒歩で2分…という立地の良さも大きな魅力です。ストリップに建ち並ぶ歴史あるミュージック・ランドマークの数々。その周辺には、洒落たレストランやバーも軒を連ねています。

ロンドン・ウエスト・ハリウッドのラグジュアリーな滞在を満喫しながら、サンセット・ストリップでローレル・キャニオンのミュージシャンたちの足跡を訪ねてみるのもよいかもしれません。

The London West Hollywood
住所/1020 N San Vicente Blvd, West Hollywood, CA 90069
公式サイト