アメリカで幼少期を過ごしたという人が近くにいたなら、一度「子どものころ、どんなテレビ番組を観ていた?」と尋ねてみてください。すると、おそらく多くの人が、「『Mister Rogers' Neighborhood』を観ていたよ」と答えるはずです。

なぜなら、この番組は1968年2月19日の初オンエアから2001年の放送終了まで、約30年間続いた国民的大人気子ども番組だったからです。そしてそこでは、名物司会者フレッド・ロジャースによって子どもたちに向け、優しさや好奇心、さらには自尊心と共に人間性の重要性を紐解くという、とても素晴らしい内容だったのです。

回を重ねるごとに、それを観ている子どもたちから親たちまでもが善きサマリア人のごとく、「善きおじさんのアイコン」としてロジャースを真っ先に思い浮かべるようになっていきます。さらには、ロジャースが毎回着こなしていたカーディガンというアイテム自体にも、“パブロフの犬”のように「善きおじさん」のイメージを想起させるアイテムになっていきます。まさにそれは三段論法のごとく、「善きおじさん=フレッド・ロジャース、 フレッド・ロジャース=カーディガン、ゆえに善きおじさん≒カーディガン」となるわけです。

しかしながら最近になって、その論法にも時代による変化が訪れたようです。「カーディガン」を伴った新たな映像が飛び込むようになって、われわれは次第に二段目に登場する「B」に変化が起こります。そのBに入り込んできたのが、ロサンゼルスを拠点とするブランド「KeizerClark(カイザークラーク)」。ならば一段目のA=BのAにも、変化が訪れるわけです。 基本的に「カイザークラーク」は、ロジャースとは反対のベクトルかつスペクトルを感じされるものなので…。

このブランドは、2016年にロサンゼルスで1回限りのレザージャケットを作成することに始まり、2017年にMarc Keiser(マーク・カイザー)とAndrew Clark(アンドリュー・クラーク)によって設立されたプレタポルテ・ブランドです。それは「さまざまなレベルの強さ、大胆さ、攻撃性を持った作品」といったアイデンティティを表現しているブランド…ゆえに、「ロジャースとは正反対の立場」と言えるのです。

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この頃のInstagramを観ていると、多くの著名人が全く同じものを身につけていることに気づかずにはいられません。それはこのブランドから出された2021年秋のコレクション「Solaris Machina」のシェブロン・ニット・カーディガンであり、そろいのショーツと組み合わせて着られている姿を頻繁に確認することができるのです。

バスケットボール選手のドウェイン・ウェイドも、妻のガブリエル・ユニオンとイタリアのポジターノで休暇を過ごしていたときにこのセットアップと共に光り輝くジュエリーを着用しているところが確認できます。同じくバスケットボール選手のステフィン・カリーも、ロサンゼルス・レイカーズとの試合前に着用していました。さらにフットボールの選手のジョシュ・アレンも、試合前にスタジアムで着用していました。2021年10月3日(日)に行われたTempe Fashion Weekでは、バスケットボール選手のジェイ・クラウダーもフィットした黒のスウェットパンツに合わせてこのカーディガンを着用していたのです。

しかも、このトレンドはアスリート選手だけではありません。歌手のニック・ジョナスはこのセットアップで、コーヒーを飲んでいるところをパパラッチされていますし、歌手のラッキー・デイも、2021年10月9日(土)に行われたONE Musicfestでこのアイテムを着こなしているところを目撃されているのです。

このように、現在のポップカルチャー界を代表する(少なくとも)6人の著名人も同じカーディガンを愛用しているという事実。

keiser clark(カイザー クラーク)
Keiser Clark

keiser clark(カイザー クラーク)
「Chevron Check Cardigan」
475ドル
公式サイト

ここまで重複すると、「このカーディガンのどこがいいのか?」という疑問が湧いてくることでしょう。コットンニットに描かれた黒とベージュのデフォルメされたシェブロン模様は、確かに人目を引くものではありますが、それだけではないはず…。そこでその答えを探るべく、ブランドの創始者の一人であるマーク・カイザーに話をうかがいました。

「高揚するほど着心地いいのでしょう」と、彼は言います。「私たちが関わるセレブの多くは、試合やコンサート、イベントのために街から街へと移動したり、走り回ったりするなど多忙な日々を送っています。この『シェブロン・ニット』によるセットアップは非常に快適な着心地です。私も特にカーディガンは、毎日のように着ていますが、一体感のある着心地は、そう簡単には崩れないのです。国をまたぐフライトでも、会議でも、プロフェッショナルな気分を保ちながら着こなせる素晴らしいアイテムだと思っています」。

またカイザーは、これらのラインナップは映画『ブレードランナー』やロック・バンドのフリートウッド・マックらから着想を得ており、「エレクトロ・ユーティリティーなカットと暖かなレトロな雰囲気を融合している」と語ります。

誰もが感じる快適な着心地から得られる親近感から、国をまたいで旅行するかどうかにかかわらず、スタイリッシュな男性たちがこのブランドのファンであることは間違いないでしょう。そしてこの気持ちは、彼ら「ファッショニスタ」に属するような者だけが抱くものでもありません。

josh allen arriving at the jaguars nfl game
Courtesy of Kam Nedd, @thecomeupkam
Josh Allen arriving at the Jaguars NFL Game.

私たちは皆、この「アフターコロナ」気味になった現在、「自分にふさわしい服装とは何か?」を再考し始めているのです。家にいる時間が増えたことによって、「その日着る服」について考えずにいた日々の習慣から、なかなか抜け出すことはできないかもしれません。ですが、「服を着ることはそう簡単なことではない」ということを再確認しながらも、多くの人は「その服を選ぶ行為=おしゃれすることを手放したくない」とも思い悩んでいるはずです。

そんな思い悩む人々の新たなワードローブに、"着心地の良い"柄物のカーディガンという解答が浮上したに違いありません。そしてその推測を今、セレブたちが身をもって反駁(はんばく=論じ返すこと)しえない真理へと変えてくれている最中だと思っています。

Source / ESQUIRE US
※この翻訳は抄訳です。

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