1時間半をかけて25kmの高さまで上昇し、成層圏から日の出を眺めながら美食体験を満喫する、しかもミシュランの星つきレベルの絶品料理です。ただし成層圏での滞在時間は3時間半。はるか眼下に地球を見下ろす絶景に後ろ髪を引かれながら、宇宙からの帰路につきます。「SF映画?」、とんでもない。私たちを乗せて飛ぶ、豪華な宇宙旅行プランの開始が2024年末に迫っているのです。

ゼファルトのセレステ
D.R

加圧式カプセルで宇宙へ

打ち上げですが、わざわざケネディ宇宙センターまで行く必要はありません。フランスのZephalto(ゼファルト)社は、大気圏レベルの宇宙旅行をリードするスタートアップ企業ですが、その独自性の高いプランによって大きな注目を集めています。エレガントなデザインと一流の美学に包まれながら、宇宙空間で素晴らしい美食を味わう、限りなくパーソナルな時間が約束されているのです。

成層圏までの上昇を可能にした気球とともに地球から打ち上げられるのは、「セレステ」という小型の“加圧式カプセル”です。パノラマ式の窓の外に広がる無限の宇宙、そのあちこちに瞬く星々、そして私たちの暮らす惑星の巨大な姿を眺める、優雅な時間をお過ごしください。

facebookView full post on Facebook

ゼファルトの創始者でありテストパイロットでもあるヴァンサン・ファレ・ダスティエスさんは次のように話します。

「宇宙旅行という私の夢と現実をつなぐ架け橋ができたことをうれしく思います。自然(この発明は低排出ガスを実現)や風と調和しながら旅をしたいという願望を共有する人たちが、ついにそれを実現できるようになるのです。

私たちの専門家チームは、(熱気球を発明し、世界初の友人飛行を成功させた)モンゴルフィエ兄弟が誇りに思うような船をつくるために懸命に努力を重ねてきました。何年も試行錯誤を繰り返した結果、当初夢想したコンセプトは今や具体的なものとなり、旅行者に非日常的な体験を提供できるまでになったのです」

ゼファルトのセレステ
D.R
ジョゼフ・ディランさん(左)と、「フランスのイーロン・マスク」とも称されるヴィンセント・ファレット・ダスティエスさん(右)。
私たちの地球を守る方法について、ゲストの皆さんが新たな視点を持って帰ってくださることを願っています

設計は、パリの一流レストラン「ジラフ」やアメリカ・マイアミにある「フォーシーズンズ ホテル アット ザ サーフクラブ」などのプロジェクトを手がけた一流建築家ジョセフ・ディラン氏が担当します。

非の打ちどころのないインテリアデザインになることが予想されますが、そのデザインの多くは明かされていません。それでも、「私たちの地球、この貴重な美しい星を守る方法について、ゲストの皆さんが新たな視点を持って帰ってくださることを願っています」とダスティエスさんは話します。

セレステに乗船する観光客は、これまで宇宙飛行士しか見ることのできなかった地球や太陽、星々が瞬く息をのむようなパノラマを目の当たりにすることになります。それも、温室効果ガスをまき散らす宇宙ロケットに乗ってではなく、低排出ガスを実現したセレステで成層圏へ向かうのです。

気になるのは安全性

シェフやメニューは詳しく知れませんでしたが、セレステの安全性は知ることができました。それこそが彼らにとっても、最優先事項であることは紛れもない事実です。

実際、彼らは60年以上にわたって成層圏に気球を飛ばしてきたフランス国立宇宙研究センター(CNES)と提携しています。全ての航空安全基準が適用され、気球は民間航空機として欧州航空安全機関(EASA)の認証を受けています。どうやら、安全性に対しては最大限の配慮がなされていると言えそうです。

やはり、最後に気になるのが費用について。美食つきの初の豪華宇宙旅行、参加費は1人当たり12万ユーロ(約1890万円)に設定されています。2024~25年半ばまでの予約はすでに埋まっているとのことですが、「宇宙で楽しむグルメ」がそう珍しくなくなる未来はそう遠くはないでしょう。

Source / Esquire ES
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です