[INDEX]

▼ 1日の排尿回数はどれくらいであるべきなのでしょうか?

▼頻尿の原因は?

  原因①:過活動膀胱かもしれません

  原因②:尿路感染症かもしれません

  原因③:間質性膀胱炎かもしれません

  原因④:糖尿病かもしれません

  原因⑤:前立腺肥大症かもしれません

▼ まれな病状もあります

  原因⑥:脱水症状かもしれません

  原因⑦:不安やストレスを抱えているのかもしれません

▼ 排尿回数をできるだけ少なくする方法はあるのでしょうか

▼ 医師にかかるタイミングはいつでしょうか


いつも尿意を催しているような気がする、そんな思いに駆られて心配になったことはありませんか? 「水分を摂(と)りすぎているわけじゃないのになぁ」と思っていても、気がつくとトイレにたびたび行っている人も少なくないかもしれません。

日本人において尿の出すべき量というのは、「成人の1回の排泄尿量は200~400mLほどで、1日の総量は1000~2000mLほど」とされていますが、この基準はあくまで目安であり個人差はあります。そして1日の排尿回数に関しては5~7回であり、その間隔は3~5時間程度ということ。

ですが、もしトイレに通う回数がこの正常とされる値から外れているのなら、何か問題が起きている可能性を考えてみる価値はあります。特に気になる人、また最近生活習慣を変えていない、不安のレベルも上がっていない人であれば、なおさらです。

仕事の合間に副業のように排尿しているならば医学的な要因に注目し、解決策を見つけたほうがいいでしょう。ここでは尿意を頻繁に感じる理由と、医師にかかるタイミングについて知っておきたいことをご紹介します。

1日の排尿回数はどれくらいであるべきなのでしょうか?

1日に排尿回数は人によって、その日の水分摂取量もまちまちなので違うもの。ですが、1時間おきくらいにトイレに行くようなら膀胱があなたに何かを伝えようとしているのかもしれません。フロリダの病院、オーランド・ヘルスの泌尿器科医ジャミン・ブラームバット医学博士によれば、「健康な人であれば1日に8回以上、夜間に1回以上の頻度で排尿するのは何らかの異常に来されている可能性がある」ということです。

尿の量が多すぎることを医学用語で「多尿症*⁴」、夜間に排尿のために頻繁に起きることを「夜間頻尿*⁵」と言います。オーストラリアの研究*⁶によると、「20~40歳の男性の20~44%が、寝ているべき時間にトイレにたびたび行かなくてはならないことに悩んでいる」といいことです。

young man prostate pain
dobok//Getty Images

頻尿の原因は?

排尿回数が多い原因は、いくつか考えられます。そこには生活習慣に起因する簡単なものもあれば、医学的な理由もある…。特に重要なものを下記にピックアップしてご紹介します。

原因①:過活動膀胱かもしれません

常に尿意を催し、我慢できないのはあなただけではありません。実際、「アメリカでは男性の約30%が過活動膀胱(OAB)*⁷に悩んでいる」と米国最大級の外科診療所NYCサージカル・アソシエイツのケレム・ボーテセン医学博士*⁸は語ります。

「18歳から29歳の若い男性も罹患する可能性はありますが、60歳以上の男性のほうが一般的で有病率は4倍になります――前立腺に問題のある男性や、脳卒中や多発性硬化症などの神経疾患のある男性も、この症状を発症しやすい」と言います。

OABにかかると、膀胱の尿を溜める力が衰えます。そのため、夜間に頻繁にトイレに行くことになるのです。ボーテセン医師いわく、「OABの人は夜間トイレのために頻繁に起きる傾向があります。膀胱の筋肉が頻繁に収縮するため、膀胱が完全に満たされていなくても突然強い尿意を催すのです」とのこと。

原因②:尿路感染症かもしれません

尿路感染症(UTI)は女性が罹る病気と思われがちですが、男性も無縁ではありません。「UTIそのもののせいで頻尿に陥るだけでなく、UTIが過活動膀胱の症状を引き起こすこともある」とブラームバット医学博士は話します。

膀胱炎もUTIの1つです。男性が膀胱炎になるのは排尿回数が少ない場合がほとんどですが、便秘、または最近尿路の手術を受けた、腎臓結石になった、コンドームせずにアナルセックスした、などの理由でかかることもあります。「尿道が短い男性は、この症状にかかりやすいのです」と言います。

「肛門には大量の細菌が生息していますが、その主なものは大腸菌です。コンドームをせずにセックスすると大腸菌が尿道に入り、UTIを引き起こす可能性があります。UTIは膀胱を刺激し、基本的に膀胱壁を炎症させます」

OABとは異なり、UTIは適切な治療を受ければ短期間で治ります。ほとんどのUTIは、抗生物質で治癒するとのこと。

原因③:間質性膀胱炎かもしれません

間質性膀胱炎(IC)*⁹は膀胱症候群(BPS)とも呼ばれ、ボーテセン医師によると頻尿や膀胱圧迫感、痛みを引き起こす慢性疾患です。UTIは感染症なので抗生物質を服用することで容易に治療へと導くこともできますが、ICは長期的な症状でそう簡単には治らないということ。

「ICにかかると切迫感を感じ、排尿の回数が増え、尿の量も普通の人より少なくなる傾向があります。この症状は尿の中にある刺激物質による膀胱への免疫反応に起因するもので、膀胱を傷つけたり、切迫感や膀胱の痙攣(けいれん)を引き起こします」

残念なことにICの診断は厄介で、見つけられなかったり他の病気と誤診されたりすることがよくあります。

「この疾患の診断と治療はOABとよく似ています。ですがICは、自己免疫疾患だと考えられているためシクロスポリンなどの免疫抑制剤が治療に用いられます」と、ポーテセン医師は言います。

原因④:糖尿病かもしれません

頻尿は糖尿病の初期症状です。NYCサージカル・アソシエイツの医学博士*¹⁰によると、「それは身体が、血液中の糖を尿で排出しようとするためです」とのこと。

糖尿病になると血液中に糖分が過剰*¹¹になるため、腎臓は糖分を取り込まざるを得なくなります。腎臓はそれを尿で出そうとするため、頻繁に尿意を催すのです。頻尿になると体液が失われ、それを補うために組織から体液を取り出そうとする…そのため、脱水症状を引き起こす可能性もあるということです。

もともと糖尿病患者はのどが乾くため水分の摂取量が増え、排尿の回数が増えることがあります。そうすると脱水症状が悪化、悪循環が続きます。心当たりのある人は一度、検査を受けたほうがいいでしょう。

原因⑤:前立腺肥大症かもしれません

尿の出が悪い場合、前立腺肥大症*¹²もしくは前立腺になんらかの関係がある可能性があります。ホリングスワース医師によると、「尿が以前のように勢いよく出なくなったり、尿が便器の壁に当たらなくなったりすることに最初に気づくかもしれません」と言います。さらにこう続けます。

「そこで実際、膀胱がいっぱいになりすぎた状態がしばらく続くと、空にするのに時間がかかることがあります。それが膀胱壁の筋肉を傷つけ、膀胱の膨張や損傷がますます大きくなることもあります」

この状態がさらに進行すると、排尿し始めることも難しくなるそうです。すると、ますます排尿の回数が増えるとのこと。

前立腺肥大の原因を知る手がかりの1つは、排尿回数が多い時間帯です。「男性の場合、夜間頻尿または夜間の排尿の原因のトップは、前立腺肥大症です」と、医学士*¹³は言います。彼は泌尿器科医でニューヨーク市の泌尿器科専門医師組織のディレクターを務めています。

「前立性肥大症は一般的に45歳から50歳以上の男性に起こりますが、30代半ばから症状が始まる男性もいます」

「前立腺肥大」と診断された場合、幸いなことに治療の選択肢は数多くあります。それはα遮断薬、抗ヒスタミン薬、アミトリプチリン(抗うつ薬)などです。また、生体を傷つけない、非侵襲的な方法で肥大した前立腺を縮小させる前立腺動脈塞栓術*¹⁴を試すこともできます。この方法は安全で効果的ですが、副作用として膀胱痛や尿や精液に血が混じり、直腸から出血することがあるので注意が必要だとボーテセン医師は話しています。また手術をすすめられることも…。

さらに、革新的な治療法もあります。「ウロリフト*¹⁵(経尿道的前立腺吊り上げ術)」と呼ばれる手術で、これはインプラントを埋め込み、前立腺を持ち上げ尿道を広げることで排尿が妨げられないようにするものです。

経尿道的水蒸気治療*¹⁶は、「レジューム」と呼ばれる医療機器を使い水蒸気を利用する低侵襲手術です。シュテンシュルユガー医師によると、どちらも術後の回復時間が短いという利点があります。

「これらの治療法を使うと、薬による治療や外科的治療の副作用として起こりうる性的副作用、特に射精障害が避けられます。前立腺が非常に大きい場合には、前立腺の内腺をくり抜く(ホルミウムレーザー)前立腺核出術*¹⁷が最も効果的と考えます」

頻尿対策
Korrawin//Getty Images

まれな病状もあります

「まれなケースですが、膀胱がんの症状として頻尿が起きていることもあります」、そう指摘するのはブラームバット医学博士。がん細胞が膀胱を刺激し、排尿の増加を引き起こすそうです。

「がんでないことを確かめるには、泌尿器科医による検査を受ける以外方法はありませんが、膀胱がんは一般的ではありません。心配しすぎる必要もないでしょう」

膀胱がんの場合、尿に血が混じる*¹⁸などの他の症状も現れます。尿の量が多いだけであれば、心配する必要はないでしょう。

最後に頻尿は、脳卒中の症状でもあります。「脳卒中になると時折、膀胱につながっている神経が損傷することがあります。そのため頻尿になったり、尿がまったく出なくなる尿閉になったりすることがあります」と、ブラームバット医学博士は言います。

原因⑥:脱水症状かもしれません

矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、体内の水分が失われると、腎臓は圧迫感を感じ働き始める傾向があります。クリーブランド・クリニック*¹⁹は、脱水症状を起こしたとき急速に水分を補給すると排尿回数が増えることを指摘しています。そのときアルコールを摂取すると、アルコールには利尿作用があるため排尿回数はさらに増えることになるでしょう。

原因⑦:不安やストレスを抱えているのかもしれません

仕事で大きなプレゼンを控えているとき、あるいは私生活で何カ月もかけて準備した耐久レースに参加する前などに、トイレに駆け込む回数が増えていませんか? この場合排尿回数が増えるのは、緊張やストレスが原因である可能性が濃厚です。水を飲む量を減らしても解決はしません。ただ、トイレの場所を確認しておくことは忘れずに。

頻尿対策
ferlistockphoto//Getty Images

排尿回数をできるだけ少なくする方法はあるのでしょうか

「これらの症状の多くは水分摂取量を変えなくても、生活習慣を少し見直すだけで症状を和らげられる」とボーテセン医師は言います。さらにこう続けます。「泌尿器科医は、過活動膀胱の患者にトイレに行く回数や尿漏れを記録するために膀胱日記をつけることをすすめています」と…。泌尿器科ケア財団「Urology Care FOUNDATION」*²⁰では、症状を記録して泌尿器科医に見せるための日記*²¹を無料で提供しています。

またカフェイン、人工甘味料、アルコール、炭酸飲料、柑橘類、トマト、チョコレート、スパイシーなメニューなど一部の飲食物を避けることも効果的でしょう。酸性で膀胱に刺激を与える可能性のある飲食物は、排尿の誘因となることがあります。

頻尿を改善する目的で、「時間を決めて排尿する」というのも有効かもしれません。つまり、毎日のトイレのスケジュールを決めるのです。尿意を感じたら行くのではなく、「1日のうち決められた時間に排尿する方法」になります。

また、ケーゲル体操*²²も排尿回数を減らすのに効果があるということ。この体操を女性向けだと考えている人も多いですが、女性だけのものではありません。尿の流れを止めたり遅くしたりするために、排尿の途中で行うといいでしょう。ケーゲル体操は骨盤底を強化し、膀胱をリラックスさせる。そうすることでコントロールできるよう導くということです。

医師にかかるタイミングはいつでしょうか

まず自分の身体の声に耳を傾けてください。日常生活に支障をきたすほどの頻度で尿意を感じるようであれば、医師の診察を受けましょう。あるいは、「生活の質という点では大した問題ではないけれど、数週間以上続くようであれば泌尿器科を受診し、検査を受けるのが妥当でしょう」と、前出のシュテンシュルユガー医師は言います。

つまり健康であれば、「十分な水分量を摂取していても、本来であればトイレに駆け込むまでには至らない」と考えるべきなのです。なので、尿意を催す回数が多く自分自身で「異常かもしれない」と思うのであれば、すぐに医師の診断を受け、解決策を見つけましょう。

[脚注]

*1:大阪腎泌尿器疾患研究財団主催による市民公開講座夜間頻尿と過活動膀胱/男性・女性を参照

*2:心因性頻尿 不安や緊張などの精神的ストレスがあって、頻尿が起こるとされています。「みんなの家庭の医学」サイト内の当該ページを参照

*3:Dr. Jamin Brahmbhatt 泌尿器科およびロボット手術の専門家であり、The PUR Clinicのマネージングディレクター。また、非営利団体「Drive 4 Men’s Health」の共同創設者として、地域社会に貢献する活動家としても知られている。

*4:MedLinePlusによると多尿症とは、1日あたり2.5リットルを超える排尿行為(ただし、これは飲む水の量と体内の総水分量によって異なります)で、この問題は「頻尿とは異なる」と伝えている。オンライン医学事典「MSDマニュアル(プロフェッショナル版)」の当該ページを参照

*5:日本泌尿器科学会の当該ページを参照

*6: 泌尿器科と男性の健康に関する学術雑誌「Trends in Urology and Men's Health」で2022年11月15日に発表された研究論文A rude awakening: management of nocturia in menを参照

*7:過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder) 名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室が公開する当該ページを参照

*8:Dr. Kerem Bortecen *3のDr. Jamin Brahmbhattも所属するニューヨーク市にある外科医療団体「NYC Surgical Associates」に所属する外科医。Soho Men's Healthの一員でもある

*9:間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS:Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome) 膀胱に原因不明の炎症を引き起こす慢性的な状態。この炎症は膀胱が拡張し、痛みや圧力を引き起こす可能性もある。 IC は女性に多く見られますが、男性にも発生する可能性もある。東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 腎泌尿器外科学教室サイト内になる当該ページを参照。中でもハンナ型間質性膀胱炎は、間質性膀胱炎の中でも特殊なタイプとされ、難病指定されている

*10:Dr. Christopher Hollingsworth 外科医療団体「NYC Surgical Associates」に所属する一般外科医、美容外科医、血管内外科医 自身のサイトを参照

*11:国立国際医療センター内「糖尿病情報センター」の当該ページを参照

*12:前立腺肥大症(Prostatic hyperplasia)名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室サイト内の当該ページを参照

*13: Dr. Alex Shteynshlyuger ニューヨーク市で活動する専門的な泌尿器科医であり、男性および女性の泌尿器系の問題の評価と治療に専門知識を持つ認定専門医。自身のサイトを参照

*14:前立腺動脈塞栓術(PAE:Prostatic Artery Embolization)国立研究開発法人 科学技術振興機構サイト内に掲載された論文を参照、医療・医学情報サイト「Care Net」に公開された「HealthDay News」からの経過報告の転載を参照

*15:UROLIFT(経尿道的前立腺吊り上げ術)インプラントを使用して前立腺を持ち上げ、尿道を広げる方法。東京慈恵会医科大学 泌尿器科サイト内の当該ページを参照

*16:経尿道的水蒸気治療(TUWVT:Transurethral Water Vapor Therapy)「WAVE治療」とも言う。Rezum Systemという医療機器を用い、水蒸気を生成して前立腺組織に送達する。NHK 健康CHサイト内の当該ページを参照

*17:ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP) 日本赤十字社 成田赤十字病院サイト内の当該ページを参照

*18:国立研究開発法人国立がん研究センターサイト内の膀胱がんについてを参照

*19:オハイオ州クリーブランドに本拠を置く非営利学術医療センター「Cleveland Clinic」サイト内の当該ページを参照

*20:Urology Care FOUNDATION アメリカ泌尿器科学会(AUA)の公式財団であり、泌尿器科の研究と教育を促進することにコミット。この財団は、研究者、医療専門家、患者、介護者と協力し、患者の生活を改善するために活動している。公式サイトを参照

*21:日記に関してはこちらを参照

*22:ケーゲル体操(Kegel exercises)または骨盤底運動 Mayo Clinicによる当該ページを参照、Dr. Eric Leckie DPTのYouTubeチャンネルから「男性のためのケーゲル体操をマスターするための秘密」を参照

Translation / Yoko Nagasaka
Edit / Minako Shitara
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US