• アメリカ・ニューメキシコ州などで数週間にわたって発見されている数千羽の鳥の大量死は、数十万羽以上の被害の一部であることがわかりました。
  • 鳥の生態は、しばしば異常気象や気候変動の影響を警告するものと言われています。
  • これらの鳥は飢えていたり、動きが鈍っていたり、方向感覚を失っていたものと見られ、環境が影響を与えたものと考えられます。

 アメリカ南西部で起きている野鳥の大量死という事態に対し、科学者たちは不安と戸惑いを感じています。その原因は判明しておらず、一部の科学者は「気候変動が影響しているのではないか?」と考えています。ほとんどの鳥は昆虫を食料としていますが、死亡した鳥は衰弱して方向感覚を失っていたことがわかっており、それは食料供給が不足していることを示唆しています。また、「カリフォルニアで相次ぐ山火事が鳥たちの生活に影響を与えているのではないか?」という憶測も飛んでいます。

 米「CNN」が9月中旬に、この悲しい現象と命を落とした鳥たちについて報道しました。その記事を読むと、鳥たちは狂犬病のように行動を変える伝染病にかかった動物のような行動を取っていることがわかります。

 「ニューメキシコ州のホワイトサンズのゴルフ場では、空中で捕食し歩くことのないツバメが地面に座り込んで、人が近づいても逃げることはありませんでした」と、CNNは説明しています。

 これは想像するだけでも恐ろしい光景ではないでしょうか。クルマを避けきれなかった鳥たちもいるのです。地元の科学者たちは、「すでに数十万羽の鳥が影響を受けており、今後数百万羽に達する可能性もある」と言っています。

 ニューメキシコ州立大学の魚類・野生動物・保全生態学の教授であるマーサ・デズモンド氏は2020年9月中旬、「CNN」に対し「気候変動が要因の一つとなっている」と話しました。しかし、その説明の翌日には「NPR」のラジオ番組で、「科学者として、現時点ではよくわからないというのが本音です」と明かしてもいます。

 「今は渡り鳥が移動する季節です。鳥たちは大規模な気象現象に伴って移動しますが、この時期に大量の鳥がこの地域に向けて南下してくるのが見られました。これは珍しいことですが、春と秋に天気現象に伴って鳥が大量死することはあります。通常は、ひょうや吹雪といった、1回きりの現象が原因です」

 しかしこのような(稀な)大量死でも、その数は数百や数千羽であり、数十万羽という単位では起こりません。

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 では、一体何が起きているのでしょうか。直感的に考えられる要因はいくつかあります。渡り鳥は、移動する時期とルートを決める際、すでに危ない橋を渡っています。そして天候のパターンや季節の変化を察知し、南へ向かいます。つまり、異常気象が発生すると、その移動にさまざまな障害をもたらす可能性があるのです。

 植物が春先に花を咲かせたころに、また急に気温が下がって凍ってしまった場合を考えてみてください。それが野菜や果物の木であれば、凍結によってその年の収穫に影響が出るかもしれません。次に、1846年にアメリカの東部からカリフォルニアを目指した開拓民のグループであり、冬をシエラネバダ山脈で雪に閉ざされて過ごすことになって事実上の遭難状態に。そして一部の者は生存のため人肉食に及んだと言われる「ドナー隊」のことを考えてみましょう。彼らは危険な峠道に雪が積もってしまう前に、先に進むかどうかを決断しなければなりませんでした。極端な天候と、季節外れで典型的ではない食料に頼らなければならならない鳥たちの状況は、この2つの例に関係しているのではないでしょうか?

 鳥の大量死に最初に気づいたのは、ホワイトサンズ・ミサイル発射場の生物学者たちのチームです。このとき、デズモンド氏は「CNN」と「WBUR」に対して、悪名高い「トリニティ実験」が行われた現在のホワイトサンズ・ミサイル実験場が関係しているからではなく、稀に見る大量死がホワイトサンズでのみ発生していると、最初は考えていたと話しています。

 しかしその後、科学者たちはニューメキシコ州の他の場所や、別の州でも鳥の大量死に気づきはじめたのです。はっきりとした原因の全貌を理解するには、おそらく何年もかかるでしょう。

Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。