この記事をざっくり説明すると…
- アメリカ海軍に2艘(そう)のフランス・イグアナ社製の「インターセプター」水陸両用艇の試験導入が開始されています。
- 時速90キロでの航行可能な高速戦闘艇です。
- 瞬時に着艦装置を展開することができ、陸上での走行能力も備えています。
水陸両用の高速戦闘艇
アメリカ海軍が新たに導入したのは、水上での活動に限定されない、全く新しいコンセプトの戦闘艇です。
このフランスのイグアナヨット(IGUANA YACHET)社製の「 インターセプター(Interceptor)」が高速艇であることは、まず間違いありません。しかし、まるで戦車のキャタピラのような機能によって、地上での走行能力も備えています。アメリカ海軍は、浅瀬などの海岸線における監視を想定しているのではないかと、テック系メディア「ポピュラーサイエンス(Popular Science)」が報じています。
海上では一般的なボートにしか見えません。しかし、グラスファイバーとカーボンファイバーで強化されたその船体には350馬力ものエンジンを船外機として装備し、水上においては最高時速50ノット(約93キロ)、地上においても時速57マイル(約92キロ)で移動することが可能なようです。通常5人乗りの仕様となっていますが、積載量は最大2645ポンド(約1200キロ)を誇るとのこと。
とは言え、このような機能は高速艇としては一般的なものと言えなくもありません。
インターセプターの驚くべき特性とは、操作ひとつでまるで戦車のようなゴム製のキャタピラが油圧式の装置によって展開される機能です。ケブラーという特殊な繊維で補強されたキャタピラが、水上から陸上への直接移動を可能にします。キャタピラを展開するのに要する時間はわずか8秒と短く、その際の最後部は11フィート(約335センチ)に達します。
海軍特殊部隊の任務遂行に期待
アメリカ海軍が2艘のインターセプターの試用を決めたのは、2020年のこと。
今後、どのようなカタチでの実用化を検討しているのかは不明ですが、紛争地帯や敵地領内の海岸線における海軍特殊部隊の任務遂行に大いに役立つであろうことは、想像に難(かた)くありません。例えば小さな島に接近する必要が生じた場合、見晴らしの良い海上から陸地内部へと移動し、敵の監視の届かない場所に身を隠すことなども可能でしょう。
地上走行の能力を備えた戦闘艇の利点は、いくつか考えられます。内陸部への物資の運搬、負傷した部隊の救出活動、また災害救助活動の支援としても心強い存在かもしれません。
特にフリゲート艦(哨戒[しょうかい:敵襲の見張り]や偵察などを主任務とする艦艇)、駆逐艦、巡洋艦など、米海軍の保有する他の艦艇にも同様の装備が求められることになる可能性があります。そうなれば桟橋や港のないところでも、陸上部隊を送り込むことが可能となります。
一方で、このインターセプターの戦闘艇としての能力には疑問も生じています。
艦首に機関銃などを装備することはできますが、装甲は最小限の強度しかありません。海上での移動を考えれば、船体に弾痕による穴を開けるわけにもいかないでしょう。つまり、陸上においては装甲車の役割を果たすとは考えられず、銃弾の飛び交う戦地での使用はないように見られます。最大の防御力と呼べるのは、その高速性能ということになるでしょう。
イグアナ社は自社のウェブサイトにおいて、ペンタゴン(米国防総省)からの追加注文が想定されるとし、自信をのぞかせています。
Source / POPULAR MECHANICS
Translate / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です