コンセプトカーが楽しかった時代を覚えていますか? かつての自動車メーカーは、信じられないほどのパワーを繰り出すモンスターカーや、とんでもないプロポーションを持ち、どこか使い勝手の悪そうなスーパーカーなどをよく我々に披露してくれていました。

 オートショーで各社がこのようなクルマを披露すると、誰もがじっと眺めてべた褒めし、「絶対に市販化すべきだ」と言ったものです。しかしながら、どのメーカーも決して市販化することはありませんでした(ただし、クライスラーを除けば)。

 とは言え、時代は変わりました。最近のコンセプトカーはどれも同じようなボックス型の自動運転EVで、回転して向き合うシートや複数の大型スクリーンといったインテリアも似たりよったりです。

 先見の明があると思われたいメーカーの幹部は、最新のポッド型自動車を披露して、「これはマルチプラットフォームの都市交通インテグレーションに新たなパラダイムをもたらすクルマです。堅牢かつ自律的に接続されたネットワーク空間を活用し、ライドシェアとラストマイル(公共交通の最寄駅から自宅や目的地までの道のり)の両方に対応できます」といったことを口にするでしょう...。

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Jaguar Land Rover

 さて、本題に入りましょう。

 それはジャガー・ランドローバーが、2020年2月18日(英国時間)にイギリス・コベントリーで披露した「プロジェクト・ベクター」のことになります。「プロジェクト・ベクター」は、都市での利用を前提とした自動運転の多目的EV。コンパクトな車体は、全長がおよそ4メートルとのこと。

 さまざまな用途に対応するために、バッテリーなどの電動パワートレインをすべて床下に搭載しているとのこと。インテリアはキャビンスペースを広く取っており、ライドシェアで使えるシート配置を可能にしています。

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Jaguar Land Rover

 少し不思議な点としては、同社はこの1台に、「ジャガー」または「ランドローバー」のいずれかのブランド名を使うのではないということ。このクルマは、企業名である「ジャガー・ランドローバー」というブランド名で販売するということです。もしかすると、このプロジェクトの背後に宿る複雑な感情を物語っているのかもしれません…が、事実はわかりません。

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 小型の自動運転EVバスというアイデアに、本質的な間違いはありません。

 ですが、ジャガー・ランドローバーはこのようなクルマを開発するために、GMのように別会社を立ち上げるべきだったもしれません。なぜなら、優れたドライブ体験やレース、オフロードのダイナミックな走りを追求し、それを自然と我々に連想させるジャガー・ランドローバーです。そんな企業がモビリティ分野への取り組みを掲げたとき、我々は認知的不協和(自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態)を感じざる負えないからです。これは多少なりとも、ブランドへの信頼を脅かす要因になりかねないのですから…。

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Jaguar Land Rover Vector Pod Autonomous Concept Vehicle
Jaguar Land Rover Vector Pod Autonomous Concept Vehicle thumnail
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 今後ジャガー・ランドローバーは、2021年後半から「プロジェクト・ベクター」をコベントリーで走らせる予定になっています。どんな走りを見せてくれるでしょうか。


Source /CAR & DRIVER
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。