現地時間2022年3月31日(木)、アメリカ・カリフォルニア州ロングビーチで世界初披露となったトヨタの「GRカローラ」。「カローラ」のスポーツモデル的な位置づけであり、「カローラスポーツ」に「GRヤリス」のエンジンを載せ、4WDシステムを搭載したようなモデルと言えます。

発表間もない「GRカローラ」ですが、アメリカで早くも人気急騰。しかもその勢いはすさまじく、すでにトヨタから受注停止の指示を受けているディーラーも一部地域で出ているほど。

北米トヨタ(USトヨタ)で自動車事業担当の上級副社長を務めるジャック・ホリス氏は、アメリカのカーメディア「Road & Track」の取材に対して「現在、受注が飽和状態となっている地域が出始めており、受注制限を設けなければならない状況にある」と表明しています。加えて同社の広報担当によれば、「納車の割り当てが追いつかない場合に、ディーラーが顧客から手付金を受け取ることを回避するよう指示が出ている」とのことです。

 
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「GRカローラ」の生産の大部分がトヨタの拠点である愛知県豊田市の元町工場で行われているため、生産台数に限界が生じています。2023年モデルの生産は6500台が予定されており、それ以降も年間8000台を超えることはないものと見られています。

ラリー・ホモロゲーション()の「GRヤリス」は、北米で販売されていません。そのことに対しては、「Road & Track」編集部はもちろん、アメリカの自動車愛好家から大きな不満の声が上がりました。

そこで、この高まる「GRヤリス」待望論を受けて、「『GRカローラ』の展開がなされたのではないか?」という問いに対してホリス氏は、それを否定した上で「『GRヤリス』の発表前にはすでに、『GRカローラ』の開発が始まっていた」と明かしています。

「『ヤリス』、『カローラ』、『86』、そして『スープラ』。これらのクルマはいずれもGRファミリーの一員と言えます。ですので『GRカローラ』の開発に『GRヤリス』が影響を与えたか?と問われれば、『あらゆる物事が影響している』としか答えようがありません」と、ホリス氏は語ります。

「北米市場向けには、『GRカローラ』という判断になったということです。そして『GRヤリス』の北米圏での展開が検討されなかったという話でもありません。『今回はこの『GRカローラ』に全力を注ぐことになった』、という一言に尽きます」

 
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北米で「GRカローラ」を展開するとしたトヨタの判断は、正解だったと言えるでしょう。その背景には、「『GRヤリス』のホモロゲーションモデルを北米向けにつくろうとすれば、コスト高にならざるを得ない」という事情もあります。

「GRカローラ」の需要については、「おそらく沿岸部でより高まるだろう」とトヨタの広報部は見ています。2023年モデルはいまだ完売というわけではありません。ですが、希望小売価格通りの予算で入手したいのであれば、「全国のディーラーに直接電話で相談するのが最善」という状況になっています。

ホリス氏の、「GRカローラ」に賭ける期待も高まっています。

「まず考えるべきは、“GR”とは何かという点に尽きます。この“GR”こそが、豊田章男CEOの個人的な情熱の結晶であるとするならば、なぜそうなるに至ったのかを知っておかなければなりません」と、ホリス氏は述べています。

「あの“86”については、豊田氏本人が北米の若者向けブランドの“サイオン”および『FR-S』を仕掛け、さらには『スープラ』へと続く流れを生み出しました。が、進化はまだ継続中です。さらなる興奮、遊び心、若々しさを追求し続ける中で、『GRカローラ』が誕生したと言えます…が、これも弊社の“GR的”なステップの一つに過ぎないのです」

【※ホモロゲーション=FIA(国際自動車連盟)のレース出場に必要な形式認定のこと。世界ラリー選手権(WRC)のホモロゲーションを取得するにはベース車となるモデルが連続する12カ月間に2500台以上、車種全体で2万5000台以上の生産台数が必要となります】

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。