テスラ「モデルS プラッド」や、飛ぶ鳥を落とす勢いのクロアチアのEVメーカー・リマック「ネヴェーラ」といった超高性能EV(電気自動車)の出現により、もはや非常識とでも言うべき加速性能を示す数値には、すっかり慣れたものと思い込んでいました。

ところが、カーメディア「オートモーティブ・ニュース・ヨーロッパ(ANE)」が伝えるところによると、そんな私たちの“慢心”を戒めるべく、ベントレーがある計画を進行中だというのです。

ベントレーは、自社初となるフルEVを2025年に発表する予定となっていますが、なんとその新型EVは既存のパフォーマンスカー「コンチネンタルGTスピード」の約2倍もの馬力を持つかもれしれない…、と言うのですから心穏やかではありません。

「コンチネンタルGTスピード」も、かなりのパフォーマンスを誇るクルマであることを忘れてはなりません。エンジンは6.0リッターW型12気筒ツインターボチャージャーで、650馬力と、644lb-ftのトルクを叩き出すハイパフォーマンスモデルです。それをはるかに凌(しの)ぐ1400馬力のEVとなる予定だと、CEOのエイドリアン・ホールマーク氏が自信を覗かせているということを前出の「ANE」が報じているというわけです。

「乗り心地」というジレンマも

 
MIKE DODD

もちろん、規格外のパワーのクルマを操ることが容易ではないことは明らか。事実、ホールマークCEOも、「それが快適なものかどうかはわからない」と苦笑いするほどです。

「650馬力を『コンチネンタルGTスピード』で実現したわれわれベントレーであれば、その新型EVではそれを倍増させることも可能です」と、ホールマークCEOは自信を隠そうとしません。「ところがその0-100キロ加速がある種、頭痛の種となっているのです。不快感を覚える程の加速、とでも言えばよいでしょうか。吐き気を催すほどの加速と言うべきかもしれません」

ベントレーと言えば、何よりもその素晴らしい乗り心地が魅力です。乗って気分を悪くなるなど、あってはならないことでしょう。そのようなわけで、ホールマークCEOもEVの高性能化の追求が電動ベントレーの使命であるとは考えていないようです。必要とあらば、新型EVの加速性能を低下させることさえ厭(いと)わないと述べています。

「今や2.7秒という0-100キロ加速が可能になったばかりか、その気になれば1.5秒を実現することも不可能ではありません」と、ホールマークCEOは言います。

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BENTLEY

わずか1.5秒で時速100キロまで加速するという非常識が仮に現実のものとなるのであれば、ベントレーはパフォーマンス市場の頂点に君臨することになるでしょう。参考までに挙げておきますと、テスラの「モデルSプラッド」の0-100キロ加速はわずか1.9秒、さらにリマックの0-100キロ加速は1.85秒と公表されています。

もし、新型EVのパワーが1400馬力だと言うのであれば、テスラの1020馬力、リマックの1914馬力のちょうと中間あたりのパワーということになります。そのようなクルマでスピードを出そうと思えば、パワートレインの制御が一筋縄でいくはずがありません。

しかし、現行モデルのラインナップに、ハイブリッド仕様車を加える計画のあるベントレーなら、そのようなシステムを調整しながら生み出すことも不可能ではないかもしれません。

ヨーロッパの他の自動車メーカー同様に、ベントレーも今後10年間でのカーボンニュートラル(脱炭素化)の達成を目標に揚げています。ベントレーは城下町であるイギリス・クルーに置く生産拠点の環境をさらに整えるべく、30億ドル(約3820億円)以上の投資を行う計画があるとも言われています。果たして、ベントレーの新型EVはどのようなものとなるのでしょうか。

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です