ほぼ市販車のままで北極から南極へ?

日産が北極から南極への遠征に挑戦する――。そんな心躍る知らせが入ったのは2022年5月のこと。イギリスの探検家クリス・ラムゼイさんとパートナーシップを締結し、日産が誇るクロスオーバーEV「アリア」の中でもe-4ORCE搭載グレードでPole to Pole(ポール・トゥ・ポール|北極から南極)を目指すというのです。

北極から南極まで北米から中南米を経由し、南極大陸へと向かう移動ルートは距離にしておよそ2万7000キロ。その間には冷たく閉ざされた氷河や険しい山脈、寒風吹きすさぶ谷間から砂埃舞う広大な砂漠まで、地球の過酷な顔と対峙する冒険の旅路です。

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NISSAN

驚きの発表から9カ月。2023年3月の出発に向けて、今回の冒険で使用される相棒の日産「アリア」が公開されました。極地探検車のスペシャリストであるアークティック・トラックス社の協力のもとに誕生した特別な「アリア」――過酷な環境を迎え撃つ車両となるべく、「さぞや重装備になるでしょ」といったコチラの予想を大きく裏切るように、その準備は意図的に最小限に抑えられていました。

なんと、バッテリーやパワートレインは市販車のまま。最も大きな変更点は、サスペンションの調整と39インチタイヤの採用のみとのこと。そこに日産の走行サポートシステム「e-4ORCE」を組み合わせています。「e-4ORCE」は前後2基の高出力モーターと、ブレーキの統合制御によって、駆動力を自在にコントロールする電動駆動4輪制御システムのこと。その恩恵として、力強く滑らかな走りや路面を問わない制御力を実現しています。

今回の冒険のリーダー、クリス・ラムゼイさんは、「今回のチャレンジで標準に近しい「アリア」で冒険に出るのは至極当然のこと」と話します。

「私たちの冒険が目指すことの1つに、車の本当の実力、日常的な能力を明確に示すということがあります。だからこそ標準的な市販EVを使用すべく、最小限の変更でどんな場所でも走るのです。ドライブトレインとバッテリーは工場出荷時のままである市販の『アリア』を使用し、この車がいかに高性能で多用途であるかを示します。サスペンションに関しては変更を施し、ホイールアーチを広げることで安定したプラットフォームと39インチのBFグッドリッチタイヤのベネフィットをより引き出すことができるようにはしています」とのこと。

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日産の星野朝子副社長も、次のように話します。

「新型クロスオーバーEV『アリア』は、より遠くへ、より簡単に、より快適に移動することを可能にします。さまざまな路面で安定性とトラクションを高める『e-4ORCE』を搭載した『アリア』は、このチャレンジングな旅の最適なパートナーとなることでしょう」

また今回の冒険では、再生可能エネルギーを活用する革新的なポータブルユニットが、極地での「アリア」の充電に使用されます。牽引可能なこのプロトタイプには軽量の風力発電機とソーラーパネルが搭載されており、強風と長い日照時間を利用してドライバーが休憩している間にEVのバッテリーに充電が行われます。

「もともと素晴らしい車が、さらにスタイリッシュになり、地球の果てまで行けるよう準備が整いました。今からドライブするのが楽しみでなりません」と、ラムゼイさんは語ります。

日産は長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において、「ワクワクする商品と技術によって移動と社会の可能性を広げていくことを目指す」と述べています。今回の「アリア」と「e-4ORCE」による遠征で、さらなる移動の可能性を私たちに見せてくれることを期待して止みません。そんな大冒険への出発は今年の3月です。

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