2020年10月まで欅坂46に在籍し、現在ではクリエイターやアーティストとして活躍する佐藤詩織(さとう しおり)さん。その活動は、ダンスやグラフィック制作、衣装・映像制作と多岐にわたります。表現の垣根を超え、多くの人を魅了する彼女の新たなる作品、写真集『月刊 佐藤詩織・旅』と『アートブックコレクション 佐藤詩織』が来たる2022年3月31日(木)に発売されます。

そこで生まれた作品の裏側を探るとともに、彼女自身の作品の魅力と、その作品がどのように生まれているのかを掘り下げます。

欅坂46在籍時代から、衣装・グラフィック制作を行うクリエイティブ系アイドルとして注目を集めていた佐藤さん。

卒業した現在では、DEAN FUJIOKAさんの「Runaway」のMVにダンサーとして出演、クリエイターとして個展を開催しコロナ禍で完全予約制でありながら450を超える人を動員するなど、表現者としてさらなる躍進を続けています。

「アートブックコレクション 佐藤詩織 旅のしおり」
©️Qwajima Tomoki ©️SHOGAKUKAN
「アートブックコレクション-佐藤詩織-旅のしおり」
『月刊 佐藤詩織・旅』
©️Qwajima Tomoki ©️SHOGAKUKAN
「月刊 佐藤詩織・旅」

写真集とアートブックについての裏話

そんな彼女が中国・四国地方を旅しながら制作した1stソロ写真集『月刊 佐藤詩織・旅』、そして、その旅の中で彼女自身が感じたものを文章やイラストとして表現した作品が収録された『アートブックコレクション 佐藤詩織』。

前者、彼女にとって初のソロ写真集はロードマップ的に制作されていて、「決められたロケ地をただ回るのではなく、まさに旅そのもののようだった」と彼女は言います。

「ただただ、カメラマンさんと旅をしているイメージでしたね。このお話をいただいたときは25歳になる誕生日の2カ月くらい前だったので、24歳の自分と25歳の自分、旅をしながらその両方の自分の表情を『ぜひ、写真に収めて欲しい』とお願いしました。初めていく中国・四国地方を電車を乗り継いで移動して、その土地土地で食べるものも決めていく…。本当に撮影というよりも、旅行という感じでしたね。だからこそ、歳が移り変わっていく今の自分を自然体なカタチで写真におさめてもらうことができたし、その道中で感じたままを表現した作品を生み出すこともできました」

歳の移り変わりを残していく。そんな目的の中で彼女は、「もうひとつの目的があった」と笑顔で語ってくれました。

「私自身、食べ物の中で一番好きなのがカニなんです。今回旅で訪れた鳥取はカニが有名だと聞いたので、それを食べることをゴールにしようということになったんです。ただ昨年は漁がうまくいっていなくて、『カニが食べれないかもしれない』ということで、ちょっと気を落としかけていたんです。でも、最終的にスタッフさんたちがなんとかカニを見つけてくれて、それにありつけたときが一番いい表情をしていますね。『月刊 佐藤詩織 カニ』といってもいいほどです(笑)」と、当時を振り返って満面の笑みを浮かべる詩織さん。

『月刊 佐藤詩織・旅』
©️Qwajima Tomoki ©️SHOGAKUKAN
『月刊 佐藤詩織・旅』に掲載されている、カニにようやくたどり着けた瞬間。

そこで、「では、皆さんに一番見てほしいのはやはりカニの場面ですか?」と訊いてみると、「カニもそうですが、やはり私の中で一番印象的であったのが鳥取砂丘での撮影です」と話します。その話どおり、「アートブックコレクション 佐藤詩織」の裏表紙には、鳥取砂丘で開放的なポーズをとる詩織さんの写真が使用されています。

「砂丘に足を踏み入れた瞬間、砂に足が飲み込まれていく感覚と、足跡が少しの風でなくなっていく感じ…。とても芸術的でした。東京で過ごしてるとあまりこういった感覚になる場所がないので、『こんな場所が日本にもあるんだ』と感動した瞬間の感触をいまでも鮮明に覚えてます。そこでは、心が開放的になりましたね。そのときおさめた1枚はまさに空を飛んでいるような、絵画のような作品になっています。写真集を撮るときもただ撮るのではなく、それぞれが一つの作品のような写真にしたかったので、まさにその思いがカタチとなった私のお気に入りの1枚でもあります!」

佐藤 詩織 インタビュー マルチクリエイターとしてのロードマップ
Cedric Diradourian
パーカ 17万9300円、ドレス 16万3900円(ともにトッズ/トッズ・ジャパン TEL 0120-102-578) イヤリング 7万4000円、右手人差し指リング6万6000円、中指リング8万6000円、左手リング 8万4000円(すべてシャルロット シェネ/エドストローム オフィス TEL 03-6427-5901) サンダル 11万5500円(ジミー チュウ/TEL 0120-013-700)

インスピレーション源と
そのプロセス

「目と耳と鼻と…五感でなにかを感じれる場所に趣き、そこで生まれた感情から作品が生まれます」と話す詩織さん。今回の旅で彼女がその場で感じたものから、半ば即興的に作品制作を行ったそうです。

ですがこれは、「クリエイターなら誰もができる…」というものでもないはず。そこで、「今回の旅で訪れた場所で景色や音、食べ物、さまざまなものを五感で感じ、作品制作をした」と語る彼女のアイデアやインスピレーションに関して、果たしてどのようなプロセスを経て作品へと具現化していったのか? その疑問を投げかけてみました。

「作品をつくるときは頭で考えるのではなく、目と耳と鼻と…五感で感じることができる場所へ行って、何かものを見ることを大切にしてます。いくら考えても自分の中で出ないなってときがありますので。そのときのテーマとなる土地に自分で足運んでカメラを持って歩きながらいろいろな風景をみてみたり、どんな映画を上映しているのかわからない映画館へ足を運んでみたり。そうしてそのときに感じた感情で、作品が生まれることが多いんです。新しいものや場所に触れることを、すごく大切にしているんですよ」

佐藤 詩織 インタビュー マルチクリエイターとしてのロードマップ
Cedric Diradourian

アイデアの根源は感覚でありながら、それをろ過し、ダンスやグラフィックなどの作品へと昇華する過程にも、彼女なりのプロセスがあることを教えてれました。

「表現したいものが決まっても、手が動かない。そんなときは実際に、美術館などを訪れてさまざまな作品に触れるんです。そしてそこで感じたものを一度持ち帰って、『この人はこういった表現をしていたけど…じゃ、自分ならどうやって? 何を伝えるべきだろう?』って考えてから制作を始めるんです。ただただ、自分の頭だけで考えても答えは出ないので、さまざまなクリエイターの"どうやってカタチにしているのか?"、そのプロセスを見た上でどうするか自分に問いかけることことで、感覚として得たことやそのときに浮上してきた感情を、作品へと具現化していくんです」

インプットの時間を大切にし、常に感じ常に学ぶことに対してどん欲な彼女自身の姿勢によって、表現の枠にとらわれないアウトプット=作品が生み出されるのでしょう。

佐藤 詩織 インタビュー マルチクリエイターとしてのロードマップ
Cedric Diradourian
佐藤 詩織 インタビュー マルチクリエイターとしてのロードマップ
Cedric Diradourian

今一番取り組んでいること。制作について

2021年にYouTubeチャンネル、『SHIORism』を開設した彼女。さらなる表現の幅を広げ、現在ではYouTube Liveにてライブペインティングを行っています。その中で、よく質問されることがあると言います。

「近頃、最も力を入れて取り組んでいるのがYouTube LIVEでライブペインティングなのですが、そこで『今何十%なの?』とか『いつ完成するの?』とかよく訊かれるんです」と話します。

「ただ、私もその答えは分からないんです。はじめから100%決めて描き始めているのではなくて、『こういうものを表現したい』ってなったら、20〜30%を決めて描き出すんです。その過程の中で、『ここはこうしよう』『ここにはこの色を入れよう』と臨機応変の心が動くまま決めていく…。そうしていくうちに、いつか終わりが来たって瞬間が訪れるので、そこで作品が完成するといった感じです。だから、私自身も終わりが分からないんですよね(笑)。ゴールを決めずにとにかく描き"進"める、そうして私の作品は完成します」

佐藤 詩織 インタビュー マルチクリエイターとしてのロードマップ
Cedric Diradourian

将来像

常に新たな表現を追求し進み続ける彼女は、どのような未来像を描いているのでしょうか? 最後に、彼女が描く未来像とその思いについてうかがいました。

「あるとき、それこそインプットするために、(アメリカ出身の現代美術家)寒川裕人さん率いるアーティストスタジオ『ユージーン・スタジオ』による現代美術館で行われていた展示会を観に行ったことがあったんです。そこで観たある作品の前で初めて、美術館で涙を流したんです。感動するというか、心が救われるような感覚で…」

「そこで寒川さんとお話したとき、『絵を観に来る人の精神状態や置かれてる状況は、同じではない。そして美術というのはひとつの作品であったとしても、それを観た人によっていろいろな受け取り方ができる。だからこそ、いろいろな寄り添い方ができる』というお話をしてくださいました。この概念が、すごく腑に落ちたんです」

「作品制作をするとき、『自分はこういうつもりで描いている』という作者なりのテーマがあるかもしれません。でも、それをあえて多くを語らない表現にして、"余白"をつくることよって、受け取る人自身によってさまざまな解釈ができるようにすれば、もしかしたらそれがその人をなにか救うきっかけになったり、なにか刺激を与えることができるかもしれない…そう思うんです。この先も、そういう心を動かすような作品を生み出し続けたいと思っています。今回の『月刊 佐藤詩織・旅』『アートブックコレクション 佐藤詩織』を読んだ人も、そうなってくれれば良いですね」

『月刊 佐藤詩織・旅』を購入する

『アートブックコレクション 佐藤詩織』を購入する

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
佐藤詩織がサイコロゲーム「Dice Chat」に挑戦!欅坂46への想いや、未公開作品などを披露| Esquire Japan
佐藤詩織がサイコロゲーム「Dice Chat」に挑戦!欅坂46への想いや、未公開作品などを披露| Esquire Japan thumnail
Watch onWatch on YouTube

Model / Shiori Sato
Photograph / Cedric Diradourian
Video / Yohei Fujii
Video Edit / Marin Kanii
Stylist / Aika Kiyohara
Hair&Make / Raishirou Yokoyama(Yolken)
Text / Shane Saito
Edit / Mirei Uchihori