スニーカー、ローファー、鉄腕アトム風の赤いブーツ…。靴というものは、いかなる類のものであっても、装いに欠かせないものと言えるでしょう。特に外出する際は、言うまでもありません。しかし現在、子どもの頃に教えられた「靴を履く」というルールの一部が緩まり、「靴を履かない」という流れが起きているようなのです。

その兆候はまず、(最近は大抵ここですが…)SNSに出現しました。このちょっと不可解な行動の拡散源としては、SNSは納得のいくプラットフォームだと言えるでしょう。カルチャー&エンターテイメント誌『Cut』は、2021年、ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』の人気俳優ジェイコブ・エロルディがロサンゼルスで裸足で歩いている写真を発掘。確かにしっくりきていますが、「なぜ自分の偏平足ぶりを披露しなくてはならないのか?」「足は汚れないのか?」と疑問は尽きません。

しかしながら、この写真に5万以上の「いいね」がついていることから、ジェイコブ・エロルディの裸足のほうが、メットガラでのジャレッド・レトの猫の着ぐるみよりも多くの反応を得たということになります。猫の着ぐるみも同様に風変りですが、こちらのほうがなんとなく納得しやすいような気もします…。

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最近では、ショーン・メンデスの仲間内でも、裸足が浸透しているようです。「スムージー・スクワッド」と題されたツイッター上の画像では、ミュージシャンのマイク・サバスがクロップト丈の白Tシャツ、パジャマ風パンツ、ホログラムネイルを見せた素足で、ショーン・メンデスらと共にスムージーのカップを手に歩いています。

彼のインスタグラムをざっと見てみても、彼が靴を履かないことを裏づけるような証拠が見つかります(なんと、彼は足だけでなく上半身もほとんど裸なのですが、これはまた別の話です)。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

さて、こういった写真は、「最もL.A.的なトレンドを物語るもの」ということでしょうか? 確かに2人ともL.A.の住人です。彼らの魅力度の高さもその一因かもしれませんが、どうやら二人とも特に気が動転しているようには見えません。

架空の国「エレホン(S.バトラーの1872年刊の小説にタイトルかつ作中に登場する国で、タイトルは『Nowhere』を逆さにしたもの。この国では全てが現実の常識と反対になっている)」のような、俗人の理解を越えた方法なのかもしれません。ロンドンの自然派スーパー「プラネット・オーガニック」の買い物客も、裸足というのが当たり前になるのかもしれません。オーガニックスーパーで裸足で買い物をするというのは、まさに地球に根差した方法としての、ウェルネスとファッションの合体(裸足なのでファッションではない気もしますが…)と見ることもできますので…。

この流れは、ビジネス界の大物にも来ているようです。HBOドラマ『メディア王〜華麗なる一族〜』の最新エピソードでは、ルーカス・マトソン(アレクサンダー・スカルスガルド)がプライベートジェットから、メディア創業者ローガン・ロイの長女シヴォーン・ロイ(サラ・スヌーク)の家まで、スリッパもサンダルも履かずに歩いていました。映画『AIR/エア』でも主演・プロデューサーのベン・アフレックは、「エア ジョーダン」も履かず、机の上に足を載せています。

足の指を見せることは、優位性を主張する確実な方法のようです。つまり、「裸足」がパワースーツ(高価な生地を使い、角張ったデザインのスーツ。自身の成功や有能さをアピールするもの)に代わるビジネススタイルなのでしょう。誰も、不用意につま先を出すことができるほど自信のある人と揉めたくはないでしょうから…。万が一、現実の企業社会でそのような場面に出くわした場合は、ぜひとも慎重に行動しましょう。

air michael jordan feet nike ben affleck
Warner Bros.

スムージーを味わうオフのセレブミュージシャンと、金儲けに目がないCEO。両者は全く異なるように見えて、ドレスダウン志向では共通しています。厳格なデザインコードは避け、「そんなこと知るか!」といった精神で、フォーマルでもカジュアルの場でも臆することなく快適さを優先するのが彼らなのです。

彼らに恥ずかしさや照れはありません。パンデミック後の世界の流行に、あえて反抗しているだけなのです。彼らは「クワイエットラグジュアリー(静かで主張しないラグジュアリー)」の次のトレンドなど気にしておらず、ただ制約や先入観なしに足の指を自由に開放したいのでしょう。

考えてみれば、それは私たち皆に当てはまることかもしれません。ファッションや社会的な規範に逆らうことは、とても新鮮に感じられます。特にここ数年は、通常であることが難しかったことも背景としてあるでしょう。だからこそ私たちは、標準的な靴に別れを告げ、足の自由を歓迎するのかもしれません。

現実的な話をすると、ロンドンの舗道は裸足で安全に移動できるほど整備されていません。日本でも、すべての道路を裸足で歩くというのは難しいでしょう。それなら、裸足気分を味わえるナイスな靴を入手してみてはいかがでしょうか。

例えば、ビルケンシュトックの人気モデル「ボストン」なら、裸足のように快適です。また、太陽の光を素肌で感じたいなら、ブルネロ・クチネリのビーチサンダルが最適でしょう。裸足ほどのインパクトはありませんが、傷ができて病気にならず、また、そのための予防接種を受けずに済むというメリットはあります。

source / ESQUIRE UK
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です