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日本メンズヘルス医学会による一部監修記事

今回の記事を作成するにあたり社団法人「日本メンズヘルス医学会」に、監修協力をお願いしました。「日本メンズヘルス医学会」とは、男性医学を専門とする医師が集う医学会であり、主に男性ホルモンが関係する疾患(男性更年期、LOH症候群、男性性機能低下症など)を臨床研究し、男性の健康医学の確立・発展に貢献する学会です。


風邪やウイルス…アレルギーによる鼻づまりとの格闘の末、長く苦しい一日がやっと終わり、ようやくベッドに横になることができました。ですがその途端、再び鼻づまりがひどくなる…。

これにはれっきとした理由があるようです。そして、夜間の鼻づまりを改善する効果が期待ができる方法も紹介していきます。

なぜ夜になると鼻づまりがひどくなるのか?

鼻水に対しては、重力があなたの味方となってくれます。日中の活動時間であれば、例えば風邪による鼻づまりが起きても、鼻水は重力に従って下方へと流れ、鼻の穴から排出されます。

とは言え、「もちろん、重力で鼻汁がたまってくるということもありますが、健常鼻では鼻汁分泌による鼻閉(びへい=鼻づまり)よりも、鼻粘膜(下甲介粘膜)の腫脹(しゅちょう=炎症などが原因で、身体の組織や器官の一部に血液成分が溜まってはれ上がること)による鼻閉のほうが生じやすい場合もあります。その理由として挙げられるのが、【1】仰臥位(ぎょうがい=仰向けに横たわっている体位)による鼻粘膜への血流増加による鼻粘膜腫脹2】寝るときは副交感神経が優位となり鼻粘膜が腫脹しいやすくなる、という点です」と加えて説明するのは、「日本メンズヘルス医学会」です。

ですがベッドに横になってしまえばもう、重力も役には立ちません。(ハーバード大学医学部で2番目に大きな教育病院であり)マサチューセッツ州ボストンに位置する病院「ブリガム & ウィメンズホスピタル」でアレルギーの専門医を務めるラキア・ライト医学博士も、「仰向けの姿勢になれば、鼻づまりは必然的に起こります」と説明します。

さらに悪いことには、アレルギーや風邪の症状を引き起こす微生物やウイルスなどと闘う体内の炎症性物質の動きも鈍り、うまく働くなってしまうと言うのです。「鼻づまりのために、道路渋滞が起きているような状況を思い浮かべてみてください」と、ライト博士は言います。

まずは、鼻づまりの原因を突き止めることが、楽な呼吸を取り戻すのに役立ちます。原因さえはっきりしてしまえば、適切な処置や服用すべき薬も自ずと分かります。「ノコギリが必要な場面で、トンカチを持ち出しても無意味だ」と言えば分かりやすいかもしれません。

夜間の鼻づまりの原因が「アレルギー」によるものである場合の対処法

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Olga Siletskaya//Getty Images

《原因は?》

もしあなたにアレルギーがある場合、鼻にとって特に苦しい時間となってしまうのが夜間になるでしょう。

「夜になると体内の『マスト細胞(mast cells=アレルギー反応を引き起こすIgE抗体(免疫グロブリン)の受容体。「肥満細胞」とも呼ばれる)』の働きがとても活発になり、ヒスタミンを放射しはじめるのです」と、ライト博士は解説します。

  • ヒスタミン(histamine)とは? …主に肥満細胞に貯えられ、刺激に応じて放出されアレルギー反応に関与します。このヒスタミンは食物から直接体内に取り込まれるほか、生体内でも合成されます。

つまりこれは、アレルギーの原因となる抗原(原因物質)である「アレルゲン(allergen)」を除去しようとする、体内の働きによって起こる現象なのです。そして、このヒスタミンが粘液を生成することで、すでに起きている鼻づまりを助長(悪化)させることがあるというのです。

《効果的な改善方法・対処方法は?》

アレルギーのケアさえ適切に行なえば、夜間に鼻が詰まることも無くなるはずです。当然のことながら、まずは医師の診察を受け、アレルギーの原因を正確に把握することが肝心となります。

そうすることで…

  1. アレルゲンの影響を最小化することが期待できます。アレルギーの原因が花粉であれば、花粉の多い時期には窓を閉め切るなど対処が可能になります。花粉の舞い散る季節であれば帰宅後にはすぐにシャワーを浴び、着替えるのも役立ちます。「環境を改善するためにできることは数多くあります」と、ライト博士は説明します。
  2. OTC医薬品(=医師に処方してもらう「医療用医薬品」ではなく、薬局やドラッグストアなどで自分で選んで買える「要指導医薬品」と「一般用医薬品」を指す。OTC=Over The Counter の頭文字)」を検討することも役立つでしょう。

    一般用医薬品を服用することで、アレルギー症状を抑え、夜間の鼻づまりを解消できる可能性もあります(花粉症の薬の場合、市販内服薬のおすすめはコチラ)。

    「抗ヒスタミン薬(クラリチンやジルテック、アレグラ、アレロックなどご存じの人も多いでしょう)や、鼻腔用ステロイド(フロナース、ナサコートなど)が役に立つかもしれません。鼻腔用ステロイドを用いる際は、効果を実感するまでに数日から1週間ほどかかる場合もあることを予め知っておきましょう。場合によってはりょうほうの、両方の薬を服用することもあり得ます」と、ライト博士は説明してくれました。

夜間の鼻づまりの原因が「風邪やインフルエンザ」によるものである場合の対処法

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RyanKing999//Getty Images

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)薬学部の臨床薬学科准教授クリスタル・シュウ薬学博士によれば、病気を患うと鼻腔内の血管が通常よりも膨張するため、充血除去薬(=上気道感染症による鼻詰まりを改善する医薬品)で血管を収縮させることで効果を期待できるそうです。

《充血除去薬を使用する際の注意点》

ただし留意点として、「充血除去薬は鼻づまりだけに効くわけではなく、体内の血管を全体的に収縮させてしまう可能性もあり、そのことで高血圧が引き起こされる場合もあります」と、シュウ博士は注意を促します。つまり、心臓血管などの基礎疾患がある場合には、充血除去薬の服用には危険が伴うというのです。まずは、「“非全身性(全身の臓器に多彩な症状を引き起こさない)”の処置で夜間の鼻づまりを軽減させるべきだ」ということです。

《日本人医師による見解と警鐘》

シュウ博士の充血除去薬を使用する際の注意喚起について、「日本メンズヘルス医学会」も同意見です。加えて、「下記(本記事後半)に鼻づまりに対処方法として説明されている、『プソイドエフェドリン』と『フェニレフリン』は、確かに薬局で購入可能ですが、耳鼻科医としては極力使用を避けて欲しい点鼻薬でもあります。もちろん、重症のアレルギー性鼻炎などによる鼻閉には処方することもあります。ですが、頻回な長期的な使用は避けてほしいと考えています。頻回に使用するほど効果持続が短縮、かつ鼻粘膜が反跳現象はんちょうげんしょう=薬を投与する前にあったもともとの症状が薬を減量・中止することによって投与前よりも強く現れてしまうこと)のように、これまで以上に腫脹して、鼻閉が遷延(せんえん=はかどらず長引くこと)する『薬剤性鼻炎』を呈してしまう可能性があります」。

「日本メンズヘルス医学会」は加えて、「なお『薬剤性鼻炎』の治療は血管収縮剤の休薬と、代わりに噴霧型ステロイド点鼻薬を処方します」と説明します。

薬を用いずに鼻づまりに対処する簡易的な4つの方法

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  1. 「頭を高くする」
    …枕やクッションを利用して、少し頭上を高くするのも有効的で、状況が好転する場合があります。
  2. 「水分補給を行う」
    …「鼻の中が過剰に潤っているのに、『さらに水分を摂って問題はないのでしょうか?』と心配する人も少なくありません。ですが、鼻をふさいでいるのは粘液であり、水分補給を行うことでそれを薄めることが期待できるのです」と、シュウ博士は説明します。
  3. 「生理食塩水の鼻腔スプレーも試す価値があります」

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    …例えば「点鼻薬」には、抗炎症作用が期待できるものもあります。一日に数回、また就寝前に鼻に吹きかけることで、鼻づまりの症状がいくらか解消されるかもしれません。「これが良く効くという人はいます」とシュウ博士。しかしながら、万人に効くというわけではないようです
  4. 「鼻腔洗浄を試してみるのも良いでしょう」

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    …生理食塩水の鼻腔洗浄機が市販されています。鼻腔スプレーが局所的に効くのに対し、「生理食塩水の鼻腔洗浄は鼻孔全体をキレイにするのに役立ちます」とシュウ博士。また、「成分のナトリウムは鼻腔内の液体よりも若干濃度が高くなっており、それが粘液の除去に役立つ」とのこと。その粘液こそが、不快の原因に他ならないのです。

充血除去薬をお探しなら

「充血除去薬の服用を避けるべき健康上の問題を抱えていない」ということであれば、薬局の棚の前で頭を悩ます必要はありません。

「市販の充血除去薬には大きく2種類があり、どちらも血管を収縮させる効果が期待できる」と、シュウ博士は言います。

  • プソイドエフェドリン(Pseudoephedrine=内服用の鼻づまり薬として広く用いられている医薬品)」であれば、購入の際に薬剤師による処方が必要となります。その理由は、クリスタルメス(=ドラッグの一種)の製造に用いられる場合があるため、大量購入できないようになっているのです。

    「プソイドエフェドリン には鼻腔内の血管を収縮させるだけでなく、肺の働きを活発にする作用があるとされています。つまり、呼吸を助ける2種類の作用が期待できるということです」とシュウ博士は言います。
  • フェニレフリン(Phenylephrine=血管を収縮させる働きをし、充血や腫れを抑え、鼻づまりに効果が期待できます)」であれば、薬局の棚に並んでいます。充血除去薬として一般的な薬品ですが、肺に働きかける作用はないと言っていいでしょう。

《注意点と副作用》

これらの薬品には、興奮剤としての性質があることも知っておかなければなりません。そのため、夜間の服用を必要とする薬の場合には、睡眠を促す成分が含まれている場合もあります。

「就寝時の鎮静作用を避けたい、もしくは必要としないという人であれば、日中の早い時間に服用する方法を試すのも良いかもしれません」と、シュウ博士はアドバイスします。「就寝時間の11~12時間前に、12時間分の効果を期待できるだけの量を服用するという裏技です。それなら夜まで効き目が保たれることが期待できますし、うまくいけば鼻づまりで目が覚めてしまうという事態も避けることができるかもしれません」。

混合薬(風邪薬)の使用は「鼻づまり」に効果的ですか?

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頭痛、咳、鼻づまりに効くと謳(うた)われているような風邪薬のことです。「もしすべての症状があるという場合には、混合薬…風邪薬は役立つことでしょう」と、シュウ博士。「しかし風邪薬に関して言えば、成分が多いから良いというものではないようです。必要な成分だけを服用し、鼻の通りを楽にしたほうが良い場合もあります」とのこと。

まとめ

最後に、「日本メンズヘルス医学会」からOTC医薬品(医師の処方箋がなく薬局などで購入できる市販薬)以外の薬についても言及してもらいました。

「必要な成分だけを服用し、鼻の通りを楽にしたほうが良いという考えには同意見です。総合感冒薬内の抗ヒスタミン(多くは第一世代)による催眠効果は鎮静作用によるもので、眠りの質自体を改善しないので、混合薬の使用は睡眠の観点からは推奨されていません。鼻づまりの原因にもよりますが、アレルギー性鼻炎の場合は鼻閉改善薬(第二世代抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻)、急性鼻炎の場合はカルボシステイン、状況により抗生剤を投薬することが多いです」。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。