[INDEX]

▼ 腹部膨満の原因は?

▼ 対策①:食生活を見直す

▼ 対策②:食物繊維を多く摂る

▼ 対策③:薬やサプリメントは成分に注意

▼ 対策④:炭酸飲料を控える

▼ 対策⑤:運動習慣をつける

▼ 対策⑥:ヨガのポーズをとってみる

▼ 対策⑦:横隔膜呼吸(腹式呼吸)

▼ 対策⑧:食べ過ぎや早食いに気を付ける

▼ 対策⑨:禁煙する

▼ 対策⑩:ガムを遠ざける

▼ 対策⑪:ホメオパシー療法を試す

▼ 医師による診察を受けるべきかの判断は?


腹部の膨満感(ぼうまんかん)を抑える方法を専門家が解説。場合によっては、医療の助けも必要かもしれません。

おなかにガスが充満しているように感じたり、腹部が張って苦しくなったりしたら、腹部膨満を疑うべきかもしれません。不快感を超えて痛みを伴う場合には、ズボンのボタンを留めたくないと感じる日だってあるでしょう。

ジョンズ・ホプキンス・メディシン(*1:※編集注:ジョンズ・ホプキンス医大の専門家たちによって組織される医療システムの総称)によると、「腹部膨満は通常、おなかのガスだまりや便秘によって引き起こされる」と言います。

アメリカの消化器学と肝臓病学の医療専門誌『Clinical Gastroenterology and Hepatology(クリニカル・ガストロエンテロジー・アンド・ヘパトロジー)』が2023年に掲載した研究論文(*2)によると、アメリカ人の7人に1人が日常的な膨満感に悩まされているにも関わらず、医療機関を頼る人はごく少数に過ぎないことが分かっています。日本に関しては、製薬会社が2019年に20代から60代までの全国の一般男女1000人(男性500人:女性500人)を対象に行った「おなかケア」に関するアンケート調査によれば、「男性は16.8%」「女性は27.2%」が日常的に腹部膨満感」を感じているという結果(*3)になっています。

ニュージャージー・ガストロエンテロジー・アソシエイツの消化器専門医であるカマル・アマー博士(*4)によれば、「(アメリカの場合)腹部膨満感を訴える女性は、男性の2倍に上ります」とのこと。とは言え、男性だからといって油断は禁物です。

「腹部膨満の男性を診ることも、決して少なくありません」と、アマー博士も言っています。患者に対してまず行うのは、「食生活のアドバイス」と博士は言います。それは、食物アレルギーや食物不耐性(※編集注:食品を完全に消化できない状態のこと)が便秘症状や腹部膨満の原因であることも珍しくないからです。

また、「常用しているサプリメントや医薬品の種類、さらには運動習慣、食生活、喫煙の有無など、生活全般について患者と話し合うことになる」と、アマー博士は語っています。

「当然のことながら消化器系に異常がないか確認しますし、また感染症や炎症といった、より深刻な原因についても調べます」とアマー博士は言います。つまり、日常的に腹部に張りを感じていて、それが改善しないという人の場合には、医師の診察を受けるべきだということです。

腹部膨満の原因は多岐にわたり、その対処法もさまざまです。そこでここでは、腹部膨満の原因やその対処法を見ていきましょう。

腹部膨満の原因は?

膨満感の二大要因は、“ガス溜”まりと“便秘”です。

クリーブランド・クリニック(*5)によると、ガスの発生は消化にともなう自然な現象です。ですが、腸内細菌が炭水化物を消化する際(いわゆる発酵を伴います)、過剰なガスが発生してしまうことがあります。

male reading magazine on toilet
Jordan Siemens//Getty Images

発酵が過剰に起きてしまうのは、食べた炭水化物の大半が十分に消化されないまま腸内細菌の餌になっていることが考えられます。早食いや食物不耐性、さらに消化器系疾患が関係しているのかもしれません。いずれもガス溜まりを引き起こし、膨満感を高めることになるのです。

一方で便秘の状態では、消化管の中で内容物の逆流が起き、ガスが通過する隙間がほとんどなくなってしまうというケースもあります。さらに運動障害がある場合にも、食べた物が消化器官を通過するスピードが遅くなり、これも便秘やガスや腹部膨満の原因にもなると考えられています。

このように腹部膨満感(およびガスや便秘)は食生活、生活習慣、服用している薬などに関係して起こる可能性が高いのです。 そして腹部膨満感は、ときに痛みや不快感を伴います。幸運なことに、その状態を緩和するための方法があるので、ここで覚えておきましょう。

対策①:
食生活を見直す

「膨満感に大きな影響を及ぼすのが食事です」と、アマー博士は強調します。グルテン不耐症や乳糖不耐症、果糖不耐症を持つ人であれば特に注意が必要です。

a man using a digital tablet for shopping
Jordan Siemens//Getty Images

乳製品、小麦、オーツ麦、そしてリンゴやアプリコットといった果物など、消化の妨げとなる成分が含まれる食品によって、下痢や便秘や腹部膨満感が起きることがあります。カリフラワー、ブロッコリー、芽キャベツなどのアブラナ科の野菜も消化に時間がかかり、ガス溜まりの生じる原因になる可能性は高いです。

「豆類や揚げ物なども原因になる」と、アマー博士は加えて指摘します。

上に挙げた食品の多くにFODMAP(オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)(※編集注:FODMAPとは、Fermentable Oligosaccharides, Disaccharides, Monosaccharides, and Polyolsの頭文字。「オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールなど発酵性の糖類」の略称で、日本語表記は「フォドマップ」とも)と呼ばれる、小腸内で消化・吸収されにくい短鎖炭水化物が含まれています。

乳製品や小麦、豆類、特定の果物類や野菜類を避ける「低FODMAP食」が解決の糸口となる場合もあるものの、「実行するのはなかなか大変だ」とアマー博士は述べています。

アメリカ栄養士会の栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics)でスポークスマンを務めるキャロライン・スージー氏(*6)は、「膨満感の原因となる食品の特定のためには、食後の状態も記録した食事日記を医師に見せるのが望ましい」と述べています。

対策②:
食物繊維を多く摂(と)る

消化を助け、便秘や腹部膨満感の予防に役立つのが食物繊維です。成人男性なら1日あたり38グラムほどの食物繊維が必要とされていますが、十分な量を摂取している人はほとんどいないのが実情のようです。

woman takes fresh organic vegetables
Maria Korneeva//Getty Images

「全粒穀物や新鮮な果物・野菜を意識して食べることで、食物繊維の摂取量を増やせる」と、スージー氏は指摘しています。ですが、そのような食事に身体を慣らすには、時間が必要です。急ぎ過ぎると、かえって食物繊維のせいで腹部膨満感が増してしまうこともあるからです。

「少しずつ摂取量を増やし、胃もたれを避けるために水分摂取量も増やしましょう」とスージー氏。それは水分を吸った食物繊維が便を柔らかくし、消化を安定させるからです。

「食物繊維のサプリメントも役に立つでことしょう」と、アマー博士は言います。サプリメントに頼る場合には、サイリウムハスク(※編集注:インド原産のオオバコ科ブロンドサイリウムの種子外皮のことで、成分の約90%が食物繊維)やメチルセルロース(※編集注:セルロースを化学修飾することによって合成される、セルロースの誘導体)を含むものを選んで、少量ずつ摂取するようにするのがおすすめです。

なぜなら、食物繊維のサプリメントを摂り過ぎることで、かえって膨満感や不快感が増してしまうこともあるからです。

対策③:
薬やサプリメントは成分に注意

「抗生物質、鉄剤、鎮痛剤(特にオピオイド系)といった薬品は、腹部膨満感や便秘の原因になることがある」と、アマー博士は注意を促します。副作用の疑いを感じたら、医師に相談してください。処方を変えてもらうべきタイミングかもしれません。

サプリメントには注意する必要があります。食物繊維のサプリメントだけではなく、プロテインパウダーにもラクトース(乳糖)や人工甘味料が含まれていることが多々あります。また、クレアチンによって膨満感が引き起こさてしまうこともあります。

プロバイオティクスのサプリメントも種類によっては、腹部膨満感を誘発するものがあります。なので低用量から服用し、少しずつ増量してくのが良いでしょう。

対策④:
炭酸飲料を控える

水を十分に飲むことは消化器系にとって重要で、便秘予防にもつながります。ただし、「水分なら何でも良い」という話ではありません。「ソーダ類やビールといった炭酸飲料には二酸化炭素が含まれているため、ガスの発生や膨満感を高める要因になる可能性がある」と、アマー博士は述べています。

対策⑤:
運動習慣をつける

エクササイズは腸の活性化を促します。つまり、「運動によって食べた物が通過する消化器官の能力が高まり、余分なガスや便の排出に役立つ」と、スージー氏は言っています。ウオーキングの習慣をつけるなど、活動量を全面的に増やすことで腹部膨満感が解消されるのです。

対策⑥:
ヨガのポーズをとってみる

meditation is hanging out with your soul
ljubaphoto//Getty Images

「消化器系の活性化には、ヨガも役立つ」と、スージー氏は言います。「チャイルドポーズ」(正座のまま上半身を前に倒しリラックスするポーズ)や「ハッピーベビーのポーズ」(あおむけに寝て両膝を曲げて胸の方へ近づけ、足裏を手でつかむポーズ)といったポーズをとることで余分なガスが排出され、腹部膨満感から解放されることが期待できます。

対策⑦:
横隔膜呼吸(腹式呼吸)

「横隔膜呼吸、あるいは腹式呼吸をすることで、腹部膨満感が楽になる可能性がある」と、アマー博士は説明します。横隔膜を動かすことで胃腸が「優しくマッサージされる」ような状態になり、その効果として副交感神経系が活性化されるというのがアマー博士の考えです。この状態はミシガン大学保健学部(*7)によると、「身体のリラックス反応の一つ」と言います。

横隔膜呼吸のやり方:
  1. 座るか、もしくはあおむけになって、目を閉じます。
  2. 片手を胸に当て、もう片手を腹部に当てます。
  3. 4秒間、鼻から息を吸い込みます。腹部に当てた手は動きますが、胸に当てた手は動いていないはず。
  4. そのまま数秒間、息を止めます。
  5. 6秒数えながら、口からゆっくり息を吐きます。
  6. この呼吸法を最大15分ほど繰り返しましょう。

対策⑧:
食べ過ぎや早食いに気をつける

「過食や早食いをすることで余分な空気が体内に取り込まれ、それがガス溜まりや腹部膨満感を増幅させる」と、アマー博士は指摘しています。「過食を避けるためには一食あたりの量を減らして食事の回数を増やし、ゆっくりよくかんで食べるようにする」というのが博士からのアドバイスです。

対策⑨:
禁煙する

禁煙によってもたらされる健康効果は少なくありません。腹部膨満感の軽減も期待できる可能性があります。「喫煙すると空気を吸い込むことになり、それが腹部膨満感につながるのです」と、アマー博士は指摘します。

対策⑩:
ガムを遠ざける

ガムの大半に含まれている人工甘味料は、糖アルコール(*8)が入っています。「個人差はありますが、この糖アルコールが腹部膨満感を増幅させる可能性がある」と、アマー博士は指摘しています。ガムをかむという行為によって余分な空気を吸い込み、膨満感を引き起こす可能性が高まるためです。

対策⑪:
ホメオパシー療法(*9)を試す

「自然療法の中には、腹部膨満感に効果があるものもある」と、スージー氏は言います。例えばペパーミントには、腸の筋肉をリラックスさせる効果があるためガスや便の排出が促進されます。ただし、「逆流性食道炎がある場合には、ペパーミントによって症状が悪化してしまう可能性があるため避けるべきだ」とスージー氏は注意を促します。カモミールショウガにも効果が認められていますので、成分として加えられているお茶を飲むのも試す価値はあるでしょう。

医師による診察を
受けるべきかの判断は?

もし腹部膨満感が続くようなら、それは深刻な病状の兆候という可能性があります。そのような場合には、「医師の診察を受けることが重要」とアマー博士は注意喚起します。

例えば感染症、小腸内細菌異常増殖症(*10:SIBO)、グルテンや乳糖の不耐症、炎症性腸疾患(※編集注:ヒトの免疫機構が異常をきたし、自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃してしまうことで腸に炎症を起こす病気)、過敏性腸症候群(※編集注:大腸に腫瘍や炎症といった病気がないにもかかわらず、腹痛や腹部の張りなどの違和感、便通の異常が数か月以上にわたって続く状態のこと)といった疾患の兆しかもしれません。

「膨満感に加え、体重減少、下痢、血便、腹痛、発熱などの症状が伴う場合には、必ず医師の診察を受けるべきです」と、アマー博士は念を押しています。


[脚注]

*1:Bloating: Causes and Prevention Tips

*2:Abdominal Bloating in the United States: Results of a Survey of 88,795 Americans Examining Prevalence and Healthcare Seeking

*3:ビオフェルミン製薬株式会社による調査で、PR TIMESに掲載したアンケート調査結果を参照

*4:GANJ GASTROENTEROLOGY ASSOCIATES OF NEW JERSEY

*5:Cleveland Clinic Bloated Stomach

*6:Academy of Nutrition and Dietetics

*7:University of Michigan:What is Diaphragmatic Breathing for GI Patients?

*8:sugar alcohol 低カロリーやゼロカロリーの甘味料。もともと天然にあるものを合成してつくるという点で、「合成甘味料」というのは間違いとなります。「グルコース」と「ソルビトール」、またはそれを合わせた「マルチトール」などがそれに当たる。詳しくは、精糖工業会公式サイト内の「主な甘味料と分類」を参照

*9:日本学術会議(2010年8月)において、「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されている」との会長談話が出されている。

*10:オンライン医学事典MSDマニュアルの『家庭版』内の解説ページを参照


Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US