2019年2月27日(米国時間)はドナルド・トランプ大統領にとって、本当に重要な日でした。彼は米国大統領というわけで、毎日がもちろん非常に重要な日であるわけですが…彼の元弁護士で「フィクサー」であったマイケル・コーエン氏が、議会で証言をしたのがこの日だったのです。

そしてこの証言は、トランプ大統領にとって極めて危険なものでした。

「ニューヨーク・タイムズ」紙は、ホワイトハウス監視委員会のためにコーエン氏が準備した証言を入手。この中には、確実に多くの衝撃的暴露が含まれていました。

トランプ大統領はツイッター上で、コーエン氏を非難。

「刑期を短縮するために嘘をついている」とし、「虚言と詐欺を理由に最高裁から弁護士資格を剥奪されたところだ」と言及しました。ただし、このコーエン氏の虚言や詐欺の多くが、自らの代理人として行われたものであったことについては触れませんでした。

以下に、最も注目すべきコーエン氏の告発の数々を紹介します。

1. トランプ大統領は、「ウィキリークス」がヒラリー・クリントン氏のEメールを公開することを事前に知っていた

2016年7月の民主党全国大会の数日前、ロジャー・ストーン氏(トランプ陣営の元顧問)がトランプ氏のオフィスに電話をしたとき、コーエン氏はその場にいたと言います。

「トランプ氏はスピーカーフォンで電話に出ました。ストーン氏は、『ちょうど今ジュリアン・アサンジ(ウィキリークスの編集長)と電話を切ったところです』とし、『アサンジは数日以内に、ヒラリー・クリントンの選挙運動に打撃を与える大量のメールが暴露されると語っていました』とトランプ氏に伝えました。トランプ氏はそれに対し、『それは最高じゃないか』といった趣旨のことを言いました」と、コーエン氏は明らかにしていました。

2. モスクワのトランプタワー計画は、選挙期間中も進められていた

「トランプ氏がロシアでのモスクワ・タワー・プロジェクトの交渉を中止した時期について、私は議会に嘘をつきました」とコーエン氏は話します。

「私は2016年1月に交渉をやめたと証言しましたが、あれは嘘です。われわれの交渉はさらに数カ月、選挙期間中も続いていました。トランプ氏は私に、議会に嘘をつくよう直接命じたわけではありません。彼のやり方は、そういったものではありません。選挙期間中、私が彼のためにロシアで積極的に交渉を進めていたとき、彼は私の目を見て『ロシアでのビジネスなどない、米国民にもそう伝えるんだ』と言ったものでした。このようなやり方で、彼は私に嘘をつくよう命じていたのです」と、コーエン氏は明らかにしました。

3. トランプ氏のストーミー・ダニエルズへの口止め料は、コーエン氏が立て替えていた

コーエン氏は、(この立替金について)トランプ氏が大統領になってから11回の分割で支払いを受け、そのうちの1枚である3万5000ドル(約391万円)の小切手を証拠として提示しました。

「トランプ氏は自らが不倫をしたポルノスターへの口止め料を支払い、そのことについて、彼の妻に嘘をつくよう私に頼みました。私は彼に従いました」と、コーエン氏は話します。

「トランプ氏は私に、ホーム・エクォティ・ライン・オブ・クレディット(HELOC、住宅を担保にした与信枠)を使って私の個人的資金で支払うよう命じました。お金の流れを追跡され、選挙活動にネガティブな影響を与えることを避けるためです。私はその通りにしました。それが不適切なことか、正しいことか、あるいは自分自身や家族、国民にどんな影響を与えるかなど考えもしなかったんです」と、コーエン氏は続けて話しました。

4. コーエン氏に言わせれば、トランプ氏は「人種差別主義者」

コーエン氏は、人種差別問題に発展しかねないトランプ氏との会話について、次のように明かしました。「彼は一度『黒人が指導する”肥溜め(shithole)”でない国を挙げられるか?』と私に尋ねたことがあります。バラク・オバマ氏が米国大統領だったときのことです」と。

またトランプ氏の人種差別的発言は、これだけではありません。

「シカゴの困窮した地域をクルマで通過していたとき、彼は『こんな風に暮らすことができるのは黒人だけだ』と述べました。そして、『黒人はあまりにも愚かなので、自分に投票することは決してないだろう』とも言ったんです」と、コーエン氏は話します。

President Trump Speaks About Missle Defense Doctrine At The Pentagon
Pool//Getty Images

5. トランプ氏は自らの肖像画がオークションで一番高値になるように、入札者をでっち上げた

それだけではありません。コーエン氏によれば、トランプ氏は自らの慈善団体であるトランプ財団の資金を使って、虚栄心を満たそうとしたというのです。

「トランプ氏は、アート・ハンプトンズ・イベントでオークションにかけられる自らの肖像画を落札する架空の入札者を探すよう私に命じました。その目的は、オークションの最後に登場する自らの肖像画を、その午後に出るどの肖像画よりも高値にすることでした。この肖像画はフェイクの入札者により、6万ドル(約683万円)で落札されました。トランプ氏は慈善団体であるはずのトランプ財団に、このフェイク入札者に支払いをするよう命じました。肖像画自体は手元に持っていたにもかかわらずです」と、コーエン氏は話します。

6. トランプ氏は、スモールビジネスオーナーたちを平気で騙した

長年トランプ氏を見てきた人であれば、彼が「手抜きや取引先への不払いを正当なビジネスの手段とみなしていた」と聞いても、驚くことはないでしょう。

「何の驚きでもないことでしょうが、私がトランプ氏の命令で日常的にやっていたのは、多くがスモールビジネスのオーナーたちに電話をし、彼らのサービスへ対価について金額が減らされる…あるいは、まったく支払われないことを伝えることでした」と、コーエン氏は明かしました。

「トランプ氏にうまくいったことを報告すると、彼は大喜びしたものでした」と、コーエン氏は続けて話しました。

7. トランプ氏はベトナム徴兵を避けるために、あからさまな嘘をついた

トランプ氏は学生時代に徴兵猶予を4回受け、その後、ペンシルベニア大ウォートン校在学中には、スカッシュやアメフトを問題なくプレーしていたにもかかわらず、「骨棘(コツキョク=bone spur)」を理由に5回目の徴兵猶予を受けました。しかし、その実態は衝撃的なものでした。

「トランプ氏は、彼が健康上の理由からベトナム戦争の徴兵猶予を受けたことに関するネガティブな報道を処理するよう私に頼みました」と、コーエン氏は明かしました。

さらに、「トランプ氏は骨棘が原因であったと主張しましたが、その医療記録について尋ねると、彼は何も示さず『手術はなかった』と言いました。彼からはレポーターの具体的な質問には答えないよう命じられ、単に医療上の理由から徴兵猶予を受けたことを伝えるよう言われました。その会話の最後に彼は、次のようなことを言いました。『私がバカだと思うか? ベトナムになど行くものか』と」、コーエン氏は続けてそう明かしたのでした。

公正に言うなら、確かにベトナム戦争が馬鹿げていたことであったことは間違いないのですが。

8. トランプ氏は大統領選を広告戦略の一貫とみなしていた

トランプ氏にとっては、人種差別主義的発言やスモールビジネスオーナーへのひどい仕打ち、慈善団体の資金を自分の肖像画の価格を吊り上げるために使ったこと以外で、最も罪を免れない行いでしょう。

コーエン氏によれば、トランプ氏は偶然大統領になっただけで、出馬したのは単に自らのブランド力を高めたかったからだと言います。

「彼はこの国を偉大にするためではなく、自らのブランドを大きくするために大統領選に出馬した男です。この国を率いる意欲も意志もありません。自分を売り込み、富と権力を築きたいだけなのです。トランプ氏は自らの選挙活動について、『政治史上最大のインフォマーシャル(インフォメーションとコマーシャルを合わせた造語)になる』とよく言っていました」と、コーエン氏は語りました。

9. トランプ氏は「私の成績を公表しないよう高校や大学に脅しをかけろ」とコーエン氏に命じた

「ここで話しているのは、自分のことを優秀だと豪語しながら、自分の成績やSATスコア(大学入試に必須のテスト)を決して公開しないよう、自分の高校や大学、大学入試運営団体に脅しをかけるよう私に命じた男のことです」とコーエン氏。

コーエン氏が証拠として提示した手紙は、「トランプ氏の成績を無許可で公開した場合、民事および刑事訴訟を起こす」という脅しをかけるものでした。

10. トランプ氏の作法に嘘は不可欠なもの

「トランプ氏のために働き始めたころから、ビジネス上の利益のためには嘘をつくよう指示されてきたものでした」と、コーエン氏は話しました。

「お恥ずかしいことですが、私はそれが民間の不動産王にとっては、ささいなことだと思ったのです。米国大統領としては、それは重大で危険なことだと思います。しかし、いつの間にかトランプ氏のために嘘をつくことは日常化し、周囲の人もこれに疑問を挟むことはありませんでした。公正に言えば、現在彼の周りにいる人々も、このことに疑問など感じていません」と、コーエン氏は明らかにしたのでした。

コーエン氏が、これまでに様々な困難な局面を乗り越えてきたことがこのたび明らかになったわけです。今回の告発によって、トランプ政権は危機を感じていることに違いないでしょう。ですが、トランプ大統領ですから。今後の動向に関して、注目し続けるしかありません。

Source / Esquire UK 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。