ドナルド・トランプ氏のロシア疑惑を捜査したロバート・モラー特別監察官による報告書は、トランプ体制のひどい腐敗がところどころに垣間見えるものでした。

中でも最もショッキングだったのは、2016年の大統領選中にトランプ氏がヒラリー・クリントン陣営へのハッキングをロシアに促したときエピソードです。と言うのも、ロシアの工作員はこの発言に耳を傾け、わずか5時間後にはクリントン氏をサイバー攻撃の標的にしたというのです。

ロシアは大統領選中に、民主党全国委員会および民主党議員選挙対策委員会の多数のコンピューターに侵入し、これらの組織から数百ギガバイトものデータを盗み出しました。そしてトランプ氏は2016年7月、民主党全国委員会がロシアのハッカーによる不正アクセスの被害を発表した後に開かれた記者会見の中で、「ヒラリー氏の私的Eメールサーバーから削除された数千通のEメールが、ハッカーの手にわたっていることを望む」とレポーターに話していました。

トランプ氏は「ハッカーたちは、ヒラリーが削除した3万3000通のEメールをおそらく手にしているだろう」とし、「そこには、魅力的な情報があるだろうから…」と発言。その後、トランプ氏は次のような問題発言で締めくくっています。

「こう言っておこう。ロシアよ、もし聞いているのなら、行方不明になっている3万通のEメールを発見してくれることを望む。我が国のマスコミから、大いに謝礼があることだろう」と。

トランプ政権はその後、この発言が単なるジョークであったと主張しました。しかしモラー氏の報告書によれば、トランプ氏のこの発言から数時間後、ロシア軍につながりのあるハッカーに次のような動きがあったと言っています。 

報告書より引用:
トランプ氏の発言からおよそ5時間以内に、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)のハッカーは、クリントン候補のオフィスを標的にし始めました。トランプ候補の発言の後、ユニット26165(特定の任務を担当するユニット)は悪質なリンクを作成し、クリントン候補の補佐官のEメールアカウントを含む当該ドメインの15のEメールアカウントに送信。この捜査では、このドメインでホストされていたアカウントに、それ以前に不正アクセスの試みがあったことを示す証拠は発見されていません。

また、この報告書では、トランプ氏が自らの選挙キャンペーンのメンバーにクリントン氏のEメールを見つけるよう頼んだことも明らかになっています。

モラー氏によれば、ロシアはトランプ氏が大統領選で勝つ可能性が高まるよう動き、トランプ陣営もこのことに気づいて歓迎していたものの、両者の関わりに共謀と呼べるほど発展したものはなかったと言います。とは言え、ウィリアム・バー司法長官が2019年4月18日(米国時間)に行われた記者会見の中で示唆したように、この報告書によってトランプ氏が完全に罪を免れたわけではありません。

この報告書は、「この捜査により、ロシア政府の関係者とトランプ陣営の関係者の複数につながりがあったことが判明しましたが、その証拠は刑事訴追の根拠としては不十分でした」としています。

ジョークが大好きなトランプ氏ですが、彼のふとした発言によって、他人を巻き込んでしまっていることを理解できているのか…どこか怪しいところです。影響力のあるトランプ氏が大統領でいる限り、次から次へとあらゆる事態が引き続き行われることは間違いないでしょう。

Source / Esquire US 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。