ドナルド・トランプ大統領が持つビジネスパーソンとしての経歴は、彼が昔から吹聴してきた「成功に次ぐ成功」の連続というわけではありません。そう聞いて皆さんは、びっくりすることでしょう。しかし実際のところ、彼が経営していた企業各社は10年間に多額の損失を計上していたようです。

ニューヨーク・タイムズ」紙によると、トランプ経営の中核企業各社は1985年から1994年にかけて、10億ドル(約1100億円)を超える損失を計上していたそうです。より正確に言うならば、損失額は合計11億7000万ドル(1287億円)にのぼり、1990年と1991年にはそれぞれ2億5000万ドル(約275億円)を超える赤字を出していたとのこと。

この赤字は、トランプが所有・経営していた複数のホテル、賃貸マンション、カジノの各事業からのものです。皆さんがお金を投げて楽しむ、あのカジノビジネスでも赤字を出していたなんて、きっと皆さん驚かれたことでしょう。

この報道について、トランプ氏の弁護士を務めるチャールズ・ハーダー氏は、「非常に不正確(なもの)」としていますが、「ニューヨーク・タイムズ」紙ではこの数字はトランプが内国歳入庁に申告した、税金に関する記録のプリントアウトに出ているものとしています。また、この記録の通りであれば、トランプは上記の10年間に2年分の税金しか払っていなかったということになります。

トランプ氏は、個人として破産申告したことはありませんが、彼の経営していた会社のほうは1991年から2014年にかけて、合わせて6度も破産申請(会社更生法適用申請)をしていました。これは当該会社が営業を続けながら、借り入れた資金の返済を繰り延べたり、減額交渉を行ったりしたことを意味します。

トランプ氏が大統領候補として選挙活動していた際に、自分の取引ならびに企業経営者としての手腕を大いにアピールしていたことを、皆さんは覚えているかもしれません。「我々には、『トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』のような本を書けるリーダーが必要だ」と、トランプ氏は2015年に共和党大統領候補選への出馬を発表した際にそう述べていました。『トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』でゴーストライターを務めたトニー・シュワルツ氏は、そう聞いて大いに驚いたことでしょう。

そしてそれは、シュワルツ氏が結果的に50万ドル(約5500万円)の前金と同書の売上から得られた、利益のほぼ半分を受け取ることになったからではありません。シュワルツさんにとって、これは良い交渉をしたものと言えることでしょう。

それにしても、ビジネスのやり手だと思われたトランプ氏がここまで苦戦していたとは、おそらく多くの方々は気づいていなかったことでしょう。どの事業が一番先に黒字化になるのか、注目してみましょう。

Source / Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa 
※この翻訳は抄訳です。