現地時間2021年8月5日(木)、アメリカのジョセフ・バイデン大統領は自動車産業の新たな目標を推進する大統領令に著名しました。それは、「2030年までに米政府は、新車販売の50%をゼロエミッション車にする」というものです。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 ゼロエミッション車とは、本来、環境に有害な二酸化炭素や窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素、粒子状物質などの大気汚染物質や温室効果ガスを含む排気ガスを排出しない車両を指します。2050年までに、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする気候変動対策を掲げているアメリカ政府。その実現に向け、「脱ガソリン車」を鮮明に打ち出すカタチとなりました。

 大きな目標設定を受け入れることとなった自動車業界ですが、達成のためにはこれからいくつもの課題を解決していかなければなりません。

president biden delivers remarks on clean cars
Win McNamee//Getty Images
この日バイデン大統領は、2021年に登場したばかりのジープのプラグインハイブリッド車「ラングラー 4xe」を運転し、会見場所となったホワイトハウスの庭に現れました。

 まず注意しなければならないのは、その「抜け道」です。

 電気自動車(EV)や水素を燃料とする燃料電池車など、走行中に排ガスを出さないクルマは間違いなくゼロエミッション車ですが、アメリカ政府および今回の提案に携わるアメリカ大手自動車メーカー3社(GM、フォード、クライスラー)が採用するゼロエミッション車の定義には、従来の内燃機関(エンジン)に電動機(モーター)を組み合わせた「PHEV(プラグインハイブリッド車)」も含まれているのです。内燃機関を用いている車両ということは、化石燃料を燃やして動力を得ることとなります。つまり、厳密な意味において「ゼロエミッション」とは言えません。

 加えて、この大統領令には強制力が伴っていません。義務化されているわけではないのです。「低公害車の普及促進のために自動車業界と規制当局が設けた目標」とある程度トーンダウンさせて理解しておくのが妥当かもしれません。また、燃費基準の厳格化が、米国運輸省と環境保護庁によって実施される予定となっています。が、これはトランプ前政権下で大幅に緩和された基準に対する厳格化である点も、忘れるべきではないでしょう。

 ともあれ、GM、フォード、クライスラーの大手3社が、この計画を支持することで以下のような共同声明を出しています。

今回の大統領令は、現在の米国市場に劇的な変化をもたらすことになるでしょう。目標とする数百万台の車両に対応するだけの包括的かつ高密度な充電ネットワークの構築、研究開発機関への投資、国内でのEV製造およびサプライチェーンの拡充など、バイデン大統領が公約として掲げた「ビルド・バック・ベター(Build Back Better/より良い再建)」でうたわれている経済政策を展開して、初めて達成可能となる目標だと言えます。われわれはこの野心的な目標の達成に向け、バイデン政権、連邦議会、州および地方議会との協力を進めることを約束します

 アメリカ国内において、内燃機関を動力とする自動車を規制する動きは、国および州、都市の議会、また多くの自動車メーカーも含む形で加速しています。目標を掲げることは難しくありませんが、問題はそれをいかにして実現させるかという点でしょう。

 今回発表された計画をいかにして達成していくつもりなのか? その全容を知るには、今しばらく時間が必要と言えそうです。

日本メーカーの反応は?

image
Brazil Photos//Getty Images

 アメリカ市場で事業を展開する日本の自動車メーカーの戦略にも、この影響が及ぶことは必至です。ここまでの各メーカーの反応を日経新聞が伝えています。それによると、各社おおむね大統領令に賛同する姿勢を示しています。

 日産自動車は声明を発表し、その中で「2030年までにアメリカ販売車の40%以上をEVにする」と明記。今回の大統領令で記された目標には届かないものの、アメリカにおけるEVのラインナップを拡充することを発表しました。

 トヨタは、「新たな燃費基準と政権の意欲的な目標に対して、役割を果たしていく。環境に大変良いことで雇用維持にもつながる」とコメント。ホンダは、欧米4社との連名の声明で、2030年までにEV比率を40〜50%に高める目標を示しました。

Source / Road & Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。