日本国内でも、EV(電気自動車)を見かけることも珍しくなくなってきました。一方でEV先進国アメリカでは、フォードが誇る電動のピックアップトラック「F-150ライトニング」への関心が高まっています。そして遂に、市場からの関心の高まりを受けて、フォードは生産台数を2024年までに倍増するための投資を行うことになりました。それをアメリカのカーメディア「CAR AND DRIVER」が伝えています。


 フォードは電動ピックアップトラック「F-150ライトニング」の2024年度の生産目標を、「これまでの倍増となる、8万台に引き上げた」とロイター通信が報じています。これは個人用と商用、それぞれの顧客からの需要の高まりを受けての思い切った判断となりました。

 2022年春出荷予定の2022年モデルはすでに、1万5000台の生産予定が組まれています。が、手付金100ドル(約1万1000円)の事前予約はすでに12万件を超えているとのこと。生産台数の増加を目指すフォードは8億5000万ドル(約933億円)の追加予算を投じる計画を立てており、アメリカのカーメディア「Car and Driver」の取材に対しては、「今だ大きな制約がある状況ですが、顧客の需要に応じる方法を模索します」との声明を発表しています。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
 thumnail
Watch onWatch on YouTube

 自動車メーカーがEV(電気自動車)の生産拡大を目指す際、資材の調達や充電池の製造、顧客対応などさまざまな課題に直面するものですが、フォードが打ち破らなければならない制約はそれらばかりではありません。2020年からの生産計画の実現を阻み続けている世界規模のサプライチェーンの諸問題が再び障壁となることが確実視されているのです。

 自動車業界全体に影響を及ぼす半導体および、その集積となるマイクロチップ不足によって、フォードにも大きな減産を強いることとなりました。2021年春にも、マイクロチップの重要部品だけを欠いた状態の数千台の「F-150ライトニング」をデトロイト市内の駐車スペースに保管し、チップの調達を待って出荷を行うという苦肉の策を講じています。また、フォードの悲願であった待望の「ブロンコSUV」についても、複数回にわたる販売延期を強いられることに…。また最近では、提携するサプライヤーから調達したハードトップのパーツの品質に不備が発覚…雨による劣化が起きることが判明し、大きな騒ぎとなりました。

 このような苦い経験を踏まえた上でフォードは、「F-150ライトニング」の生産について…「過熱する市場にただ応じるだけでなく、無理のないカタチで徐々に増産を目指していくべきだ」と慎重な姿勢を取っています。

 ロイター通信によれば、フォードが2022年のモデルイヤーに生産を予定している「F-150ライトニング」は1万5000台とのことですが、これは2021年上半期のマスタング「マッハE EV」の販売台数が1万2975台であったことを考えると、ある程度の余裕を持たせた目標設定と言えるかも知れません。

 ロイター通信はその上で、「2023年度には5万5000台、2024年度には8万台の『F-150ライトニング』の生産をフォードが目指している」と報じています。「F-150ライトニング」のモデルチェンジは2025年に予定されており、それ以降は年間16万台の製造販売を実現させる計画とのことです。

 ちなみにこの数字は、フォードのベストセラーとなっているピックアップトラック、「Fシリーズ」の2019年モデルの販売台数の18%という数字に過ぎません。ですが、米国の新車市場に占めるEVの割合が現時点では、まだまだ小さいことを考えると、健全かつ現実的な目標設定と言えるでしょう。

 そして、EVピックアップの火付け役となることが期待される「F-150ライトニング」を着実に売り伸ばしていくためには、商用顧客からの注文数が大きな意味を持つことになりそうです。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。