果たして、「音楽史上最高の1曲」を選ぶことなど可能でしょうか?

候補となる曲なら、いくつも思い浮かびます。ただし、音楽に対する思いは人それぞれ。踊りだしたくなるようなポップソングであっても、人によっては胸の張り裂けそうな記憶を思い起こさせるものかもしれません。そこで今回は、時代を超えて聞き継がれる、最も高揚感のある曲を探そうとした取り組みについてご紹介します。

オランダの大学教授による挑戦

人々の気分を高める音楽の、その謎に満ちた構造を解き明かそうと立ち上がったのは、オランダ・フローニンゲン大学のヤコブ・ヨリイ博士です。彼は音楽によってもたらされる高揚感を計るための方法を考案し、音楽史上最高に気分の高まる10曲のプレイリストを完成させたというのです。本当にそんなことは可能なのでしょうか?

「音楽と高揚感の関係を法則化してほしい」という相談を、最初にヨリイ博士に持ち掛けたのはイギリスの大衆家電メーカーでした。同社が販売する音楽再生機のユーザーに対して実施した「気分の上がる曲」アンケート、これに寄せられた膨大な数の曲の解析をしてほしいと博士に依頼したのです。

そうしてヨリイ博士によって、曲のテンポやコード進行などさまざまな要素から高揚感を測定するアルゴリズムが考案されることになりました。その結果、テンポが140bpm以上であることに加え、メジャーコードが多用されているという2つの主な要因が浮かび上がったとのこと。いずれも数値化しやすい要素です。

ヨリイ博士はそこに第3の変数として、歌詞の内容に目を向けました。

アンケート結果として寄せられた曲を調べてみると、「特に明確なメッセージを持たない歌詞や、海へ出掛けたりパーティをしたりといったポジティブで楽しげな内容の歌詞が多いことが判明した」と話します。

そして発表された第1位は、クイーンのあの曲ですが…

フレディ・マーキュリー
Armando Gallo//Getty Images

ヨリイ博士の調査によると、音楽史上最も“高揚感のある曲”トップ10の第1位に輝いたのは、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ(Don't Stop Me Now)」でした。

1978年のアルバム「ジャズ(Jazz)」からシングルカットされた曲で、フレディ・マーキュリーの力強く爽快な歌声は一度聴いたら忘れられないものがあるのは確かです。ジョン・ディーコンのベースライン、ロジャー・テイラーの小気味よいドラム、ブライアン・メイの控え目なギターソロ、そしてフレディのピアノがさく裂するあの曲です。これを聴いて気分が上向かない人は、かなりの少数派ではないでしょうか?

2005年には英BBCの人気自動車番組「トップ・ギア(Top Gear)」も、この曲を「ベスト・ドライビング・ソング」に選んでいます。

  1. ドント・ストップ・ミー・ナウ(Don't Stop Me Now)」クイーン
  2. ダンシング・クイーン(Dancing Queen)」/アバ
  3. アップタウン・ガール(Uptown Girl)」/ビリー・ジョエル
  4. アイ・オブ・ザ・タイガー(Eye of the Tiger)」/サバイバー
  5. アイム・ア・ビリーバー(I’m a Believer)」/モンキーズ
  6. ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン(Girls Just Want to Have Fun)」/シンディ・ローパー
  7. リヴィン・オン・ア・プレイヤー(Livin’ On a Prayer)」/ボン・ジョヴィ
  8. ウォーキング・オン・サンシャイン(Walking On Sunshine)」/カトリーナ・アンド・ザ・ウェイヴス
  9. 恋のサバイバル(I Will Survive)」/グロリア・ゲイナー
  10. グッド・ヴァイブレーション(Good Vibrations)」/ザ・ビーチ・ボーイズ

やはり科学的根拠に欠けるのは否めません

この結果に、賛否両論があることは想像に難くありません。さらに今回の法則には、科学的に正当性がないということは博士自身も認めています。正当な手順を踏むためには研究論文の発表や、そのために用いられたアルゴリズムについて、客観的かつ学術的に検証を推し進め、そして認められる必要があるでしょう。

博士の名誉のためにも、これはあくまでもイギリスの大衆家電メーカーの依頼に基づいて実施された、お楽しみの「企画モノ」として捉えましょう。そう、「ヨリイ博士が厳選したプレイリスト」として受け取るべきでしょう。それでもなお、十分に楽しめる(そして懐かしい)曲が並んでいることは確かです。

Source / Esquire Spain
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です