フォードと言えば、青い楕円形のブランドロゴがブランドの象徴です。そのブルーオーバルバッジは、1912年ごろからディーラー識別標として使われ始め、現在のロゴマークは1928年に初めてラジエーターのエンブレムとして使用されました。それ以来、 デザインはほとんど変わっておらず、現在に受け継がれています。

 そして、最近のフォードを語る上で絶対に外せないのが、現地時間2020年7月13日に発表されたアメリカの国民的SUVとも呼べる、本格オフローダー「ブロンコ」の新型モデルでしょう。

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 では、ここで問題です。フォードはこの新型「ブロンコ」に、いくつのブルーオーバルバッジを取りつけていると思いますか? 答えは、恐らくあなたが予想しているよりもずっと少ない数だと思われます。新型「4x4」には、運転席側のテールゲートの下に小さくて青い楕円形のバッジが“ひとつ”あるだけなのです。

 フォードオーバルのロゴだけではありません。新型「ブロンコ」には、 “Ford (フォード)”の文字すらほとんど見当たりません。唯一見つけることができた場所は、トランクにあるオプションの引き出し式カーゴトレイのみでした。それ以外のロゴ表記は全て“Bronco(ブロンコ)”で統一されています。小型の「ブロンコスポーツ」についても同様です。テールゲートにブルーのオーバルがひとつだけ…それ以外、他のどこにも“Ford”のロゴは見当たりません。

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FORD
かろうじて“FORD”の文字を見つけることができた、トランクにあるオプションの引き出し式カーゴトレイ。

 ここで、一点だけ奇妙な点があります。それは、1966年型の初代「ブロンコ」の存在です。

 今回発表された新型「ブロンコ」は、初代「ブロンコ」のデザインから大きな影響を受けています。そしてもちろん、初代のフロントグリルには(同社がこれまでに製造した他の多くのクルマ同様に)“FORD”の名前が誇らしげに刻まれていました。それにもかかわらず、新型「ブロンコ」には“FORD”ロゴが見当たりません。これは一体どういうことでしょうか…? 意図的にフォードロゴを避けているようにも見えます。

1966 ford bronco pickup test
The Enthusiast Network//Getty Images
1966年型の初代「ブロンコ」。フロントグリルには、“FORD”のロゴが鎮座しています。

 果たして、フォードのロゴを積極的に排除することの狙いとは…? その問いに対して、フォードのスポークスパーソンであるジヤン・カディス氏は『Road & Track』誌に次のように語りました。

 「すでに、フォード側のSUVのラインナップは充実しています。その上で私たちは、 “オフロードと言うフィールドの中で何か違うことをしたい”、“本物と呼ばれる存在でありたい”、と考えたのです。その中で浮かんだアイデアが、フォードのロゴを持たない『ブロンコ』というわけです

さらにカディス氏は、次のように続けます。

 「私たちはショールームでのブランドの食い合い・自社内のクルマが競合となってしまうことを望んでいません。フォードには主力SUVとして、『エコスポーツ』から『エクスペディション』までがそろっています。そして、それらの対極にある存在として、冒険をしたい方、本格的なオフローダーをお求めの方のために、『ブロンコ』というブランドをご用意しています。そして『ブロンコ』の中にも、2ドア、4ドア、スポーツタイプを取りそろえているのです。つまり、私たちは“違った存在であること”を求めていました。そのためには、変わる必要があったのです。フォードのロゴがあることで、慣習的に従来のように規定されることを拒んだのです。まずは何物でもなく、『ブロンコ』であるべきなのです。そして、“BRONCO”のロゴを持ったグリルのデザインを通して、それをお客さまにアピールしていこうと思ったのです」と話します。

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 カディス氏はまた、ジープ「ラングラー」がほぼ独占してきたハードコアオフロード市場についても指摘しました。「間違いなく『ブロンコ』は、これまでフォードを意識していなかった新規顧客へのアプローチを可能にしてくれるでしょう。スタイリングの面では、フォードの他のラインナップとは似ても似つかないはず。もちろん、私たちフォードが大切にしてきたタフな品質は継承していますが、『ブロンコ』はオフロードにおける差別化と信頼性を与えてくれる1台なのです」と話します。

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 そのため新型「ブロンコ」と「ブロンコスポーツ」には、フォードのブランディングはほとんどないかもしれません。それでもなお、フォードはテールゲートにブランドロゴであるブルーの楕円形のバッジをひとつつけるだけで、十分にメッセージを伝えることができると確信しています。

 これは、「ラングラー」や「グラディエーター」をはじめ、可能な限りの見える位置にロゴをつけているジープとは、180度異なる戦略となります。果たして2021年、「ブロンコ」と「ブロンコスポーツ」が市場に登場し、どちらの戦略がより成功をもたらすのでしょうか? 発売を楽しみに待つ理由がまたひとつ生まれました。

Source / Road & Track
Translate / Esquire JP
この翻訳は抄訳です